61.飛竜王との合作
昼間。
俺がいつものようにゴーレムを作って、顔や体を細かく造形していると、
――ドカン!
と、ヘスティの小屋から爆発音が聞こえた。
「え?」
いきなりのことに、驚く事も出来ず、目線をヘスティの小屋に向けると、出入り口からモクモクと白煙が上がっていた。
そして煙の中から、
「けほっ……」
すすで汚れたヘスティが出てきた。
「……どうした?」
「ん、開発、ミスした」
「開発?」
「小屋、汚して、御免なさい」
「ああ、いや、それは良いよ」
別に小屋が吹き飛んだわけじゃないし。
むしろあれだけ大きな爆発音があったのに、壊れた感じも一切していないあたり、頑丈である。
「アナタの家が、アナタの魔力で強化されて、丈夫になってるから、良かった。普通の家だったら、粉々だったかもしれない……」
「どんだけ危ないものを開発してたんだよ。というか、何を爆発させてたんだ?」
「ん、これ」
聞くと、ヘスティが見せてきたのは樹木の筒だ。
杖のように見えたが、それにしては太すぎる。
中には黒い魔石が幾つかはいっているし、なんだろう。
「これは?」
「魔石の推進剤。空を飛ぶための奴」
ああ、前に行っていた逆バンジーの奴か。
これを見ると、ロケットみたいなものに見えるけど、それを作ろうとして爆発を起こしたんだな。
「我を実験台にして、やってた。足元につけて、ちょっと飛ばそうとした。でも、配合、間違えたみたい」
「――って、あぶねえよ。外でやれよ」
真っ白な髪の毛が真っ黒になるほど、汚れてるし。
広い所でやるべきだろう。
「ん、いいの? ちょっと、汚れるよ?」
「部屋の中で爆発されるよりはましだろ。あと、実験台に自分を使うのも止めておけ」
「我、別に、平気だよ?」
竜王だから、頑丈なのは分かってるけどさ。
「平気でも、知り合いが爆発を食らってる姿を見ると心臓に悪いだろ」
「……我の事、心配してくれるの?」
「いや、当たり前だろ」
なんだかんだ長い間顔を突き合わせてきたんだ。それくらいは思うさ。
そう言うと、ヘスティは困ったように眉を下げてから、頬を赤らめて小さく頷いた。
「ん、分かった。アナタがそう言うなら、我、実験台やめる。他の使う」
「おう、そうしてくれ」
「でも、それなら、何を飛ばそうか……」
ああ、何かを飛ばすのは前提なんだな。
でも、そうだな。
この辺りで実験台に出来そうなものは限られている。
無論、俺とかは空を飛べないから無理だし、そもそも実験台になりたくは無いし。
人狼とかにも頼めない。
さて、どうしたものか、とキョロキョロと周囲を見ていると、
「あ」
作りかけのゴーレムが目に入った。
「あのさ、ヘスティ。ゴーレムを実験台にすることって出来るか?」
「出来る、とは思う。けど、使って、いいの?」
「おう、ゴーレムの強化は大歓迎だよ。しかも、飛べるとか最高じゃないか!」
なんだかんだいって、ロケットはロマンだと思うんだよ。
空飛ぶ筋骨隆々のゴーレムというのは格好いい気がするしな。
「……な、なんか、珍しく、熱い、ね。アナタ」
「いや、まあ飛べるヘスティにはわからないかもしれないけれどさ、空を飛ぶってのはやっぱり一つのロマンなんだよ」
俺はイメージの魔法で多少の事は出来るようになっているけど、未だに空を飛べた事は無い。
樹木を自由に伸長できるので、飛ぶ必要がないと言えばないのだが、自由な空中移動はちょっと憧れがあったりする。
「う、うん。じゃあ、ちょっと仕込むから、手伝ってくれる?」
「おう、手伝うぜ」
そして、俺とへスティは、二人で空飛ぶゴーレムの開発に着手することになった。
まあ、装置を組み込むだけだから、ほんの数日で形は出来るんだけどな。
あとは、暇な時、実験運用してみようと思う。





