時間が足りないんだから!
やばい、とにかくやばい。足の痺れとか気にしてる場合じゃなく痛い。じゃなくてやばい。カフェイン飲料の飲みすぎとか気にしてる場合じゃなくやばい。というのももう陽が差してるからだ。ちなみにまだ完成はしていない。だからやばい。
「だからあれほど言いましたのに。昨日ちゃんと帰ってこれれば、もう完成してましたよ。そこ、手を動かす!」
「はい」
動かしてます。だいぶ形が出来上がってきたけど、まだ出来上がらないよ。今日の授業の合間にはまだ渡せそうにない。というか、もうそろそろ、出かけないといけないんですけど。自業自得なんだけどさ。
「昼休みも作業をするので持っていきます。いいですね」
「はい」
山科さんに言われるまま、すぐに出かける準備に移る。宿題は写させてもらおう。体操服は昨日と同じでいいや。足りない強化もあるけど、それは教科書借りよう。あ、でも授業中は寝るか。
朝ごはんなんて食べてる間はない。家に帰って、親に断って家から出てきた振りして深草さんを待ち受ける。やばいよやばいよ。でももちろん、深草さんの目の前で作業するわけにはいかないし、電車に乗ってる時間がもどかしいよ。
「伏見君、伏見君ってば」
「あ、あれ。どうかしました?」
「もう、ちょっとぼうっとしてない?」
「自分ではしてないつもりなんですけど。ほら、駅着きましたよ」
悪いけど、深草さんに悟られるわけにはいかないんです。許してください。
そのままいつもよりも急ぎ気味に学校へ向かう。時間がもったいない。というか、間に合うかどうか疑問なんですけど。そりゃ昨日遊んでた僕のせいなのは間違いないんだけどさ。
「伏見君、今日の運勢……」
「悪いけど、山科さんに呼ばれてるので」
そう言って、かばんを持ったまま教室から逃げ出す。山科さんから借りた屋上の鍵を使って、屋上で裁縫を再開する。でもこれ、放課後までは絶対にかかるって。
昼休みまで、体育の時間を除いて僕はほとんど寝て過ごした。もう、寝てないと体持たないし、テンションも何かおかしくなってる気がする。とにかくやばいから。おなかすいたけど、山科さんはご飯を食べさせてくれそうにないし、オレンジジュースで食いつなぐしかないよ! ストロー加えながら、手に裁縫針をもって作業する。最近になってようやくけがせずに縫えるようになったんだよ。今更だけどさ。
結局昼休み中には完成するはずもなく、僕は放課後の時間をぬいぐるみ作りに当てることが確定したのだった。ちなみにだが、山科さんたちは昼休みにプレゼントを渡したらしい。どうでもいいけど。
授業が終わり、ショートホームルームの時間になる。ほとんど寝てて散らかってない机の上をすぐに片づけて、僕は駆けだした。かばんの中にあるぬいぐるみのかけらを一刻も早く仕上げなくちゃ。帰ったふりをして、僕は屋上へと向かう。そこには山科さんが待ち受けているはずだ。電車に乗る移動時間すらも惜しい。一刻も早くぬいぐるみを完成させて深草さんに届けないと。
「あれ、悠杜君?」
道中であった樟葉先輩らしき声の主を無視して突き進む。とりあえず急がないと。だって僕には時間が足りないんだから! 自業自得だけど!
長くなりそうなので、いったんここで切ります。




