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学年一の美少女が僕に惚れてるなんて信じたくない!  作者: 蒼原凉
どうして義妹(姉)ができるんだ!
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どうして義妹(姉)ができるんだ!

 祇園探索はめちゃくちゃ眠かった。というか、石段で休んでた。

 すべての元凶(バカノ先輩)はお茶屋らしき人込みの中に混ざって行っていた。よくそんな元気があるものである。きっと僕らとは体のつくりが違うんだろう。ロボトミー手術したとか。あれ、ロボトミー手術って脳にするんだったっけ? 体に機械を埋め込むのじゃないのか? じゃあ違うな。

 深草さんは人混みが苦手らしいので、流石にそこにはついていかなかったが、樟葉先輩が大量にお土産を買って深草さんに渡していた。一体そのお金はどこから出ているんだろう。お小遣いだとしたら相当高いと思う。一月5万円くらいか? それともバイトだろうか。聞いたことないけど。

「あれ、深草さんの分だけですか」

「ゆーくんは自分で買ってきなさい。パンチのお返しだぞ」

 キラリ、☆、みたいに悪戯っぽく笑う。いやそもそも、あれ、樟葉先輩の悪戯が気のせいだからな?

「もういいです。バカノ先輩が理不尽な人だってのはよくわかりました」

「ちなみに油性ペンは日焼け止めで落ちるぞ☆」

「それを早く言えー!」

 敬語ぬけたが問題なし。だって、バカノ先輩だもん。

 カバンから早速日焼け止めを取り出し、トイレを探す。近くの駅のトイレを借りた。少し黒っぽく残ったがきれいに落ちた。ああ、もう。

「ひえー、相変わらず女子力高いねー。日焼け止め常備だなんて。これで落書きし放題」

「少しは反省してくれ!」

 それを言うためだけに追いかけてきたのかこの人は!

 

 

 

「ねえねえ、ゆーとくーん」

「先輩、眠いんだから寝させてください」

 新幹線の中で、樟葉先輩が話しかけてくる。ちなみになぜか、2人席の窓側に座っていた。どうしてこうなった。

 深草さんは撃沈して山科さんにもたれかかっている。『恋人』は知らん。

「それじゃあ、私の膝枕にする?」

「断固拒否します」

 あ、そうだ、橋本先生も寝てたんだった。忘れてた。

「だって、すっごく暇なんだよー。トランプか何かして遊ぼうよ、ねえってばあ」

「昨日さんざんやったじゃないですか。そのせいで眠いんです。というか、あんまり大きな声で言えないけど、お酒持ち込んじゃだめですよ」

「それはその場のノリというか、てへっ」

 てへじゃない! と言いたくなるところだが、ぐっと我慢した。そういうことを言うと、この人は調子に乗るのだ。バカノ先輩を凹ませるには無視するに限る。

「そういうわけで僕は寝ます。おやすみなさい」

 そうだ、結局昨日は使わなかったけど、安眠グッズを持って来たんだった。思い出して耳栓とアイマスクをして窓にもたれる。これでオーケー。

 

 ……そう油断した僕が馬鹿でした。

「ひぇふ!」

 膝に衝撃を感じて、慌ててアイマスクを外す。というか、逃げられん!

「膝枕なんだからおとなしくしといてよー」

「勝手にもたれかかってくるな!」

 そこには僕の膝の上にもたれかかって見上げてくる樟葉先輩がいた。体を無理やり起こす。めっちゃびっくりした。

「寝るならまたやるよ」

「だれか、こいつを縛りつけといてくれ」

 そしてできることなら、どこかに運んで行ってくれるとなおよし。

 

 

 

 結局、夏休みは最後の最後までくたくたになるイベントでフル稼働だった。あ、でも、これから、親を説得しないといけないのか。鬱だなあ。そう思って家に帰る。

「ただいま」

「あ、悠杜、お帰り」

 と、そこには、物置にしていた2階の部屋から顔を出した父親がいた。整理をしていたらしい。

「あら、悠杜君、お帰りなさい」

「夏乃さんなんでここに!?」

 そして、その奥から夏乃さんが出てくる。え、なんで!? 何が起こったの!? What's up!

「その、な、あれから夏乃さんとも話し合ったんだけどな」

 父親が照れ臭そうに頭をかく。ほへ? どういうこと?

「お前たちがそんなことを考えていたのは、片親だと心配かけてたからなんじゃないかっていう話になってな。ほら、将来いろいろ、不便なこととかあるだろ?」

「まあ、もともと、宗介さんのことはそこそこ好きだったし、いいかなって。ちなみに今は京香の部屋にする場所を片付けてたの。今日帰ってきたら話すつもりよ」

「やったー!」

 気がついたら、僕は飛び跳ねていた。こんなにうれしいことはバイトを始めたとき以来かもしれない。やった、これで死なずに済む。

「あ、やま……、京香さんに連絡してもいい?」

「あ、私からするつもりだったんだけど」

 携帯電話から、山科さんの番号をダイヤルする。こうやって考えると携帯って便利だな。

「もしもし、山科さん?」

「なんですか、伏見悠杜。私に電話してくるなんて。よほどの要件でなければ時間の無駄だと思いますが」

 そうか、山科さんはまだ知らないんだ。

「実は、計画なんだけど、あれから2人で話し合ったらしくて、結婚するんだって! 逆にうまくいったよ!」

「なんですって!?」

 それを言うと、いつも声色一つ買えない山科さんの声が変わった。明らかに喜んでいる気がする。

「今すぐ行きます。その場を離れないでください!」

 それから約30秒後。息一つ切らせずに山科さんはそこに立っていた。

「あ、京香も来たんだ」

「お母さん、再婚するって本当?」

「うん、そのつもり。というかもう籍入れてきちゃった」

 早!? 隣では山科さんもガッツポーズしてるし。

「伏見悠杜、今回ばかりは礼を言います。あなたの協力がなければ、計画は実行できませんでした。いえ、お兄ちゃんと呼んだ方がいいですね」

 ほへ!? え、どういうこと!?

 さっと血の気が引く。そうだった、忘れてた! 山科さんに殺されないことばっかり考えてた。

「これで、お姉さまの正式な義妹になれます」

「どうして義妹(姉)ができるんだ!」

 気づいたらそう叫んでしまっていた。

 

 僕は何をやってるんだろうね。

 

 

 

 ってちがーう! まだ僕と深草さんが結婚するなんて決まってないんだから! というか、深草さんは僕に惚れてないって信じてるんだから!

ようやく章タイトルが回収できました。次回から新しい章になります。新章は文化祭編を予定しています。


作者「久しぶりに、ツンデレ見せられた」

伏見「ツンデレちゃう!」

作者「樟葉先輩もツンデレかな?」

伏見「違うったら違うから! そんなの信じないし!」

作者「なんでお前が言うんだよ……」

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