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俺の家が魔力スポットだった件~住んでいるだけで世界最強~  作者: あまうい白一


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42.竜の化け方

 夕方。

 泥人形の襲撃で散らばった黒土をヘスティと一緒に片付けていると、そんな時間になってしまった。


「ふう、ゴーレムで土木作業は出来るけど、やっぱり腹が減るな」


 この黒い土、やけに重いし。


「ん……ごめん」

「どうしてヘスティが謝るんだよ」

「我がいたから、あの子が、面倒と一緒に、きた」


 ヘスティはしょんぼりして肩を落としている。


「気にするなよ。別にヘスティのせいじゃない。悪いのはあの黒い土の人形だろ」

「んー……黒土の人形は、アンネの力の一つ。だから大方、アンネのせい」

「え?」

「黒土のブレス。竜が吐きだした土から、あの人形は出てくるの。あの子は、黒地の竜王だから」


 そうなのか。でも、だとしたら、なんで自分たちを襲わせていたんだ?


「欲求不満になると、アンネは、自分で自分を襲って、スッキリする癖があるから。満足すると、消えるけど……」


 あいつ、マジか。

 なんてはた迷惑な竜なんだ。


「街中ではやってないと思う。ただ、あとで叱っておく」

「それはそれで喜びそうじゃないか?」

「……多分。喜ぶね」


 どうしようもないな。あの駄目性癖な竜王は。


「ん、街の中で問題起こさないだけ、マシ、だけど。やっぱり怒っておく」


 まあ、二度三度と続けられるのは御免なので、またここでやらかしたら俺も怒る事にしよう。


「って、そういえば、ヘスティたちは普通に紛れ込んでいるけど、街で人にばれたりしないのか?」

「人の姿を保てば、基本的にばれない。あと、我とか、魔力も抑えてるから、竜王だって思われない」


「へえ、魔力って抑えられるものなのか」

「ん、街に行っても、怖がられたりしないの、そのお陰。――まあ、バレても、特に問題ない。別の龍王は、普通に、ヒトと一緒に酒飲んで、暴れたりしてるし」


 本当にフリーダムだな、竜王ども。


「楽しくおかしく生きたいって本能に忠実なのが、多いから。……そういえば、アナタは、魔力が垂れ流しだけど、抑えかた、知らない?」

「おう。というか、魔力を垂れ流しているという実感が、全くないんだけどな」


 俺が城に行った時、歓迎はされたが、みんな魔力におびえたりして近寄って来なかった。

 それも垂れ流しにしているせいなのだろうけれどさ。


 俺からすると、何が何やら分からないのだ。


「一応、今まではそれでも普通に暮らせたけど、垂れ流しを続けると問題あったりするのか?」

「んー、常人だったら、死んでる?」


 怖いこと言うなよ。


「事実。生命維持にも、魔力、必要だから。そのペースで垂れ流したら、普通は、死ぬと思う」


 へえ、魔力については、便利でちょろいパワーとしか思っていなかったけれど、命にも関わってくるんだな。


「アナタの魔力量なら特に問題ないと思うけれど。ただ、モンスターを引き寄せる可能性も、ある」

「マジか」


 そんな実害があったのか。

 この土地が魔力スポットだったからモンスターが襲ってくる、というのは分かっていたが、俺自身も引きつけていたなんて。


「ん、引き寄せる範囲はそこまで広くないし、この龍脈より呼び寄せる事もないから、そこまで関係ない、と思う。……抑える方法、あるけど。やる?」

「え? そんなに簡単に、抑えることができるのか?」


 聞くと、ヘスティはこっくりと頷いて、俺の体に触れてきた。


「じゃあ、はい。《ミラージュコーティング》」


 呪文を言った瞬間、俺の体が一瞬、ほんのりと輝いた。


「これで、我の魔力で、蓋を作って、かぶせた。垂れ流し状態は、防いでいる。対外的には、竜になった我と同じくらいの、魔力量に見えるはず」

「へー、……体が補強されたみたいだな」


 ちょっと動きにくい感じもするが、体が軽い。

 そこまで力を入れなくても立っていられるような感覚がある。


 ウッドアーマーを着用したときに近い。

 あれよりもずっと軽いし、弱い補強感だが。


 ……パワードスーツなどを着たらこんな感覚になるんだろうな。


 と、軽くなった腕をぶんぶん振っていると、


「ありゃ? 急に補強感がなくなった」

「ん、でも、激しく動いたり、興奮したり、すると、楽に外れる。平常時のみ、有効」


 なるほどな。

 怒って魔力の渦を出したりしてるときは、こういうのは出来ないわけか。


「このコーティングって、俺でも出来るかな?」

「多分。練習すれば」


 なるほど。じゃあ、やってみよう。


 ヘスティが言うには、魔力で体をコーティングする感覚だったな。


「えっと……こうかな?」


 さっき、ヘスティにやってもらったイメージを自分で再現してみた。


「――《コーティング》!」


 すると、


「お、出来た、かな?」


 先ほどと似たような動き難さと、補強感がある。

 むしろ、より強く補強されていた。


「成功か?」

「ん、成功してる。……でも、なんで一瞬で覚えるの?」


 ヘスティは不満そうに、唇を尖らせて言ってきた。


「え? 駄目だったか?」

「んーん。ただ、教えがいが、ない。我の、存在意義、ちょっと薄くなる」

「そんな事を言われてもな」


 覚えてしまったものは仕方ないだろう。でも、


「このコーティングってのは、日常生活でやるにはきついな」


 体が微妙に動かしづらい。

 このまま過ごせと言われれば出来なくはない。

 が、このまま寝ろと言われたら嫌だな、と思うくらいには違和感がある。

 慣れていないから、だろうか。


「ん、違う。我よりも、蓋している部分が強いから。全身、抑え込んでる形になっている。体からでる魔力を、完全に遮断しちゃってる」


 ふむふむ。強く抑え過ぎたのか。


「でも、この遮断は、便利。視覚じゃなくて、魔力を感知して動くタイプからは、全く知覚できなくなると思う。魔光石のゴーレムとか、ね」


 なるほどなあ。

 完全にコーティングして、垂れ流しを遮断したってことか。

 そこそこ、使い道はあるんだな。


「んー……相手するの面倒な時、スルーできるから、ね。ただ、もうちょっと魔力を体にまとわせた方が、いいかも。侮られて、余計なトラブルが起きない程度に」

 

「そうか。でも、加減が難しいな」


「面倒なら、我がやろうか? 必要な時、呼んでくれれば、いい」


 ヘスティは首を傾げて聞いてくる。

 そうだな。細かな力加減は、ヘスティの方が上手いか。


「そうすれば、我の、存在意義が、出る」

「いや、そこまで気にするなよ……。でもまあ、慣れないうちは、よろしく頼むわ」

「ん」


 こうして俺は、新しい技術を習得した。

 ――まあ、街に出る気は、今の所、一切ないんだけどね。

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