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俺の家が魔力スポットだった件~住んでいるだけで世界最強~  作者: あまうい白一


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5.第一期、自宅防衛戦(半オートマチック)

 魔力を使うと結構疲れる。

 腹が減るだけならいいが、眠くなることが本当に多い。


 だから昨日は夕方から爆睡して、今も昼。


 ……ああ、惰眠をむさぼるの最高。


 朝六時に家を出て、終電で帰ってくるような生活をしていた時とは比べ物にならない。

 むしろ寝過ぎて元気が有り余り、日中に家の周囲を散歩をしてしまうくらいだ。


「でも、あっちもこっちも木と岩しかねえな」


 鬱蒼とした森の中だからか、地表には変な動物や変な虫しかいない。

 ギャーギャーないてるドラゴンとかは飛んでいるけど、空の彼方だ。しかも、


「ぴ、ピギィ!!」


 地面に俺がいるのに気づくと、鳴くのをやめて、必死の勢いで逃げていく。

 完全に避けられている。叫び一発でドラゴンを吹っ飛ばしたのが原因なのか。


 ……肉の備蓄はあるから狩る気はないんだけどな。


 平和なのは良いことだ。

 散歩して、帰るまでいたって平和である。


「ただいまー」

「お帰りなさいませー」


 そして家に帰ると、サクラが温かな昼飯を作って出迎えてくれる。

 

 幸せである。

 

 異世界での実家暮らしサイコー、なんて思っていたら、 


「主様。モンスターが近づいてきています」


 問題発生したよ。

 モンスター?

 昼飯時なのに、また近所迷惑な輩が来たのか、と窓の外を見ると、 


「ぐはは、こんなところに、魔力だまりがありやがる……」


 窓の外に複数の人影が見えた。ぼそぼそと言葉も喋っている。


「あれがモンスターっていう奴なのか?」

「魔獣とも言いますね。本能に忠実な、知能ある動物たちです」


 人狼とでも言えばいいのか。獣人と言えばいいのか。

 犬の耳を生やした毛深い男どもがこちらを伺っていた。

 しかも、一方向だけではない。


「オサ! 配置に付きました!」

「絶大な魔力……こんなものがあったとは……我々らが人狼の一族にふさわしい。我が頂点に立つ一族にぴったりだ」


 声を聞くに、どうやら複数に分かれているようだ。


「必殺の陣、用意は良いか?」

「準備万端です、オサ! 中にいるであろう存在はどうしますか?!」

「決まっている! 戦士の街を一つ滅ぼした陣形だ。あの時と同じく、一息に食らうぞ!」

「ウオオオオオオオオオオオ!!!!」


 すごくやかましい奴らが、家の周囲にぐるりと何十体もいた。

 それぞれが分厚い剣とか、槍とかを装備していた。


「……なにがしたいんだあいつら」

「私たちの魔力に引かれてきたんですよ。だから、侵入してこようとしているんです」

「まーた、魔力狙いか」


 どいつもこいつも言う事は一緒である。


「うっせえ、って怒鳴りたいけど……怒鳴った後で飯は食いたくないんだよなあ」


 せっかくの美味しい昼飯を、怒りやイライラで邪魔されたくない。

 そもそも数ばかり多いので、怒鳴って吹き飛ばすのも手間だ。


「あ、それでしたら、私をお使い下さい」

「サクラを使う?」

「はい、以前、私を媒介に魔力を使ったように、今回も私を使って、家の周囲に追い払い用のトラップなどを設置すれば楽に終わります」


 おお、そんな便利機能があるのか。


「家から出なくても追い払えるのか、凄いな」

「はい。主様の魔力があれば、せん滅することだって出来ますよ」


 それは良いことを聞いた。

 さっそく使わせて貰おう。 


「それでは、私に触れてください」


 サクラが俺の隣にちょこんと座る。そんな彼女の肩に手を置くと、


「んっ……」


 ピクリと彼女が震えた。瞬間、


「――これはすげえな」


 家の俯瞰図、そして全体像が俺の脳裏に浮かんだ。


「現在、私の知覚を主様に同期しています。なので、好きな所に魔力を流し込んでもらえれば、私が同期して、罠が設置されます」


 流石は家の精霊。

 俺の家の敷地が、直感的にわかる。


 そして、異物が存在しているのも同じくらいに分かる。


 六十五体の異物が、奴らが俺の領地に入ろうとしているのを理解した。だが、


 ――そこは俺のテリトリーだ。

 

「勝手な侵入は許さん」


 俺は、魔力を行使する。

 対象は、家の周りに設置したリンゴの木々。

 今回は最初から全力で。


「立ち上がれ、ウッドゴーレム……!!」


 俺の魔力とイメージを受け取ったリンゴの木々は、その通りに立ちあがった。

 侵入者を排除する、兵として。


 ●


 人狼の長は突然の事態に驚愕していた。

 なにしろ、近場にあったリンゴの木がいきなり巨大化し、動き始めたのだから。


「な。なんだ、こいつは!」

「お、オサ! ぶ、部隊との連絡(テレパス)が途切れました」

「二番隊、二番隊!? ――くそっ、全部吹き飛ばしやがったのか!」


 常に連絡しあい相手を高速で包囲する必殺の陣。

 それがもう崩壊していた。


「なんなんだ、この生物は」

「い、いや違います、オサ! この魔力は、生物じゃない。ゴーレムです」

「バカ言うな。こんなデカイウッドゴーレムがいてたまるか! 精々、人間大だろうが」


 人の二倍くらいが精々なのが、ゴーレムという兵器だ。

 なのに、目の前にあるのは違う。

 

 地響きとともに、ウッドゴーレムは歩いてくる。


 一歩ごとに足元の根っこから養分を吸い取り、どんどん育つ。

 どんどんでかくなる。見上げても頭が見えないくらいに。


 人狼たちは、動けなかった。


「なんだよ、この巨人は……!」


 その巨大な拳が、目の前に迫るまで。


 ●


 ――やれ、ウッドゴーレム。


 ウッドゴーレムは指令を受け、その通りに行動した。すなわち、


「――!!」 


 叫ぶことなく、巨大な拳を振り抜いた。

 その圧力は家の周囲にいた人狼をまとめて、森の奥の奥まですっ飛ばした。


「うぎゃあああああああああああああ!!」


 そのまま、彼らは戻ってくることは無かった。

 もう、家の周りに異物はない。

 

「お見事です、主様! ゴーレム、上手く動きましたね!」

「リンゴの木を育てつつ、他にできることがないかってやってみたら、意外と機敏に動いてくれたからなー」


 なんどか練習した結果、配置型トラップとしては優秀なモノに育った。


「――ま、それはともかく、それじゃ、昼飯にしようか」

「はい! ご飯よそいますね」


 それから俺は、のんびりと、昼飯を食べることにした。


ご声援ありがとうございます! 折角の祝日ですので、ガツガツ更新していきます! 朝(今)と夕方と夜の三回を予定しております!

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