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深草未悠 これが……恋?

 なんだというのだろうこの鼓動は。伏見君相手だと上手く言葉が出て来なくなる。わからない。誰に相談したらいいのだろうか。というか相談するべきなのか。

 まず伏見君は論外。あと鳥羽教諭も頼りなさそうだし、京香はこういう話する相手じゃないし。まさかお母さん? でも、帰ってくるは遅い。じゃあ、あとは、あ、千秋さんがいた。千秋さんならわかってくれるかもしれない。そうと決まると午後の授業が恨めしく思える。

「それでは今日はこれまで」

 鳥羽教諭の声が鳴り響くと同時に、カバンをつかんでけ出す。ああもう、伏見君を見てられないよ。

 

 

 

「というわけで、伏見君を見てると心臓が締め付けられるように痛いし、緊張してうまく話せなくなるんです。これってどういうことですか」

「うん、恋だね」

 相談した千秋さんはいとも簡単に言ってのけた。

 って恋!? 恋愛小説とか、マンガとかに出てくる人を好きになるってこんな感覚だったの!? だったら私心臓発作で死んでしまいそうだ。恥ずかしい。

 というか、私は恋をしたことがない。だから、よくわからない。

「え、で、でも」

「うん、私も典型的すぎて驚いた位だよ。でもよかった、未悠ちゃんが悠杜君を好きになってくれて。悠杜君、恋愛から遠ざかろうとしてるとこあるからさ」

 戸惑とまどう私に千秋さんが言う。恋ってあれだよね、修学旅行の夜とかにみんなで話したりするやつだよね。あれ、聞く分にはいいけど自分がやるとなると恥ずかしい。

「でも、ちょっと違うような」

「うーん、人によりけりだもんね。未悠ちゃんの場合はあれじゃない。悠杜君は今までいなかったタイプでしょ。だからたぶん混乱してちょっとずれちゃったんじゃないかな。その目、恋する乙女の目だよ」

 千秋さんが言う。目が違うと言われて驚いた。

「そんな、は、恥ずかしいです」

「そんなもんだよ。学生時代の恋なんてさ。いもあまいも、両方味わっちゃいなよ。大人になるとさ、いろいろと、あるんだ」

 むう、でも、恥ずかしいものは恥ずかしいよ。

「本当に、本当に恋なんですか?」

「うん、そう」

 そんな、簡単に言われても。

「授業中とか、相手のこと考えてしまう。その人の前でだけ上手く話せなくなってしまう。心臓の鼓動が速くなる。相手のことをもっと知りたいと思う。瞳が輝く。全部、典型的な恋の症状だよ」

「恋してる目ですか?」

「そうだね」

 意図もあっさり言われる。私は、悠杜君に恋心を抱いているの?

「これが……恋?」

「そう。恋心。誰かを好きになったっていうこと。もう、未悠ちゃんは悠杜君のことが好きみたい」

 言われてそうなのかと思う。だけど、そのことを意識する度顔がほてってくる。

「で、でも、告白とかするのはちょっと」

「なら、悠杜君に告白させちゃえばいい」

「はえ?」

 思わず変な声が出ちゃった。何を言ってるんだこの人は。

「だからさ、未悠ちゃんからアプローチ仕掛けて、悠杜君をその気にさせちゃえばいいんだよ」

「そ、そんなことできるのかな」

 思わず弱気になった声がれる。

「大丈夫、未悠ちゃんかわいいから。なんだったら私も手伝うからさ。大丈夫だよ、悠杜君って、押しに弱いし」

「で、でも」

「あとは覚悟を決めるだけだよ。自分から逃げないでよ」

 そう言われて、自分の行動を見つめ返す。うわ、確かに言う通りじゃん。。なんで気づかなかったかなあ、私。これが、恋ってやつなんだよね? やっぱり少し恥ずかしいよ。

 で、でも、わ、私は伏見君のことが好き、なんだよね? そうだよね? たぶん。

「わ、わかりました。やってみます」

 とりあえずだけど、まだ覚悟は決まり切ってないけど、でもそのはずだから。

「はい、よくできました。それじゃあ、いろいろと教えるね」

 千秋さんが話し出す。あ、コーヒー冷め切ってたの忘れてた。苦いよう。

「まず、登下校を一緒にすること。実は悠杜君の家ってこの近くなんだよね。未悠ちゃんはどう?」

「あ、私もすぐ近くです」

「じゃあ、住所教えるから毎日一緒に登校してね」

「ええええ!?」

 思わず驚きの声を上げる。ちょっとそれっていきなりハードル高すぎない?

「でも、未悠ちゃん、色仕掛けとかって無理でしょ。じゃあ、長い間一緒にいることから始めないと」

「むう、それは、確かに」

 い、色仕掛けって。そんなことできないよ。そういうことが必要になったことはなかったし。

「あと、おすすめなのが生徒会ね」

「生徒会ですか?」

 そしてぐんぐん話を進めてくる。むう、とりあえず登下校は一緒にするとして、って押し切られてる!

「うん、四宮の生徒会にはね、カップルができやすいっていうジンクスがあるんだ。私も恋人ができたしね。だから、未悠ちゃんと悠杜君で入るといいよ。悠杜君、勉強すればできる人だからさ」

「は、はい」

「まあ、恋愛なんて気軽でいいんだよ。なんだったら降ってくる人の傘にするくらいの気持ちでさ。未悠ちゃんモテるでしょ」

 そう言って千秋さんはウインクした。とりあえずは登下校と生徒会と。って違うよ、千秋さんにも彼氏さんいたんだ。まあ、かっこいいし、魅力的だもんね。ってそれでもなくて、そんなに気軽でいいのね。恋愛って。もっと堅苦しいものだと思ってたよ。千秋さんに話してよかった。大分気が楽になったしね。もともと生徒会には入ろうかと思ってたけど、伏見君を誘わなきゃ。

 明日から、ちょっと恥ずかしいけど頑張らないとね。

伏見君が苦労するのは大体千秋さんのせいです


それからついにブクマ500件達成です。みなさんありがとうございます。

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