研修旅行を忘れていた
「ロン!」
「やられた―!」
すっかり生徒会室で麻雀をたしなむようになった。放銃してしまった。
何戦かやってみると、大体のくせというのがわかる。本当に未悠さんが頭がいいんだなということも。ちょっとやるだけで勘を掴んだのか、どんどん勝ちを積み重ねるようになっていく。逆に僕とか拓都君はあんまり上達していない。三希さんはそこそこといったところだ。ちなみに竹田はルール知っていると言いながらも弱かった。
「次は二条の名に懸けて俺が勝つ!」
「いや、そんなものに名前掛けちゃだめだよ」
そして利頼君とすっかりその担当となった彩里さん。利頼君は一発屋なところがあるんだよね。彩里さんは大負けもしないけど、あまり勝てないといった具合。
こうして見てみると、勝ち方にも個性が出ていて面白い。あの引っ掻き回す加乃先輩がいたら場が荒れそうだななんてことも考えた。ちょっとだけ、ほんのちょっとだけだけど寂しいかもしれない。いやないか。
「明日は、シャルロットにこれそう?」
「たぶん、大丈夫だと思う。外には出られるようなったし」
未悠さんがほほ笑む。大分血色もよくなった。そんな気がする。いや雰囲気だけだけれど。
「くそう、目の前で惚気やがって」
「なら、君も相手を連れてこればいい」
「どうせ俺にはそんな相手なんていませんよ!」
利頼君、竹田にそれ言っちゃあだめなんじゃないかな……。だって、ここにいる8人のうち京香さんを除けば相手がいないのって竹田だけだし。
「くそう、絶対誰もが羨む彼女を作ってやる!」
「まあ、頑張れ」
でも、竹田ってすごく軽薄そうだし。顔が悪いわけじゃないんだけど、何となく違うなっていう感じになる。まあ、その軽薄さに助けられもしたけれど。
「でも、生徒会室ってこんなにゲームがあったとは」
「之成先輩に聞いたんだけど、生徒会って仕事は真面目にやるけど、効率よくこなす人が多いんだって。で、余った時間でいろいろゲームをするのが伝統なんだとか」
「なんだそれ」
いや、そんなことを言われても。だって実際そういう話聞いたし。あと加乃先輩が言っていた、生徒会はカップルができやすいっていうのも、一緒にゲームをするからかもしれない。
それに、生徒会活動って、体育祭が終わったらほとんどないしね。児童会の活動くらいだっけ。
「そう言えば、来週からどうするの? 確か、教育実習は今週いっぱいだったと思うけど」
「あ、うん。やっぱりそのことだよね……」
今なら大丈夫かと思った。だけど、やっぱり、引きずっちゃうか。
だけど、生徒会室で一緒にゲームをするのも楽しいけど、やっぱり一緒に授業を受けたいって思ったから。普通に一緒に高校生をやりたいって思っているから。
「大丈夫だと思うよ。それに、無理ならまた生徒会室に来たらいいし」
「まあ、そうだよね」
というか、本音としては自分授業受けてないからテストが不安です。
「あのー、お二人さん、忘れてるかもしれませんけど、月曜から研修旅行ですよ?」
「ええっ!?」
三希さん、それ本当!? というか、僕生徒会員じゃん。そう言えば、そんな予定で下見に行っていた気がする。
「大丈夫、京都こられる?」
「たぶん、大丈夫だと思う。先生はいないんだよね?」
「今日までだって言ってたよ」
「なら……」
未悠さんのその先の言葉は聞き取れなかった。強がってみているけど、それでも不安なんだろう。
というか、僕どうしよう。完全に抜け落ちてたんだけど。このまま順調に行ってたら、月曜日位からは一緒に授業を受けられる時間が出てくるかなと思ってたんだけど。でもいきなり研修旅行って辛いんじゃあ。
「それより、早く次やろうぜ。昼休み終わっちまう」
「ちょっ!?」
竹田何言ってくれてんの!? って思ったけどグッジョブだ。KYの竹田なら仕方ないかっていう雰囲気もあるし。
「まあ、今考えても仕方ないし、どうにかなるんじゃないか。それより次は俺やっていいか?」
「あ、いいよどうぞ」
そうだよね。大谷君の言う通りだ。そんな思い通りにはいかない。なら、気楽に行った方がいい。まったく、竹田もたまには役に立つ。
「ほら、出番ですよ未悠さん。無謀な挑戦者たちをやっつけちゃってください」
「うん、わかった。負けないからね」
そう言って笑う。そうだ、それでいい。研修旅行を忘れていたけれど、そんなこと考えなくてもいいじゃないか。今笑っていれば、きっと笑えるはずだから。
作者「ちなみに、2年生の修学旅行は作者が忘れてたせいで1月下旬になりました」
加乃「ボストンだよね!? めちゃくちゃ寒いじゃん!」
作者「いや、真冬のバンクーバーにいる人が何を言う」
黒幕「ちなみにだけど、相当厚着していかないと大変なことになるよ。後ビル風が冷たかった」
竹田「それは大変だ! 買いこまないと!」
作者「お前はまず英語の勉強な」




