深草東治 頭痛の種が尽きることはない
新章開始。短めです
それと、当て馬君の名前を岩倉利頼→二条利頼にしました
「深草君、ちょっといいかい。新事業部の二条部長が呼んでいるんだが」
「あ、はい、すぐ行きます」
二条部長は会社の社長の御曹司だ。それだけ言うと世間ずれしたボンボンを言うのかもしれないが、業績も優秀で実際は実力で新事業部の部長に収まっている人だ。血縁関係もあって、次期社長候補筆頭だそうだ。私のような平社員には全く関係のない人だと思っていたのだけれど。部が違う私に何の用だろう。しかも昼休みに。
「失礼します」
「ああ、そんなにかしこまらなくていいよ。プライベートのことだしね」
実際に見たことはなかったが、二条部長はなかなかスマートな方だった。小太りを想像していたが、そんなこともなく、ダンディなおじ様というところだ。そういう趣味の女の子もいるかもしれない。
「で、どういうご用件でしょう?」
「まあ、そこに座り給え。これから私たちは友となるのだから」
「はあ」
インスタントコーヒーを注がれる。酸っぱいからあんまり得意じゃないのですけれどね。
というか本当に何用だ。
「そう言えば、二条部長のお子さんは高校一年生でしたね。私の娘と同じです」
「そう、それなのだよ」
二条部長が指をパチンと鳴らす。
あかん、地雷踏んでしもた。
「実は、うちの息子、利頼というのだがね。実は、君の娘、未悠さんと言ったかな。うちの愚息が彼女のことを気に入ったらしいのだよ」
「はあ」
そう言えば、未悠と悠杜君がいい仲だったな。素直になれない少年時代、私にもあったなんて現実逃避をしてみる。
「端的に言えば一目惚れをしたということだね」
「ゴホッケホッ」
コーヒー飲んでなくてよかった。
「親としては、子どもの恋心を応援してやりたいとは思うんだ。実は、恥ずかしい話、私に似て奥手でね。それで、聞きたいのだが、未悠ちゃんに今恋人はいるのかな?」
どうなんだろう。あの様子だと、悠杜君のことが好きなのかもしれないが、今のところ、恋人関係ではなさそう。いや、ひょっとしたら周りに隠しているだけかもしれない。
「よかった、いないのか。それならうれしい。どうだろう、協力してくれないか?」
「協力……ですか?」
というか、無言を肯定と取らないで欲しいんだけど。この人絶対奥手じゃないよね。
「イメージ戦略というのかな。それとなく、利頼のことを伝えて欲しいんだ。あとは、偶然鉢合わせたりするかもしれないけれど。そうやって、応援してやろうと思ってね。もちろん、利頼が前に進まないことには、だけれども」
「はあ」
それ、やっていいのだろうか。
「よかった、納得してもらえたようで。それじゃあ、頼むよ。親戚になった時、仲がいい方がいいからね」
「あ、ちょっと!」
行ってしまった。未悠はどう思うかなあ。利頼君が悪い子じゃないといいんだけど。それと、悠杜君にはライバル出現だし。あーあ、まただ。頭痛の種が尽きることはないよ。
って、昼食食べに行かないと。
作者「さあ、あとがき四コマ始めるよ」
作者「誰もいない……」




