87.我が家のダンジョン探索(安全)
我が家の地下にはいると、広い空洞が出迎えてくれた。
「うーん、サクラがいない状態で入るのは久しぶりだなあ」
「そうなの?」
「おう、ここは広いからな。サクラの同期で道を確かめつつ、目的地に一直線で行ってたんだ」
でも、今回は目的地がない。
ただ壁を構築している魔石や素材の収集をするだけだ。
「だからまあ、適当に進んで、適当に掘ればいいよな」
「ん、そうだね。というか、入口から既に高品質の魔石が、壁になっているね」
そう言って、ヘスティは俺たちが降りてきた階段脇の壁を見た。
なんだか緑に光っているけれど、これが高品質の証なんだろうか。
「そう。凝縮した魔力が、光に変換されてる。つまり、それだけ魔力を貯めこんでいる、証拠」
「へー」
本当にヘスティは詳しいな。一緒に付いて来て貰ってよかった。
俺からすると、どの石が、どの土が良さそうなのが全然分からないしな。
「光ってるのを集めれば良いのか?」
「ん、基本的には、そう」
「了解。……ああ、でも、このダンジョンの壁、基本的にどこも光ってるんだけど、どこを集めれば良い」
「……」
そう、我が家のダンジョンは、上下左右の壁が大体光っている。
だから松明とかライトとかなくても普通に歩けてしまうくらい明るい。
「あー、うん。……これは、どこが一番いいのか、我にもわかんない。予想外だから」
わあ、ついにヘスティが説明を投げてしまった。
ぷいっと視線をそらしているし。
微妙に拗ねてる様な気もする。
「だって、このダンジョンみたいなの、見たことないし、知らないもの。我、他の竜王が作っていたダンジョン、見たことあるけど、ここまですごくなかったし。どこの高難度ダンジョンよりも、素材に溢れているから、比較しようが、ない」
「そうだったのか」
というか、ダンジョンって竜王も作るんだな。
ダンジョンマスターだけかと思っていたぞ。
「うん。竜王がダンジョンマスター代わりになって、モンスターを使役して、作成している場合が、ある。また、竜王の体に精霊が憑依して精霊のダンジョンを構築したりすることも、ある」
「精霊が憑依ってすごいことを言うな」
「まあ、一例。我とかは、憑依されたり、しないし。憑依されやすい奴もいる」
まあ、スライムに乗っ取られる竜王がいるくらいだし、精霊が憑依する奴もいるんだろうなあ。理屈は良く分からないけれども。
「というか、ダンジョンにも種類があるんだな」
「ん、結構、分類が出来る。精霊のダンジョンの場合はモンスターではなくて、精霊が住まうダンジョンになったりするから、分かりやすい」
分かりやすい、と言われても、俺からするとダンジョンというものは我が家のコレしか見たことがないので、比較できないんだけどな。
「しかし、ウチのダンジョンはどういう分類になるんだろうな」
モンスターは今の所出ていないし、あるのは温泉と魔石と、あとは水脈と広大な空間くらいだろうか。
「ちょっと判別、不明かな。あと、温泉も、源泉のままだと、結構酷いトラップに、なるよ? ……我とか、食らったら、多分動けなくなるし」
そういえば、ヘスティは温泉の湧き出ている場所に一切近寄らなかったなあ。
「まあ高難度ダンジョンであることは、間違いないと思うけど、ね。素材は異様に高品質で、上にはアナタがいるし」
「高難易度って……俺が関係してるのかよ」
「だって、このダンジョン、アナタの家で、アナタのモノだから」
俺が難易度の指標になるってのも、変な気分だ。
まあ、難易度がどうあれ、我が家のダンジョンに見知らぬ奴を、進んで入れる気は全くないんだけどな。今の所、侵入者はいないが。
「でも、とりあえず、良さそうな素材ばかり取れるのは有難いな」
「ん、そうだね。ここは、見つけた所から、取れば大丈夫そう」
「了解。適当に掘っていくかー」
そのまま、俺とヘスティは、持ってきた袋が一杯になるまで魔石を集め続けた。
かなりの量になったが、ゴーレムに使いきれなくても、他の利用方もあるしな。
持ち帰れるだけ持ち帰ることにした。





