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学年一の美少女が僕に惚れてるなんて信じたくない!  作者: 蒼原凉
聞いてほしいことがあるんだ
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生徒会室は魔窟

語彙力が落ちている気がします

 まあでも、未悠さんに笑って欲しいというのは本心なわけで。

「それじゃあ、いつもの占いをやりましょうか」

「うん。……わかった」

 月曜日、未悠さんを生徒会室まで引っ張ってきた。頑張った。

 まだちょっと、いつも通りとはいかないけど、だけどここまで来れたのは大きな進歩だ。そう思っていい。

「ところで、タロットカードって実は、普段使ってる大アルカナの他に、56枚一組の小アルカナっていうのもあるんですよ。トランプの原型になったって言われてるんですけどね」

「確か、ババは大アルカナの愚者だっけ」

「そそ。で、タロットってのは一枚一枚に意味があって、それをもとにしたトランプも、実は一枚ごとに意味があるんだって。覚えてないけど」

「そうなんだ」

「ナポレオンがトランプ占いに凝ってたのはその筋では有名な話だし。千秋さんも、あんまり得意じゃないけどトランプ占いをやってたはず」

「そう言えば、千秋さんが師匠なんだっけ」

「そそ」

 アルカナを繰りながらたわいもないことを話す。今日は、念入りに混ぜた。

「ちなみに、千秋さんは占いでも風水が得意なんだとか。あとルーンの解読を昔やってたとか、そんな話もしてた」

「ルーン文字って基本はアルファベットと一対一くらいで対応するらしいよ」

「そうなの? 知らなかった。よし、準備は完了と」

 そうして、一枚、タロットを裏返す。力。それの逆位置だ。

 意味は、甘え、無気力、優柔不断、自分を卑下する。そんなマイナスな単語ばかりが並ぶ。まるで自分みたいだ。

「ち、死神の、逆位置です。意味は、リスタートとか、名誉挽回とか……」

「ねえ、悠杜君」

 悲しそうな目で見つめられる。

「それ、本当? 私に嘘ついてない?」

 そう言うと、すっと未悠さんは視線を外した。僕がつい嘘を吐いたことを、見透かされた気がした。

「悠杜君の、そういうところは直した方がいいと思う」

「ごめんなさい。死神じゃなくて力の逆位置です」

 罪悪感に襲われて。あーあ、空回りしてるなあ。

「それで、意味は何なの?」

「甘えとか、無気力とか、優柔不断、自分を卑下するとかそんな感じです……」

「まるで、今の私みたいだね」

 だから言いたくなかったんだ。そうなってしまうから。

 そうして、何を言えばいいのかわからなくなってしまった。


 キーンコーンカーンコーン


 鐘がなる。

「あれ、ホームルーム行かなくていいの?」

「今の、未悠さんをほっておける気はしないので。サボりますよ。後で、三希さんに写させてもらう約束だし」

「そっか」

 罪悪感を覚えたのか、うつむく未悠さん。これは僕が決めたことだから、何も考えなくていいのに。

「そうだ、せっかくだから生徒会室を色々調べてみましょうよ! 生徒会入って半年以上たつのにろくに調べたことなかったじゃないですか。そうだ、そうしましょう」

 立って無理やり未悠さんの手を握る。考えればいいアイデアな気がしてきた。あの加乃先輩が何か悪戯してないとは思えないし。




「こんにちはー、様子見に来たけどどんな感じ?」

「あ、三希さん。今は落ち着いてる」

 トランプをテーブルに置く。未悠さんに断ってから、応対に出た。

 来てくれたのは、三希さん、拓都君、竹田と、いつの間にか中に入り込んでいた京香さんだ。彩里さんは利頼君に付きまとわれて忙しいようで。

「お昼休みだからここで食べようと思ったんだけど」

「そう言えばそうだったね。あ、生徒会室探してみたらいろいろあったよ」

 あの後、いろいろと漁ってみたところ、生徒会室は魔窟だということが判明した。トランプ、ウノ、モノポリに、3世代くらい前の携帯ゲーム機。麻雀卓とか、ジェンガ、ビンゴマシーンに、さらにはラスベガスのコインチョコまで。果てには隠し通路なんてものもあった。いや、生徒会何やってんのさ。ここは、ゲーム研究会じゃないんだからね。

「僕らの方もお昼にしよっか」

 そう言いながら僕の方も鞄から弁当箱を取り出して開けた。

「美味しそう。京香ちゃんが作ったんだっけ?」

「いや、今日は僕が作った」

「そう言えば、悠杜君も料理得意だもんね」

 そう言ってもらえると嬉しい。ところで三希さん、その獲物を探すような目線はどうかしたのですか。

「悠杜君、そのアスパラの豚肉巻きもらっていい?」

「あ、いいよ」

「それじゃあ私も」

「ええっ!?」

 未悠さんはいいとしても、三希さんが取るとは思ってなかった。残り一個しかない。仕方ないから、三希さんから何かもらう……、のは拓都君に申し訳ないので拓都君から唐揚げを奪う。

「あ、ちょっとそれ俺の」

「いいじゃんいいじゃん」

 ほんの少し、未悠さんの顔がほころんだ。

「そうだよ、私の卵焼きあげるから」

「あ、ありがと」

「くそう、彼女がいる拓都が羨ましい!」

「か、彼女じゃないから!」

 三希さんが赤くなる。まあ、二人とも両想いっぽいから時間の問題かなと何も考えずに思って見たり。

「リア充撲滅委員会副会長として、この狼藉許さでおくべきか!」

「いや、会長誰だよ」

「知らね」

「ふふっ」

 あ、ちょっと未悠さんが笑った。

「それより、あれ麻雀だろ。俺、ちょっと興味あるんだけど」

 拓都君が麻雀卓を指さす。実を言えば僕もちょっと興味があった。でも、麻雀って4人でやるゲームだし、人がいないと無理だもんね。ただ。

「僕も興味はあるんだけど、ルールがわかんないんだよね。みんな知ってる?」

 未悠さんと三希さん、拓都君がかぶりを振る。京香さんは、何でも知ってそうだし。しかし、竹田が手を挙げたか。

「俺、知ってるよ」

「それじゃあ、説明頼むわ」

「任せろ」

 なんだろう、拓都君が任せちゃったけど不安しかない。

「えっと、基本的には四面子一雀頭をそろえるのが基本なんだけど、その形によって、いろいろ役があって。で、その役ごとに点数が決まってるからその点数を競うゲーム。で、それを何回も繰り返すんだけどここで大事なのが、負けるごとに一枚脱ぎます」

「嘘だ!」

「ダウト!」

「竹田、流石にそれはないぜ……」

 いや、ルールなんて知らないけどそれはないだろ。というか、こいつ自分の欲望に忠実すぎる。

「え、あ、ちょっと何すんの!?」

「真面目にやらないみたいなので、排除しようかと」

 そしていつの間にか京香さんに縛られ転がされていた。自業自得だよね。

「まあ、やりながら私が説明するので、ちょうど4人ですし、やってみたらどうですか?」

「そうだね、私もちょっと興味あるし」

 そう言って、未悠さんははにかんだ。

 やっぱり未悠さんには笑顔が似合う。

加乃「……」(ジェンガとコインチョコ、その他お菓子を持ち込んだ人)

千秋「……」(トランプ・ウノ・モノポリ等カードゲームを持ち込んだ人)

茜「……」(麻雀卓とビンゴマシーンを持ち込んだ人)


橋本教諭「お前ら、ちょっとは反省しろ!」


作者「いや、携帯ゲーム機持ち込んだお前が言うなよ……」

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