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学年一の美少女が僕に惚れてるなんて信じたくない!  作者: 蒼原凉
聞いてほしいことがあるんだ
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忍び寄る足音に

30万字突破!

それと今回は短めです

 女装嫌だ、なんて現実逃避をしていても、問題から逃げられないことはわかっていた。

 むしろ、どんどん時間が無くなってきて、焦ってきていると言った方がいい。だって、年内に未悠さんに告白しなければ、強制的に加乃先輩に彼氏にするって言われたから。加乃先輩のことだ。たぶん単なる口先だけの話じゃないのは分かっている。ただこうして迷っているだけでもどんどん期限は近づいて来ている。

 未悠さんと付き合いたいという気持ちはある。好きだから。

 だけど、怖いという自分がいる。従姉に言われたせいで。

 そのせいで、足が前に進まない。今が11月とは言え時間は飛ぶように過ぎ去ってしまうというのに。今日明日しか見ることができない僕は今怖いということしか考えられない。好きだっていうのに、未悠さんと付き合いたいって思ったのに、そのことが怖くて度胸がない。

 もっと馬鹿ならよかったのかななんてことを考えてみる。従姉の言葉を無視して進むくらいの度胸があれば。あるいは利頼君みたいに無鉄砲に突っ走れたら。そうすれば何もかも忘れて未悠さんと付き合うことができるのかもしれない。それが正しい選択とも思えないけれど。


 たぶんだけど、加乃先輩が言ったことは優しさだ。きっとこのままじゃ埒があかなかっただろうから。たぶん何も言われなければ、僕はこの気持ちを伝えるのをためらったまま何もしなかったんだろうから。

 まあ、強制的に加乃先輩の彼氏にするってのはどういう意味があるのかはよくわからないけど、だけどあれは加乃先輩なりのいたずらというフィルターを通した屈折した優しさなのだと思う。あの人は、普段はどうしようもないくらいにふざけてるし、たまにストッパーがかからなくなることもあるけど。だけどしっかりしないといけないところは誰よりもしていると思うし、一番話がしやすい。本人は認めたがらないかもしれないけど優しいし、僕は誰よりも信用しているつもりだ。

 だから、無理して拒否するという気も起らないのだ。多分あの人は裏でいろいろ手を回していたりしてもおかしくはないんだけど、だけどそれが善意だから。だから、責められもしない。いやそんなことするつもりはないんだけど。


 覚悟を決めなきゃいけないのはわかってる。だけど、覚悟を決める覚悟がない。何もかも怖いから。頭を打ってすべて忘れて新鮮な気分になれたらとっても楽なんだろうなあって思うけれども、現実はそう上手くはいかなくて。

 本当にうまくいかない。誰かを好きになればその分だけ何かを失うことになってしまって。未悠さんのことを好きだって気づいたけれど、その分僕から大切な何かが失われてしまった気がする。好きになんてならなければよかったなんて言わないけど。

 明日から、明後日から、来週から。あるいは、いつからその思いを捨てて前に進んだらいい? いつになればそんなことを忘れられる。そんなことを考えていた。

 否、そんなことしか考えられなかったんだ。僕の目の前にある事象は、未悠さんと付き合いたいって思いをいつ伝えられるか、そうだけだと思っていた。そうやって、現実逃避をしながら、いつも通り変わることのない日常を未悠さんや京香さんとの日常を、加乃先輩がいつも通りからかってくる日常を、楽しんでいくものだとばっかり思っていたのに。


 だけど、それだけじゃなかった。加乃先輩だって言っていたじゃないか。『これからいろいろと苦労する』と。それは、これだけを指すのではなかったんだ。

 問題は、ゆっくりと、けれど確かに僕の周りを取り巻いていた。そうやってゆっくりと首を締めあげていく。その忍び寄る足音に僕は気づいていなかった。目を向けようとも思わなかったんだ。

 それは、週明けの月曜日、その朝のホームルームにゲリラ豪雨のごとく突如としてやってきて、僕の周りを乱していった。いや、来る頃は既に決まっていたんだ。僕たちがそれを知らなかっただけで。加乃先輩は知っていたのかもしれないけれど。

 だからまさか、未悠さんがそんなことになるなんて、予想できなかったんだ。

悠杜「ところでなんだけど、この話ってラブコメだよね?」

作者「そうだよ」

悠杜「なぜかいつの間にか陰謀物になってないかな?」

作者「そうだね」

悠杜「どうして?」

作者「いや、どうしてって言われても……」


加乃「作者がそれしか書けないからだ」

作者「どうしてそれ言っちゃう!?」

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