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俺の家が魔力スポットだった件~住んでいるだけで世界最強~  作者: あまうい白一


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74.祭りの前のちょっとした騒ぎ

 昨日、早めに就寝した事もあってか、日の出と共に起きた俺は、久しぶりにサクラの朝食を食べていた。


「うん、サクラの飯は朝一で食べると、なおさら美味く感じるな」

「ふふ、ありがとうございます。街のお祭りもあるようですし、ちょっと少なめにしましたが、足りますか?」

「おう、十分だよ。というか、今日から祭りだったっけか?」

「確か、そうだった気がします」


 開催日時をきっちり聞くのを忘れてしまったが、まあ、構わないだろう。

 プロシアの祭りは三日以上続くらしいしな。


「それじゃあ、気が向いたら街の方に行くか」

「はい。お店もついでに開いてしまいますか?」


 それはどうしようか。

 まだリンゴを運んだだけで、加工とか一切していなかったりする。


「今日は準備くらいかな」


 祭りは数日続くというので、確実に足りるように軽く千個くらい運び込んだ。


 ひと箱百個入りが十箱なので、楽に運べたが、加工はそこそこ時間が掛かる。


「一階層分、運びましたからねえ」

「まあ、運ぶのも、加工も殆んどゴーレム任せなんで、楽だけどな」


 リンゴを手にとって絞り出すのもゴーレムだし、液体をこすのもやはりゴーレムだ。

 

 俺が気にするのは薄める濃度くらいで、本当に楽なものだ。

 プロシアにもこの森にも、飲料に適した水が大量にあるので、あんまり気張る必要は無いしな。

 なんて思っている間に朝食も食べ終わった。


「ごちそうさま。美味かった」

「はい、ありがとうございます!」

「んじゃ、街に出る準備するか」

「そうですね……っと、主様、なんだか上空に奇妙な魔力の動きがありますね」


 そう言って、サクラは窓の外を見た。


「奇妙な魔力の動き?」

「いえ、どちらかというと――街の方から感じますね」


 サクラの感知範囲は広い。だから、街のほうで奇妙な動きがあれば、気付く事もある。


「ふむ、祭りで人が増えてるから、変な魔法を空に放った奴でもいるのかね」

「どうでしょう。あ、――落下物が来ました。この前のと同じ感覚です」


 ああ、奇妙な魔力というのは、それか。


 今度は家の最上階にいるからか、目視も出来る。

 街のある方向から、俺の家にめがけて斜めに振ってきている。


「なんか、すげえ軌道で飛んできたな。――伸びて防げ、樹木」


 前のと同じく、樹木を伸ばして受けとめた。

 青々と茂る樹木に阻まれて、星竜王の鱗は勢いを失う。


「やっぱりでけえなあ、この鱗」


 というか、こういうのが多くなってきたってことは、そろそろ全部の皮、脱げ切るんじゃないだろうか。

 まあ、こちらとしては建材が増えて嬉しいだけなんだけども。


 ……あの大きな岩一つじゃ、出来ても小さな浴場だったしなあ。


 二つあれば大浴場くらいはいける筈だ。

 

「――って、そういえば、ヘスティはどうした? 寝ちまってて気づかなかったけど、尋ねてきたのか?」


 もしくは、まだ朝なのに、まだ調べているのだろうか。


「いえ、昨晩、街の方にいった反応はありましたが、帰ってきませんね」

「街の方に? 調査用の道具でもとりに行ったのか?」

「なにか急いでいたようにも見えましたが……」

「まあ、いいや。今から街に行くついでに探すか」


 途中で出くわすかもしれないしな、と思いながら、俺は樹木を操って鱗を裏庭に運ぶ。

 そして最上階から街を見やる。

 遠くは無いが、近くもない、そんな街を。


「……うーん、徒歩で行くのも時間が掛かるし、この前開発した、走行用のウッドアーマーでも試してみるかな」

「そういえば、なにか作ってらっしゃいましたね」

「まだ試験中だけどな」


 街までの距離なら、試験走行には丁度いいだろう。

 だから、周辺の樹木を束ねて軽く作っていると、


「んー? 主様。街の様子、なんだかおかしいです」


 サクラが首を傾げていた。


「おかしいって、どの辺が?」

「空の方、なにか影になっていませんか?」

「本当だ。なんだありゃ?」


 雲が割れて、変な形をしているし、変な空だ。


「ちょっとアーマーを着込んで、走って見に行くか。サクラも来るか?」

「あ、はい。お伴します」


 そう言って、俺とサクラは庭に出て、作り上げたウッドアーマーと同化する。

 足に加速装置とバネを仕込んだ、移動型アーマーだ。


「うん、それじゃあ行くか。――モード《韋駄天》」


 そうして俺はサクラと共に、街へと走り出した。

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