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学年一の美少女が僕に惚れてるなんて信じたくない!  作者: 蒼原凉
僕はそんなに神経太くない!
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またカラオケですか……

「おかしいですね。何もしかけてきません」

 山科さんが、昼休みに呟いた。

「おかしいって、何が?」

「あれのことです。この一週間何もしかけて来ないというのは、不自然です。何か企んでいるのではないかと」

 聞き返すと、山科さんは少し小首をひねりながら言う。確かに、あれ以降、何か喧嘩を売ってきたりはしてないな、と思い返す。今日は金曜日だけれど日曜日以降何も接触してこなかったし、まあ、秘密裏に処分されてたのかもしれないけど、そういう噂も聞かないし。

 それに、登校時には深草さんと一緒に山科さんがいるし、学校について以降は樟葉先輩がやたらと絡んでくるから、手の付けようがないのでは。というか、樟葉先輩がやたらと絡んでくるから、周囲の視線が痛い。樟葉先輩、平気で僕の教室まで来て気軽に口をきいてるし。しかも、性格はちょっと変だけど、かなりの美人だし、それを自覚してるらしい仕草もするし。竹田は浮気か、なんて言い出すし。浮気も何も、深草さんと付き合ってるわけあるか! そもそも、深草さんが僕に惚れてるわけないんだから!

 それはともかく。

「まあ、諦めたんじゃないのかな? というか諦めていてほしい」

「そうですか。私の経験上、ああいう輩はかなりしつこいのですが。まあ、いいでしょう」

 何それ。あいつ、何か裏で企んでるの? できることなら諦めててほしいんだけど。

「だから油断したらだめだよ、ゆーくん」

「うわっ!」

 びっくりした! いつの間に樟葉先輩が!? というか頬をつつかないでください! 誤解されます!

「まあ、私もいるから大丈夫だよ、ね」

 ね、じゃないですよ! わざと誤解させるような言動を取らないでください!

 

 

 

 そんなことを昼休みに話した金曜日の放課後、僕は相変わらず深草さんの家のフクロウ飼育予定の部屋で勉強会に勤しんでいた。あ、ちなみに、ホームルームで、僕はカフェテリアのチーフに任命されました。飲み物と接客メインだそうだ。深草さんがペットエリアのリーダーだそうだ。どうでもいいけど。

「うん、伏見君これなら十位以内を目指せるんじゃない?」

「いや、流石にそれは無理だと思いますけど」

 仕上がりを確認していた深草さんが言う。ちなみに僕以外の三人は復習がばっちりであとはテストを待つのみ、らしい。十位と深草さんが言ったのも、もし僕がこのままいけば、だろう。ただ、今回はそうもいかないんじゃないかなあと思っていた。それにはれっきとした理由がある。

「さすがに、保健体育が、ありますから」

 そう、今回は前回の8教科9時間の他に、保健体育と合わせて9教科10時間、日にして4日間になるのだ。ちなみに保健体育は体育部分30点保健部分70点なのだけれど。

「そう、だよね。そればっかりは、ね」

 頬を赤らめながら深草さんが言う。その、保健部分が、あの、女の子からは到底教えてもらえないような内容なので、その。それに男女で問題も違うしね!

「なになに、だったら私が教えてあげよっか?」

「先輩はいいです!」

 即答する。そりゃそうだ、できるわけがない。というか樟葉先輩は絶対おかしなこと吹き込むつもりだろ!

「まあ、その辺は、自分で頑張りますから。それで」

「……うん、私が教えるわけにはいかないよね」

「何だったら私が実技で」

「だから黙ってください!」

 樟葉先輩はしょっちゅう爆弾を投げ込んでくるなあ、もう。疲れる。僕の心労の半分はこの人のせいなんじゃないか?

「まあ、ともかく、できることは全部やったので、ちょっと暇になりましたね」

「お、何だったら、今からカラオケ行く?」

 僕の呟きに、ハイテンションな樟葉先輩が言う。いや、今テスト前で仮にも僕ら生徒会員ですからね。

「流石に、今はないですよ。でも、また行きたいですね、カラオケ。楽しかったし」

「まあ、それもいいですね」

「やった」

 樟葉先輩が小さくガッツポーズをとる。

「よし、それじゃあ歌うぞ」

「ここではやめてください! あと、今回はアルコールはなしですからね」

「チッ」

 今チッって言った! この人舌打ちした!

「冗談だって。前回だって入れてないからさ。本当だって。これでも法律は守るんだよ?」

 そう言ってカラカラと樟葉先輩は笑う。本当にこの人と一緒にいると疲れる。それにしてもまたカラオケか。今回は、そこまで黒歴史を量産しないといいな。

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