―side シャイニングヘッド―プロシア復旧戦と飛行実験
プロシア西部の平原。
そこでは、禿頭の冒険者の一団が巨大なイノシシを相手に戦っていた。
「ひゃっはー! ……病み上がりで、こんな所にくるんじゃなかったぜ」
シャイニングヘッドの面々は、巨大なイノシシ――ファフニールを切りつけながら、走り回っていた。
そのせいで肩で息を切らしてはいたが、ファフニールはまだまだ元気なようで、
「――ッ!!」
全速力での突進を続けてくる。
既に何度も切りつけているのに、出血させてもいるのに、倒れない。
「ヒャッハー。このファフニール、大物すぎて倒せねえぞ……!」
「今更行ってもしようがないでしょう。というかリーダー。骨折れてるんだからもう少し大人しく立ち回りましょうよ」
リーダーの腕をツンツンと小突いて、メンバーは言う。
「ヒャッハ、骨くらい回復ポーションでくっついてるだろ。だからつつくな」
「くっついても、元通りの丈夫さを取り戻すまで安静しなきゃダメじゃないですか」
回復ポーションは傷を治すが、元通りになるわけではない。
また、体力が戻るわけでもない。
本来ならば、ダンジョンマスターとの戦闘でボロボロになっていたリーダーは、まだ休んでいるべき状態なのだが、
「なんで来ちゃうんですか」
「ひゃっは……仕方ないだろ。こんなデカイモンスターが出てくるのが見えちまったんだから」
「これも立派な緊急クエストだよなあ」
これは、急に湧いたモンスターと仕事だった。
自分たちと同じく、街だって、復旧途中だ。
頑張ってダンジョン活発化の被害から立ち直ろうとしている。
なのに、このデカブツを放っておけば、損害が出る。
「ヒャッハ、それは良くないよな……」
近いうちに、祭りだって控えているんだ。そのムードに水を差してくるのは頂けない。
だから放っておけない、とシャイニングヘッドの面々は改めて武器を構え直す。
巨大なファフニールはまだまだ、やる気抜群だ。
その場で足踏みをして、突進の準備を整えている。
「ひゃっはー。フルメンバーじゃないし、きついけど……こんなの、大地の主の旦那に比べたら、平気だよな、お前ら」
「応!」
あのダンジョンマスターとの戦闘を見せられて、燃えなかった奴はいなかった。
あんなふうに強くなりたいと思った。
敵わないまでも、あの強さを目指したい、と強く思った。
「ヒャッハー、あの戦いの後、酒の場でしっかり話し合ったからな。もっと強くなるって」
「応……!!」
だから、シャイニングヘッドの面々は、引かないで、立ち向かう。
「ッ――!!」
「行くぞ!」
猛りと共に突進してくるファフニールを、リーダーは迎え撃とうと走り出す。
そして、激突しようかという、その瞬間、
「リーダー! そいつの影からもう一匹来てる!!」
「何?!」
巨大なイノシシの後ろから、一匹、突っ込んで来ていた。
前にいる奴が大きすぎて、死角になっていたのか、見えなかった。
……子分持ちかよ、こいつ……。
既に加速は済んでおり、このまま行けばまともに食らう。
……これは、いってえだろうなあ。
悪くて牙で串刺しか、よくて思い切り轢かれるか。
「くそ……!!」
ただ、何もしない訳にはいかない。
衝撃に備え、歯を食いしばり、激突に備えようとした。刹那、
「リーダー、上も!」
「へ?」
リーダーとファフニール二匹の頭上から、巨大な物体が落下してきた。
「うおおおお!?」
咄嗟に横っ跳びしたリーダーの目の前。
――ドグシャア!
とすさまじい音が響いた。
凄まじい勢いで地面に激突してきた何かは地面にクレーターを作るばかりか、リーダーをも吹っ飛ばした。
「ひゃっは、いてて……」
「り、リーダー、無事ですか?」
衝撃で吹き飛ばされたが、串刺しになったり、轢かれるよりは軽傷だった。
「ひ、ひゃっは。な、何かおっこって来たんだ……?」
リーダーが頭を上げると同時、土煙の中から起き上がるものがあった。
それは、一体の、大きなゴーレムと、
「ううん、飛んでる途中で落下しちまった。飛行ってのは、上手くいかないもんだなあ」
そして、自分たちが憧れる強さを持った男だった。





