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俺の家が魔力スポットだった件~住んでいるだけで世界最強~  作者: あまうい白一


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side ディアネイア&ヘスティ 緊急対策と情報のズレ

 深夜。ディアネイアは書類とにらめっこをしていた。

 書類には街の地図が書かれており、いくつかの赤い点が街を囲むように付けられていた。


「ここと、ここをそろえれば、ふう……これで、どうにか魔法使いの配備は完了か……」


 新たな赤い点を二つ付けてからディアネイアは書類を置いて、吐息した。

 そしてその書類を、部屋に控えた騎士団長に渡す。


「この配置で頼む、騎士団長」

「お疲れ様です、姫さま」

「あの質量が落ちてくるとなると、私の部下の魔法使いでも二人は必要だからな。中々かき集めるのが大変だった。……全く、明日には祭りというタイミングで、これは堪えたな」

「一応、街全体はカバーできているから、大丈夫でしょう。本当は祭りを延期出来れば良かったんですがね」

「――実害が、殆んど出ていないからな」


 落ちてくるかもしれない、という段階では延期をするのは難しい。

 既に街には人が集まっているし、商人たちも準備をしているから、延期・中止には相応の理由がいる。


「まあ、今回は私たちでどうにかできそうだから、良かったと思うよ。この頃は、イレギュラーが多かったとはいえ、ダイチ殿に頼り過ぎだったからな」


 本来、プロシアは自分の街だ。自分たちで守らなければならない。

 なのに、ダイチにはなんど助けられて、なんど力を貸してもらっているか分かったものではない。

 今回だって、落石の原因に気付けたのは、彼の同居人のお陰だしな。


「地脈の彼ですな。聞けば、彼も店を出すとか」

「とても美味しい栄養ドリンクの店だ。騎士団長も疲れたら寄ってみるといい」

「おお、そうですな。最近は、朝も元気が無くなってきているので、一度頂いてみましょうかね。そのためにも――この書類を回してきます」

「頼んだ」


 そうして、騎士団長が部屋から出ていくのを見送ってから、ディアネイアは椅子に体を預けた。

 

「ふう、ダイチ殿のジュースのお陰で体の調子は良いな。このまま祭りまでは小休止だけで持ちそうだ」


 あれを飲んでからというもの、体の体温は下がらず、頭は回りっぱなしだ。

 魔石から魔力を直接吸引した時以上に、体に力を叩きこまれた感覚がある。

 恐らく、この反動はあとあと来るのだろうが、


「やはり……ダイチ殿は凄い」


 この身に溢れている魔力なんて比べ物にならないほど、彼の中には力がおさめられている。

 こんな万能感にあふれた状態でも、全然、適う気がしない。それでも、


「あの人に、近付いている気分がするのは、嬉しいことだな……」

 

 と、元気を保つ己の体に微笑みを浮かべていた。そんな時だ。


 ――コンコン。


 小さく、窓が叩かれる音がした。


「ん?」


 ここは城の中ではそこそこ高い場所にあるので、鳥か何かか、と思ってそちらを見ると、


「え……ヘスティ殿?」

「ん……やっぱり、起きてた。良かった」


 窓の縁にヘスティがしがみついていた。


「ど、どうしてここに!?」

「飛んできた。はいっても、いい?」

「あ、ああ、構わないが……」


 窓を開けると、ヘスティはひらりと部屋に入ってきた。

 そして彼女はプルプルと顔を振る。

 どうやら城の壁面をよじ登って来たらしく、壁のかけらが顔に付いていたようだ。


「夜遅く、御免なさい」

「い、いや、それは別に良いのだが、何か用件でも?」

「ん、ちょっと話したいことが、出来た。昨日、言った奴の件について」

「昨日というと、星竜王のことだろうか。なら、心配いらないぞ? 脱皮で落下してくる鱗対策に魔法使いの配備をしたばかりだから――」

「それ、間違い。脱皮じゃない」


 ヘスティは首を横に振ってそういった。


「え……っと?」

「星竜王の鱗、物凄く、大きな状態で落ちてきたんだよね?」

「あ、ああ、そうだ。この前のは小さく砕いたものでな」

「脱皮だったら、もうちょっと小さいのが、落ちてくる。でも、今回のは違うし、鱗に血とか、皮膚とか付いていた。――だから、病気か大怪我してる」


 なるほど。鱗が落ちてきた理由が変わるというのか。


「つまりヘスティ殿はそれを教えに来た、と?」

「ん、間違った情報、渡してた。すまない」

「いや、謝られることじゃないさ。本来ならば私たちが調べなければならないことだったのだから」


 本当ならば研究班が文献を読んで、今回手に入れたものと照合させるという手間が必要だったのをショートカット出来た。それはとても有難いことなのだから。


「うん、だから気にすることは無いよ、ヘスティ殿」

「ん……でも、脱皮じゃないからこそ、気をつけなければいけないことがある。落ちてくるのは、鱗だけじゃないかもしれない」

「なんだと?」

「もしかしたら、落ちてくるかもしれない。星竜王の体、そのモノが」


 今、星竜王はどこにいるのか、それは鱗の落ちている場所から推測は可能だった。

 だからその推測に基づいて、ディアネイアは魔法使いを配備した。つまり、


「魔境森からこの街の上空にいるであろう、星竜王が、落下してくる、とそういうことか?」

「うん。多分、近いうちに、落ちてくると思う。あの子、前にも、こういうとき、落ちてきたから。昔と同じなら、落ちる」


 三〇〇メートル級の巨体が、この街に落下する。

 ヘスティの言葉は真剣だった。だからこそディアネイアはすぐに動く。


「――今から騎士団長を集めて会議をしようと思う。ヘスティ殿、悪いが、付き合ってもらってもいいか? 情報が欲しい」

「ん、分かった。でも、朝になったら一度、帰っていい? あの人にも、伝えたいから」

「え? ダイチ殿にはまだ伝えてないのか?」

「ん、彼は寝てる。起こすの、駄目かと思って」


 ディアネイアとしても、寝起きのダイチにはあまり良い思い出は無いけれど、


 ……後回しで、良いんだろうか。


 ちょっと気にはなる。だが、自分たちで出来る事は自分たちですると、先ほど決めたばかりじゃないか。ならば、


「うん、そうだな。私がこの街を守らねばな。……では、朝までよろしく頼む、へスティ殿」

「ん」

「再び、対策会議の始まりだ……!」


 こうして、今日の夜も、ディアネイアの執務室には沢山の人が訪れる事になった。

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