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学年一の美少女が僕に惚れてるなんて信じたくない!  作者: 蒼原凉
聞いてほしいことがあるんだ
158/181

”This is Kano”

 ツールールー


 携帯電話が鳴った。デフォルトから変えてないはずだけど、この音声は電話だったっけ。

 覚醒前の脳を頑張って起こして携帯電話に手を伸ばす。あ、取り落とした。

 というか、眠い。今何時だ。眠っていたところを起こされたぞ。窓の外まだ暗いし。携帯電話の時計はまだ5時半前だった。

 誰だ、こんな迷惑な時間に電話かけてきやがったやつ。

「もしもし」

「Hi! Good evening. Is this Yuto?」

 不機嫌さを隠そうともせずに電話に出ると、とっさに意味の分からない言葉が流れ出す。なんだ、スパムか。

「Is this Yuto, OK?」

「確かに僕は悠杜ですけど……」

「This is Kano. I call you back. What is the purpose to call me?」

 何を言っているのかわからない。英語かな、ってえ!?

「あれ、加乃先輩? 加乃先輩なんですか?」

「Ja. Ich heiße Kano Kuzuha」

「日本語で言え」

 何となくニュアンスで自己紹介かとは思ったが あれは英語じゃない。

「あはは、そういうわけで悠杜君の想い人加乃ちゃんです。どうかした、ひょっとしてこれから夜這いに来ていいですかとかそんな電話?」

「想い人でもないし、今は夜ですらない。というか、今どこにいるんですかあなたは!」

「えー、こっちは夜なのに。それに分からないかなあ。私が今いるのはバンクーバーだよバンクーバー」

 そう言えばそんな話を聞いた。というか、最初からいきなり冗談をぶっ飛ばすのやめてくれ。

「それで、朝の5時半に何の御用ですか?」

「失礼だなあ、せっかくかけなおしてあげたのに。それにこっちではちゃんと常識的な時間だよ。時差17時間あるし」

「というか、今計算しましたけどそっちもよるじゃないですよね?」

 時間にしてお昼の12時台。まだ真昼間だ。

「ついさっきホームステイ先についたばっかりでさ。時差もあって眠いのなんのって。私の体内時計はもう夜です」

「それはどうでもいい」

 だからといって非常識な朝っぱらに電話をかけてこないで。

「なら切るよ。せっかく愛しの加乃ちゃんがかけてあげたのに」

「わあ、待ってください。切らないでください」

 しまった。加乃先輩に話したいことがあったのを忘れてた。

「まあ、冗談はここまでとして、相談事っていうのはあれでしょ。鞍馬悟のことでしょ」

「よくわかりましたね」

「それくらい分かるって。私も教育実習に来ないよう色々工作はしてみたんだけどダメだった」

「まあ、それは今責めても仕方ありませんし」

 ん? 今しれっとすごい陰謀めいたことを言われたけどまあいいか。バカノ先輩だし。

「それで、未悠ちゃんが引きこもっちゃったとかそんなパターン?」

「まあ、そうです」

「それをどうにかしたいと」

「はい」

 僕ほとんど何も話してないんだけど。

「鞍馬悟は2週間でいなくなる。それくらいなら出席しなくても未悠ちゃんなら何の問題もないと思うけど」

「そういうことではないんです」

「だろうね」

 にべもない。というか、全部僕が言いたいことを見透かされている気がする。遠くバンクーバーにいると言っていたのにすぐ目の前にいるみたいだ。

「鞍馬悟は一切合切記憶を失っている。それに、人格も変わったから少年院を出た時点で監視は外したんだ。だから今は無害な存在のはずだけど」

「でも、トラウマはそう簡単には」

「治らないね」

 だけど、不思議だ。どんどん心の中にあったものが整理されていくようなそんな気がして。

「まあ、だからこそこうして私を頼って来たんでしょう?」

「ええ、そうです。加乃先輩に何かできることは」

「ないね」

「え!?」

 突如帰って来た無力宣言。え、でも、これまでさんざん裏で姦計を働かせてきたっぽい加乃先輩だよ? 一番信頼しているのに。

「そもそも私が今いるのはバンクーバーだよ? 帰るのは年末だと思うし、そこまで長引いたらいくら何でも出席日数が足りない。私にできることはこうして助言するくらいだ」

「そんな」

「そんなもんだよ。これは、悠杜君自信の力で乗り越えなきゃいけない」

 僕自身?

「まあ、周りの人間を頼ったっていいさ。出来る範囲で。だけど、私に言わせてみればこれを解決できるのは悠杜君だけだよ。簡単なことだ。学校に嫌な思い出があるなら、それ以上に楽しい所だって教えてあげればいい。そのために誰かを頼ったっていい?」

 加乃先輩の言葉は耳障りは悪かったけれど、不思議と頭の中から離れずにいた。

「それじゃあ、加乃先輩。何かいい助言はありませんか?」

「早速かい。まあ私も力になるけどね。まあでも、鞍馬悟に協力を求めるのが一番じゃあないのかな」

「なるほど」

 確かに、今は無害なのなら、これ以上トラウマをえぐらないように、つまり鉢合わせないように調整すればいいのか。あとは、何があるだろう?

「ほかに何か案はありませんか?」

「うーん、この件なら千秋さんが役に立つかも。あんまり信用しすぎない方がいいかもだけど」

「それはどういう……」

「おっと、時間だ。衛星電話は高いんだよ。そういうわけで、私はこの辺で失礼するよ」

 ツーツー

 唐突に電話は切れた。だけど、加乃先輩に相談したおかげで綿みたいになっていたのが糸みたいによりあった気がする。ありがとう、加乃先輩。

 まあ、非常識な時間に電話をかけてきたり、のっけからジョークを入れてきたり意味深なことを言ったりとわけわからなかったけど。さて、とりあえずは。

 とりあえずは二度寝しよう。

京香「千秋さん、あなたが何とかしてください」

黒幕「どうして私が?」

悠杜「黒幕なんだったら計略の1つや2つくらい働かせてくれても」

黒幕「作者に押し付けられただけだから!」

作者「てへっ」

当て馬「むしろ俺の方が酷いって。作者出てこい!」


作者「既に京香さんに正座させられてます。ってちょっとそれおろsくぁwせdrftgyふじこlp」

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