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俺の家が魔力スポットだった件~住んでいるだけで世界最強~  作者: あまうい白一


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48.モンスターの産出者 ダンジョンマスター

 迫りくる軍勢をシャイニングヘッドの面々は迎撃し続けていた。


「ぜえ、ぜええ……これ、終わりか?」

「だと……いいんですがね」


 数十体を斧や剣で叩き潰して、既に武器はボロボロだ。

 鎧もところどころに傷が出来ている。


 だが、ようやく平原の地面から湧き出ることはなくなった。


「ふう……」


 だからスキンヘッドの男は、ようやく一息ついた。

 その瞬間だ。


「リーダー! 後ろ!」

「っ!?」


 彼の背後、森の中からサーヴァントデーモンが飛び出してきた。

 既に手には火の玉を抱えて、投げた後だった。


「ぐお……こなくそ!」


 火の玉をもろに食らった肩は一瞬で焦げ付き、動かなくなる

 それでも、スキンヘッドは、振り向きざまに切りつけようとする。


 ただ、サーヴァントデーモンは二発目の投擲モーションに入っている。

 

 振りかえっても、間にあわない。


「くそ……!」


 覚悟を決めて歯を食いしばった。刹那、


「ファイアランス!」


 彼方から飛んできた炎の槍が、サーヴァントデーモンを串刺しにして縫いとめた。

 ジタバタするが、火の玉は発射されなかった。


「――ヒャッハー! チャンス!」


 スキンヘッドの男は、振りかえりざま、サーヴァントデーモンの体を薙ぎ切った。


 胴体を両断されたデーモンはその場に黒い石となって転がった。


 それを見たのち、スキンヘッドの男は、炎の槍が飛んできた方向を見る。

 そこには、杖とローブと帽子を装備し、額に汗を浮かべている魔女の姿があった。


「……ふう、間にあったか」

「ヒャッハー助かったぜ。ええと、……確か、俺たちに依頼してきた、あの街の姫さん!」

「ディアネイアだ。こちらこそ、礼を言う」


 ディアネイアは、一礼した後で、周囲を見渡した。


「ほとんど片付いてしまっているようだな。急いでかけつけたが、遅かったようだ。すまない」

「ヒャッハー。世話になった街の為だからな。気合入れてやらせてもらっただけだぜ」

「そうか。そう言ってもらえると有難い」


 スキンヘッドとディアネイアは笑って握手を交わした。

 

 そんな時だった。


「――ぐあっ!」


 周囲を警戒していた冒険者の一人が吹っ飛んだ。


「!?」


 そして冒険者たちとディアネイアは、それを見た。


「グオォォォ…………!!!」


 森からノシノシと現れる、巨大な黒い悪魔を。


 ●


「なんだ……あれは……」


 それは大きな筋肉をまとったモンスターだった。ヤギの頭と、獣の足を取りつけ、先ほど冒険者の一人を殴った棍棒には血が付いている。


 更に、その太く筋肉質な体からは、ボコボコとサーヴァントデーモンを生みだしていた。


「ひゃっは……マジかよ。こんな所にダンジョンマスターがいるかよ……!」

「ダンジョンマスターだと!?」


 ダンジョンモンスターを生むモンスター。それゆえに、ダンジョンマスターと呼ばれる。

 本来はダンジョンの深い階層で主をやっているような存在だ。

 ディアネイアはそれくらいは知っている。

 

 だが、実物を見るのは初めてだった。そして、


「ええ、それも、デーモンを生みだすってことは、かなり深い層のマスターですね。こんな消耗した状態に加えて、あいつは不味い……!」

「ヒャッハー。サーヴァントデーモンに削り殺されるか、あいつに殴り殺されるか、だな……」


 シャイニングヘッドたちの言い方からして、かなりの強敵らしい。

 既にシャイニングヘッドたちはボロボロで、サーヴァントデーモン数体を、抑えるだけで精一杯だ。

 あの大物と、戦えるような状況ではない。ならば、


「私が、やろう……」

「む、無理すんな、姫さん。あいつは、やべえ! サーヴァントデーモンだけでも、俺たちが連携しなきゃ倒せない相手なんだぞ」

「ヒャッハー……。そうだ。いくら竜を倒せる姫君だからって、あいつは無理だ!」


 冒険者たちは口々に止めてくる。

 けれど、逃げるわけには、いかない。


「そういうわけにもいかないさ。ここから先は私の街だからな」


 通すわけには、いかない。


 だから最初から全力だ。


 使うのは、あの人と出会って、覚えた新しい魔法。


 あの人に上乗せされた時の感覚を思い出し、会得した竜をも殺す一撃だ。


「食らえ! ――《ボルカニックランス》!!」


 ディアネイアの杖から、極太の熱線が発射される。

 それは、一直線に突き進み、


「グォ……!!」


 ダンジョンマスターの体に命中した。


 ジュウッと焼き尽くす音が聞こえ、爆発し、土煙が立ち込める。


「ひゃ、ヒャッハー! すげえぜ! この威力なら、いくらダンジョンマスターでも」


「うむ……!」


 竜ですら耐えきれない一撃だ。確実に殺せるはずだった。

 だが、煙が晴れたそこには、


「……グォ……!!」


 肩を少しえぐられただけの、ダンジョンマスターがいた。


「な、何故だ!? 命中した筈なのに!」

「ちっ……良く見ろ姫さん! 生んだモンスターを盾にしやがったんだ……!」


 ダンジョンマスターの足元には、サーヴァントデーモンであっただろう、魔石がいくつか転がっている。


 ……防がれた!


「ならば……もう一発……!」


 放つ為の準備をしようとした。だが、


「姫さん、あぶねえ!」

「……っ!?」 


 それよりも早く、近寄って来たダンジョンマスターにぶん殴られた。


 顔面を拳で、だ。


 咄嗟に杖と腕でガードしたが、思いっきり吹っ飛ばされて、平原を転がってしまう。


「ぅぐ……物理攻撃とは、痛いじゃないか……」


 顔が大きく腫れあがる感覚を得ながら、ディアネイアは立ち上がる


 魔法でガードしてもこの威力。

 肉弾戦では勝ち目がないのは明らかだ。

 

 その上、自分の火炎は通じない。

 サーヴァントデーモンという数の有利も向こうにある。


「ぐああ……」


 シャイニングヘッドの連中もどんどん、倒れていく。

 

 ……ああ、これは、大変だ。

 

 このダンジョンマスターは竜以上に強くて、倒せない。


 ……敵わない。


 それが分かってしまうくらいの力だった。

 ――それでも、


「君たちは、負傷者を連れて、逃げろ。シャイニングヘッド」

「姫さん……?」

「私は、やるしかないんだ……」


 流血が目がふさいでいく中、それでもディアネイアは、敵から目を離さない。

 ダンジョンマスターの前に立ちふさがる。


「勝てなくても、時間稼ぎをするのがやっとだとしても……私が、やらなければいけないんだ……」


 炎を生みだす杖を構えて、


「この街を、民を守るものとして、私は、戦わなきゃいけないんだ! ――《ボルカニックランス》!!」


 ただ、ダンジョンマスターに叩き込んだ。だが、


「――グォォ!!」


 ダンジョンマスターはその炎を真っ向からこん棒で受け止め、はじき返した。


 そしてスイングの勢いを落としながらも、ディアネイアの体に、棍棒をうちこんだ。


「っか……!」


 ディアネイアは肺の中の空気を吐き出しながら、宙を舞った。


 そして森の方へ吹っ飛ばされて――、 


「おっとっと。大丈夫かよ、おい」


「あ……?」


「森から出るなり、いきなり血まみれで吹っ飛んでくるとか、どんな冗談だ」


 森から現れた、木の巨人の手の中に、収まった。


 ●


「サクラ、アンネから受け取ったあの薬、持ってきてる?」

「はい。ここに」


 ウッドアーマーの中で薬を受け取った俺は、血まみれで胸の中に飛び込んできたディアネイアに使ってやることにした。

 ウッドアーマーの上半身部分を解除し、薬瓶を開けるとほのかな花の香りがした。


「確か塗り薬だったよな? 適当にぬっておけばいいのかね」

「はい。恐らくは」


 瓶の中に溜まっていた液体を、ディアネイアの顔に塗りこんでやると、出血が一気に止まった。

 聞き過ぎて怖い位だが、まあ、竜王の薬だ。そのくらいの効果はあるのだろう。


「ぅ……す、すま……あい」

「無理に喋んな。でも、まあ……なんだ? お疲れ。頑張ったな」

「……」


 そんな俺の声を聞いたら、ディアネイアは何故か目を閉じて気を失ってしまった。


「アレ? 俺、また魔力の渦とか出してたかな?」


「いえ、単純に安心されたのかと」

「そうか? それならいいんだけど」


 とりあえず呼吸は問題ないし、寝かせておこう。

 傷は治ってるみたいだし、すぐ目覚めるだろう。

 今やるべきことは他にある。


「まあ、なんだ? どういう状況か微妙に分かりづらいが……アイツが元締めっぽいな」


 視線の先にいる、黒いヤギ頭のモンスター。

 あれがサーヴァントデーモンを生みだしていたらしい。


 現に、今も生み出して、こちらに飛ばしてきている。


「邪魔だ」


 向かってくるサーヴァントデーモンを俺は、樹木弾の一撃で砕いた。だが、それだけじゃない。


「取り巻きも、邪魔だ」


 樹木弾を連続で打ち込み、元締めの周辺にいたデーモンを全滅させた。


「――!?」


 その行動に、元締めの奴も驚いたのか、のけぞった。

 いい気味だ。

 なんて敵の事を観察していると、


「あ、アンタは……大地の主……。どうして、ここに……」


 俺の周辺に、スキンヘッドの連中が近寄ってきていた。


「どうしてもなにも、あのサーヴァントデーモンが邪魔だったんだよ。だから、倒してたんだが、森から出ちまってな。……でも、あんたらも何匹かやってくれたんだな。ありがとよ」


 地面に落ちている黒い魔石を見れば、三匹くらい倒していたのが分かる。駆除に協力してくれたのはとても有難い。


「俺たちが、連携で倒したサーヴァントデーモンを一撃で?」

「ひゃっはー……ありえねえ。でも、すげえ……! すげえよ、あんた……!!」


 なんだかスキンヘッドの男がキラキラした目で見てくる。何がすごいんだかよく分からないけれどもさ。そんな事を思っていると、


「リーダー! ダンジョンマスターがまた行動を!」


 突然、冒険者の一人が、元締めを指差して叫んだ。

 見れば、元締め……ダンジョンマスターというらしいそれが、ポコポコとデーモンを生みだしていた。


「って――話している場合じゃなかったな。ちょっとどいてろ」

「ひゃ、っは――! テメエら、道を開けろ! あと、姫さん守っておけ!」

「おう!」


 冒険者たちは、一気に俺の周辺から離脱した。

 この場に残るのは、俺とダンジョンマスターだけだ。


「さて、よくも俺にこんな手間なことをさせてくれたな」

「――」

「別に好き勝手に暴れるのは構わねえがよ。この森は俺のホームグラウンドで、俺の安住の地なんだよ」


 だから、覚悟をしろよ。

 ダンジョンマスター。


「俺の家と、そこでの安住を脅かす敵は、俺の力で打ち倒す!」


 俺は力を込めて、ウッドアーマーを作りなおす。

 

「行くぞ、サクラ」

「はい、いつでもどうぞ、主様!」

「ウッドアーマー。――モード《不動・明王》」


 そして、――木の巨人は生まれ変わる。

すみません。長くなりました。

次回、ちょっと本気の無双。

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