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学年一の美少女が僕に惚れてるなんて信じたくない!  作者: 蒼原凉
僕はそんなに神経太くない!
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閑話 大谷拓都の野望 5

 いつの間にか勉強会の日付が変更されていた。

 聞いたところによると、伏見が日付の把握を間違えていたらしい。ちゃんと把握しとけよ、伏見! 深草さんがいると、坂本さんが攻略しにくいんだよ。ペース崩されるっつうかなんつうか。そりゃ、男としてはきれいな女がいたら目を向けてしまいたくなっちまうだろ。だから、今回は日曜でという話にしてたのに。はあ。

 だからといって、俺に勉強会をしないという選択肢はないわけで、そんなわけで土曜日の午後1時、俺は坂本さんと、ついでに木野さんと共に伏見のバイト先に来ていた。そうだ、木野さんがいたんだ。伏見と木野さんを深草さんに押し付ければ二人きりになれる。そうしよう。

「チッす、伏見。時間通りに来たぜ」

 10分前だけどな。

「あ、いらっしゃいませ。今他のお客さんいるので、あんまり迷惑になることしないでね。3時間でいい?」

「もとからそのつもりですよ」

 ああ。今回はちゃんと一万円札を財布に入れてきた。前回みたいなドジは踏まない。そう思ってネットを潜ると、なぜかそこには巷で噂の生徒会の先輩がカウンターでくだを巻いていた。酔っ払いかよ。

「あ、彩里ちゃん。久しぶり」

 あかん。これはだめな予感がする。よりによって、木野さんと知り合いというのが地雷っぽい。

「あ、伏見君。この子たちが言ってた勉強会する人たち? 私も混ぜてもらおっかな」

「いやいや、樟葉先輩は入ってこないでください」

「それに、先輩と俺たちじゃ範囲が違うので手煩わせるだけですから」

 伏見と合わせて、丁重にお引き取り願おう。別に、ちょっと避けてるわけじゃないぞ。

「全然かまわないよ。坂本三希ちゃんだっけ。一緒でもいいよね」

「あ、はい構いません」

 樟葉先輩という人物は、かなり小賢しかった。よりにもよって坂本さんに許可を求めるなんて。

 

 

 

「拓都く~ん。そんなんじゃだめだよ」

 樟葉先輩の息が耳元にかかる。くすぐったいからやめてほしい。

「ちょっと離れててもらえませんか?」

「そんなこと言うんだったら君が三希ちゃんに惚れてることばらしちゃうよ?」

 いたずらっ子の笑みで樟葉先輩は言う。

 そうなのだ、この人、ふざけてるように見えて観察力はすごいらしい。というわけでばらされないように、ついでにテストでいい成績を取れるように勉強を教えてもらっているのだが、すぐにおちょくろうとしてくる。

「大谷君も、覚悟した方がいいよ。樟葉先輩の毒牙からは逃れられない」

 伏見が言う。こいつも苦労してるみたいだな。深草さんといれてうらやましいと思ってるやつはたぶんとんだお門違いだと思う。

「それより、樟葉先輩。伏見が困ってるみたいですよ」

「え~、なになに?」

 まあ、わが身の安全には変えられないけど。

「ちょっと、大谷君!」

 さっきから、勉強を教えてくれるのはいいんだけど、しょっちゅう冗談をぶっこんでくるから集中できねえ。こういうのは誰かに押し付けるに限る。坂本さんは論外。木野さんも、そもそも勉強する気なし。そうなれば必然的に伏見しかいない。そう思って押し付ける。

 ただし、この時俺は忘れていた。伏見と樟葉先輩がいてただでさえカオスな状態で、そっちに精いっぱいだった。ここに15時ちょうどに来る台風、もとい深草さんのことを忘れていた。二人と化学反応を起こして、どんな変化を起こすのかなんて考えたくない。そんな、大変なことが近づいて来てるのを俺は忘れていた。

 

 

 

 思い出したくない。

 それが、俺の一番の感想だった。ともかく酷かった。樟葉先輩が暴走して、それと一緒に深草さんと木野さんがおかしなことになって。もう、詳細は語りたくないくらいにつかれた。店長も調子が良くなっちゃって、俺と伏見、あと坂本さんは結構翻弄された。というかろくに勉強進まんかった。樟葉先輩に叩き込まれた冗談と勉強はまだ頭に残ってるけど、深草さんが来てからは何もしてないぞ、俺。

 さらに言うならば、本来の目的だった坂本さんとの距離を縮める、というのも果たせたかどうか疑問だ。というか、心労で俺が払いますっていうの忘れたよ。また割り勘になっちゃった。完璧忘れてた。

 でもまあ、頑張れよ伏見。俺の知らないところで。俺は俺で坂本さんにアプローチすべく頑張るから。今回だめだったけど。

せっかくの勉強会なので大谷君視点にしてみました

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