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俺の家が魔力スポットだった件~住んでいるだけで世界最強~  作者: あまうい白一


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58.はじめての、お買い物

 俺とヘスティはアンネの店を訪れていた。

 場所は森とプロシアの中間で、街道のすぐそばだ。


 外側は普通の平屋に見えるのだが、内部では、色とりどりの品物が綺麗に陳列されていた。


「へー、出来たばっかりだって聞いていたけれど、それにしても綺麗だな」

「見てくれだけでも立派にしないと意味がないって、姉上さまから教わっていますからね!」

「ん……そういえば、言った事、あったね」


 ああ、そうだったのか。

 確かにヘスティの作る杖は、どれも格好いいけど、そんな主義があったんだな。


「はい。それに広く作りましたから、いつでもお茶を飲みに来てもらっても構いませんよ! お茶以外の予定でも、私に魔力をぶつけに来るとかでも、全然オッケーですが!!」


 顔を赤くしてはあはあしてる店主は放っておくとして、いい店だな。

 見た事のないアイテムも多いし、面白い。


「今度、サクラを連れて来てみるかなあ。何か欲しいものあるかもしれないし」


 今回、サクラを誘ってみたのだが、家の掃除があるということなので、結局、ヘスティと二人でいくことになった。

 まあ、サクラが行きたいと言った時に、俺が案内すればいいだけなので、今日は今日で買い物をしよう。


「おーい、アンネ。そろそろ戻ってこい。俺、アイテム購入とか初めてだから、どれがどんなアイテムか教えてくれ。もしくはオススメを見繕ってくれ」

「はっ……そ、そうでした。まずお買い物ですね。ええと、ダイチさまは何が欲しいですか?」


 欲しいもの、は無いけれども、そうだな。

 逆に考えよう。使えないものはいらない。


「普段から使えるものが良いな」

「普段から……でしたら、これなんかどうでしょう」


 自信満々に、アンネは一個の瓶を取り出してくる。


「土に埋め込んだ瞬間、急激に成長して、命令を聞いてくれるゴーレムの種! 雑用は全部任せられますよ?!」

「あ、すまん。それ、もうできてる」


 というか、日常的に俺はゴーレムを作成している。

 だからアイテムは使わないな。


「あっ、そ、そうでしたね。で、では、この空中にいるモンスターをうちぬける竜のボウガンとか……」

「すまん。それも、もうある」

「え、えっと、えっとお……」


 いかん、涙目になっている。

 これは、俺が買い物に来るのは失敗だったんだろうか。


「普通は、できないことを、アイテムで補助するけど、アナタ、出来る事多いから。難しいよ?」

「そうだなヘスティ。今、それを学んだよ」


 もしかして、物欲がないのはそういうところから来ているんだろうか。

 ともあれ、何か買わなきゃここに来た意味がない。


「……そうだ。この前みたいな、ポーションとかあったら、それをくれないか? できるだけ高いのがいい」

「た、高いのですか? では、この魔力を回復するポーションなどはいかがです!? 一カ月に一本くらいしか生産できない貴重で高級なものなんですが……!!」


 アンネは渾身の説明をしてくれる。うん、有難いんだけどさ。


「……すまん。それを使うならリンゴを食うよ……」


 もうあるんだ。その役目を果たすものが。


「えっと……もしかして、私のアイテム、役立たずです……?」


 アンネはポロポロ涙をこぼし始めてしまった。いかん、これは良くない。


「あ、いや、そんな事ないって。そう、体力を回復するポーションなら、俺も使えるし!」

「で、でも、何の変哲もない回復ポーションしかないですよ? 私が作成しましたけれども、そこそこの効果しか出ませんし、面白味がないですよ?」

「いや、面白みとかなくて良いんだよ」


 日用品は使えれば何でもいいんだ。


「えっと、ポーションには等級がありまして、一応、最高級ポーションもありますけど、どれを買います?」

「一番高いのはいくらだ?」


 聞くと、アンネは店の奥から金色の液体が入った瓶を持ってきた。


「……ええっと、これらが、私の血液と内臓の一部を用いて作ったもので、ひとつ十万ゴルドです」

「んじゃ十個」


 どさっとテーブルの上に銀貨の袋を置いた。


「ひゃあっ!?」


 アンネが驚いて腰を抜かしている横で、俺はポーションの瓶を取る。

 銀貨の袋が瓶十個に変換出来た。

 うん、これは軽いし、持ち運びしやすくて楽だな。


「えっと……い、いいんですか!? こんな、大金ですよ?」

「まだ金はあるし、構わないよ」

「そ、そうですか……武装都市でも高すぎて不良在庫な最高級ポーションだったのに、まさか売れるなんて……」


 ああ、そうだったのか。じゃあ、在庫処分も出来て一石二鳥だったな。


「あとは、なにか使えそうなものはあるか?」

「え、ええと……あとは、これくらいですかね……あんまり人気がないんですけれど……」


 そう言って、彼女が取り出してきたのは、一本の巻物だ。

 白く光る紐で、留められている。


「これは?」

「テレポートスクロールです。ひも解くと、指定した場所に転移する魔法が発動します。テレポートの魔法を覚えていなくても、使う事が出来るんです」

「へえ、便利じゃないか」


 要するにあれだろ。ディアネイアが使ってるような移動を誰でもできるようになるんだろ?

 良いアイテムじゃないか。


「使い捨て魔法なんです。そして、テレポートはすごく調整とコントロールが難しい魔法で、使い捨てにするだけでも工程が多くて。だからとても高価で、一度の移動の費用対効果に見合わないというか」


 へえ、じゃあ、テレポートを使えるディアネイアは意外と凄かったんだな。


「で、これ、ひとついくら?」

「えっと……ひゃ、百万ゴルドです」


 なるほど。良い値段だ。


「んじゃ買った」


 足りなかった時用の予備で持ってきた、銀貨袋を置く。


「うひゃああ!?」


 テーブルにどさどさ積まれた銀貨袋に、アンネは目をまんまるにしていた。

 うん、良い儲けになったみたいでなによりだな。


「そして俺もちょっとは消費出来たから、有難いな」

「ん、でも、あのウサギたち、毎月持ってくるでしょ?」


 賃料とかいっていたから、確かに毎回来そうだな。


「でもまあ、また来てここで使えば良いだろ。アンネ、それでもいいか?」


 完全に脱力してしまっているアンネに聞くと、彼女はゆっくりと頷いた。


「あ、は、はい。お待ち、しております」

「ありがとうよ。それじゃあ、今日の所は帰るとするか」

 

 考えてみれば、これがこの世界にきて初めての、買い物だったな。

 

 ……ちょっとだけ、楽しかった。

 

 そんな事を思いながら、俺は使い捨て魔法ひとつと、ポーション十個を買って、家に戻るのだった。


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