樟葉加乃 暴れたりないじゃないか!
「お待たせしました、あれ、京香先輩はいないんですか?」
「気づかなかったみたい。弟ができて幸せボケしてるんじゃない? それはともかく、集まってくれてありがとうね」
私、彩里ちゃん、涼ちゃん、凛音っちと4人が集まった。まあ、これなら大丈夫だろう。
さて、今の状況を簡単に説明するに、悠杜君を巻き込まないように解散、再集合というわけだ。変に正義感が強いから足手まといでも突っ込んできそうだしね。
アイスクリームでも食べに行こうっていうのは、カモフラージュだ。まあ、食べるけど。だけど、本来の目的はそうじゃない。誘拐ビジネスをしている組織を、潰す。
そりゃそうだよね、あそこの会社はリストアップしてるだけで、実働隊は別の組織、表に出せないようなところだ。一つ潰せばなんて夢物語、会社をつぶしたところで壊滅するわけじゃない。蜘蛛の糸のようにたどっていくのは無理なわけだ。つまり、私たちがやる必要があるということ。悠杜君には説明してないから気づかなかったみたいだけど、彩里ちゃんとか凛音っちは私の行動に違和感を覚えたみたいだし、涼ちゃんは情報をすべて握ってるし。
意外だったのが、京香ちゃんがいないこと。普段だったら間違いなく私の言葉の端に裏を感じて突っ込んでくる、もしくは自ら案を練るのに、今回は気づかずに悠杜君と帰っちゃった。千秋さんも言ってたけど、弟ができて幸せボケしてるんじゃないかなあ。注意力もいつもより散乱だし。
「少し、不安ですね」
「きっと大丈夫だって。私も凛音っちもいるからさ。それに、京香ちゃんは頑張り過ぎなんだよ。もうちょっと休んでもいいと思うな」
親衛隊のトップとして人をまとめて、テストでいい点を取って、そして秘密裏に動いて組織を潰す。無茶しすぎだったんだろうね。っていけないいけない。感傷的になるもんじゃない。
「それに、今回は特に拳銃とかは持ってないっぽいよ。飛び道具がないのは楽だよね。楽しくないけど」
「先輩みたいな乱射狂はめったにいませんよ」
「酷い!」
だって、銃弾ばらまくのって楽しいじゃない。音と風と硝煙のにおいと。まあ、だからといって戦場に出向く気はさらさらないし、年に2回くらいあればいいかなーという感覚なんだけどね。
「今回は涼ちゃんが敵を追い込んでくれるから楽だしね」
というのも、今回はとある製薬会社の研究所の秘密部門なのだ。眠り薬とか用意してあるのかな。そして、機械式のパスだったり、あるいはコンソールルームだったりの施設は気づかれないようにもうのっとった。というわけで暗闇から襲撃するだけの簡単なお仕事です。戦闘に関しては凛音っちがいるし、彩里ちゃんも普通の強さなら勝てる。私だって喧嘩は強いよ? そして実はもう一人ゲストがいる。
「やあ、加乃ちゃん。知らせは受けてるよ」
千秋さん。この人の実力は頭一つ抜けてる。前は本調子じゃなかったって言ってたしね。というか、一枚かんでるし。
「というわけで、いざ、レッツゴー」
「誘拐ビジネスと、人身売買の違いってわかる?」
「なんですか?」
千秋さんが意味深に言う。まあ、最初から言い分けてたから何かあるのかとは思ったけど。
「誘拐ビジネスってのは、人質を元の場所に返すことを想定している。それは対価としてお金だったり、あるいは利権だったり。まあ、簡単に言えば丁重に扱うわけだ。だけど、人身売買はそうじゃない。どっちが酷いかというとどっこいどっこいかもしれないけどね」
そんな違いがあったなんてね。どっちにしても犯罪行為だし、私たちに被害が及ぶようなら潰すだけだ。あんまり関係ない気もするけど。
「2つの大きな違いって言うと人質、かな。誘拐ビジネスは腐ってもビジネスだからね。腐ってるけど。だから、利益が出ないのならやらない。だから下調べをするし、人質がいない期間だってある。今はどんな感じかな?」
「えっと、いないみたいですね」
涼ちゃんがパソコンを触りながら答える。うわー、ネトゲやってる。すごく余裕。
「まあ、そういうわけだから暴れてくるとしようか。大丈夫だって」
「それじゃあ、行ってくるね」
一番手は私だ。中に入って撹乱してちょうどよさそうな時に彩里ちゃんと凛音っちを呼んで2人が突っ込む。と同時に千秋さんが外側から掃討。中と外から混乱させる計画なんだけど、はっきり言ってつまらないので遊んでみることにする。
電子錠は開錠済み。よし、女スパイとして活躍しますか。というわけで、早速捕まってみる。これは!? トリクロロメタン!? なんてね、わかるわけない。かくっとやられたふりをしてみる。
おっと、いきなり後ろ手に縛って来ましたか。容赦ないね。まあ、これくらいなら縄抜け出来るけど。そして奥の部屋に放り込んでおけと。容赦ないねえ。悠杜君もこれくらい容赦なければいいのに。
縄抜けしてそして油断させるために縄をすぐ解けるようにかけなおしておく。っておいおい、人質いるじゃないか。私じゃ無くね。白衣を着ているところを見るに、裏切者は粛清って感じかな? あるいは、研究員の娘ですとか。ちょっと面倒かもね。
と、おっと、始まったっぽいね。隣の部屋から彩里ちゃんと凛音っちの声がする。今凛音っち私のこと馬鹿って言ったな? あとでアイアンクローだ。これは作戦なんだから。
「何をしている、早く捕まえろ!」
「無理です、強すぎます!」
「あれだ、あれを使え!」
お、あれってのは涼ちゃんが見つけた緊急時の催眠ガス噴出装置のことかな? 残念ながら機構を乗っ取っちゃったので使えません。安全装置3重の内2重を抑えたからね。
「だめです、作動しません!」
「くそ!」
私のいる部屋に飛び込んでくるリーダー格らしき男。どうやら人質を取るらしい。私の方が近いみたいだね。ということは自然に私ということになる。まあ、その位置に移動したんだけど。しかし、人質を取るとはダメだね。だって、自力じゃ勝てないって言ってるようなもんだもん。
「おい、こいつが」
立たせてくれてありがとう。というわけで膝蹴りを叩き込んでおいた。
「加乃先輩、加乃先輩も手伝ってください」
「だって、私縛られてるし」
首にナイフ当てられた状態からの逆転劇って何かかっこよくない?
「それが見せかけだってのは知ってますから」
もう、どうしてばらしちゃうかな、凛音っち。ジャーマンスープレックスかけるぞ。出来ないけど。
「仕方ない、やりますか」
「加乃ちゃん、こっち終わったよー」
「私の活躍の場なかった!」
どうしてそのタイミングで終わらせるかなっておもう。暴れたりないじゃないか! まったく、悠杜君をからかって遊ぶとしようか。
「よし、帰るか」
あとは、いつも通り刑事さん呼んで現場を任せたら終わりっと。幸いにして監禁事件の被害者っぽい人がいるし、たぶん大丈夫だよね。
あ、凛音っちにアイアンクロー忘れた。
加乃「というわけで、今回はシリアス加乃ちゃんでした。どう、シリアスな私もかっこいいでしょ?」
作者「どこがシリアスだ。いつも通りギャグキャラじゃんか」
加乃「悠杜君を気遣ったり、敵組織を潰したり」
凛音「すごく遊んでましたよね。ついでに私に酷いことしようとしてたし」
加乃「あ、待てー!」
作者「そういうところだッ!」




