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俺の家が魔力スポットだった件~住んでいるだけで世界最強~  作者: あまうい白一


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43.数十秒の防衛戦(未遂)

 昼過ぎまで寝ていた俺は、とても遅い昼飯の後、居間の大窓の傍でぐてーっとうつ伏せになっていた。


「あー、最近、動き続けたから、こうしてゆっくりするの久しぶりだ」

「ふふ、存分にゆっくりしてくださいね」


 後ろから、サクラがお茶を淹れてくれる音が響く。心地いい。

 最上階という高さがあり、太陽が近いため、とても温かい日差しがくる。それもまた心地いい。

 目を瞑ったらすぐに寝てしまいそうなくらいだ。


 と、うとうとしながら窓の外を眺めていると、


「お」


 下方、豆粒ほどの大きさだが、ヘスティが見えた。

 街の方に向かって歩いている。


 今日も街に行くらしい。


 ……まあ、杖の材料集めだろうな。


 実は昨日、杖を直してもらったのだが、数時間と立たないうちにぽっきりといった。

 その時、更に気合を入れて材料を集めてくると興奮しながら言っていたのだ。


「なんか、申し訳ない気持ちになってくるな」

「でも、ヘスティちゃん、物凄く楽しそうですよ?」

「そうか?」

「はい。喜んだり、楽しんでいる時って、魔力の揺らぎ方が特徴的なんですよ。多分、作りがいを感じているんだと思います」


 へえ、そう思ってくれるなら、良い事だな。

 俺は魔力を見たり感じたりすることが、どうにも出来ないから、その辺分からないんだけど。


「やっぱり感知能力とか鍛えてないからかな」

「それもありますが、どちらかというと、主様の魔力が非常に大きいのが要因かと。人間が小動物の呼吸に気付くためには、物凄く注意しなければならないのと一緒です。体からほとばしっている魔力というのは、本来、微弱なものなので」


 なるほどなあ。魔力を使う事は出来るけど、その辺りはまだまだだな。


「でも、サクラは分かるんだな」


 俺も、サクラと同期している時は、他人の魔力とか存在とか感知できるし。


「家ですからね。人の反応には敏感なのです。この前きた、アンネさんも、とても楽しそうだったのを覚えてます。ヘスティちゃんに似ているので」

「……アレと比べると、途端に不安になってくるな」

「ふふ、魔力が大きければ大きいほど、感情が分かりやすくなりますので。楽しんでいるのは間違いないですよ」


 でもまあ、楽しんでもらっているなら、悪いことじゃない。

 そうして森の奥に消えていくヘスティの後ろ姿を見ていると、ふと思った。


「ああ、そういえば、サクラは街に行きたいとか思ったりしないのか?」

「はい? 特に、そう思う事はありませんね。私は主様を見ているのが一番幸せなので」

「そうなのか。でも、俺一人で散歩に出たりすることがあるじゃないか。そういう時は、暇だったりしないのか?」


 もしも、サクラが欲しい物とか、必要としている物があるなら、街で買ってきてもいいのだけれど。


「そういうのは特にありませんねえ」

「物欲がないんだな」

「家ですからね。所有者に似るんですよ。主様もそれほど、無いじゃないですか」

「いやいや……多少は、あると思うぞ……?」


 自信は無いが、ある筈だ。

 うん、美味しい物とかさ。いや、それは食欲か。


「あー……まあ、うん。多分、少しはあるさ。安定性とか欲しいし」

「ふふ。私もそういう欲が、ちょっとだけあるという事で。それよりも主様は、街には行きたくなることはないんですか?」


 あー、なんだろうな。

 サクラに言っておいてなんだが、今の所、俺は特に、必要性を感じていないんだよな。


「俺は家にいるのが一番だと思っているからさ。出かけるよりも、ごろごろしてる方が好きだし」


 基本的にインドアだから、街に行く気にはならないんだよ。


「ん……主様から、その言葉を聞けるだけで、私は天にも昇る気持ちになります……」


 そう言ったら涙目になるほど感動されてしまった。

 ただの出不精なんだけど。

 それで喜んでくれるなら、良いか。


「やはり、私は家でゆったりされている主様のお世話をするのが一番ですね。お料理作って、お洗濯して、お風呂を入れて、お布団を敷く。そんな時間にとても幸福を感じます」


 言われてみると、ほとんどサクラ任せでいい生活が出来ているんだな。

 有り難い話だ。


「でも……ちょっと動いた方がいいのか、俺」

「いえいえ、主様には、いーっぱい、ぐーたらしていて欲しいですね。私が幸せなので」

「お、おう。――それじゃあ、お言葉に甘えて、今日はぐーたらするかな」

「はい。膝枕させてもらっていいですか?」

「おう、お願いするよ」


 そう言うと、俺の顔の下に、サクラの肌が入ってきた。


「ぶえ……」

「あ、苦しかったですか?」

「いや、……まさかうつぶせのまんまやられるとは思ってなくてな」


 苦しくは無いが寝づらいので、顔を横に向けて、体重を預ける。

 すると、サクラの体温と、暖かい日差しが、体をゆったりと休ませてくれた。


「……んー」


 サクラに触れているから、自動的に同期が発動して、周囲に何匹かのモンスターが来ていることが分かった。

 普段より何だか多い気がするけれど、どうでもいいや。

 

 適当にゴーレムに指示しながら、俺は日向ぼっこを続けていく。


 モンスターは数十秒で、感知の範囲内から消え失せたし、気にする必要もなかったしな。


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