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俺の家が魔力スポットだった件~住んでいるだけで世界最強~  作者: あまうい白一


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34.朝飯前の前の出来事

 早朝の魔境森。


 昇り始めた太陽の光にまぎれるように、森を進む姿が複数あった。

 誰もかれもが鍛えられた筋肉を持つ、十人ほどの冒険者たちだ。


「ヒャッハー……!! やっぱり、異境の探索は早朝に限るな……!!」


 大剣を担いだスキンヘッドの男を先頭に、彼らは素早く動いていく。


「おうよ……リーダー! この時間ならばまだ、この森の人狼や戦闘ウサギは徘徊していない筈だ」

「ああ、冒険者ギルドの情報屋に依頼したから、そこも分かっている。確かこの辺りの筈……あったぞ!」


 そして彼らは、巨大な塔型の建造物の前に到着する。


「ヒャッハー。ここが依頼された場所か?」

「そうだ。この座標で間違っていない」


 地図を持ちながら、冒険者の一人が塔に近づこうとした。

 その瞬間、


「……っぐ……えぇ……」


 喉を押さえて、倒れ伏した。

 まるで呼吸が出来なくなったかのように。


「リーダー、これは!?」

「ヒャッハー。……ま、魔力酔いだと!? こんな場所だなんて聞いてないぞ!」


 スキンヘッドの男は、倒れた冒険者を担ぎながら、周囲を見回す。

 そして、一戸の小屋を見つけた。


「あそこに隠れるか、リーダー?」

「そうしたいが、見ろ。誰か出てきたぞ……!」


 小屋の戸が開いて、出てきたのは、


「あなたたち、だあれ?」


 白い髪をした一人の幼女だった。

 見た目は普通の、小さな女の子だが、


「な、なんだこの体にまとっている魔力は」


 彼女が持っている力の異常さは、冒険者として経験を積んでいる彼らにはひしひしと感じ取れた。


「武器を持ってるってことは、侵入者? ……なら、我は、門番? やったほうが、いいのかな?」


 そして、幼女は、こちらに人差し指を突きつけた。


「とりあえず、忠告」

「な、なんだと?」

「ここ、私有地。そういう武器持って、入るの、駄目。――吹き飛ぶ」


「――ぐうっ!?」


 瞬間、幼女の指した先にいた、冒険者が吹っ飛んだ。

 

「ひゃ、ヒャハッ……こいつ、魔法鍵を使ってくるのか。高レベルの魔法使いだ! テメエら気をつけろ!」

「応!」


 一人が倒されたのを見て、即座にスキンヘッドたちは剣を構えた。


「んー、警戒できる、レベルの冒険者。負けはしないけど、この状態での、戦い、やっぱり、慣れない。……焼いたほうが、いいか?」


 幼女は首を傾げながら、うろうろとし始める。


 だが、冒険者たちは油断しない。


 その一挙手一投足を見逃さないように、と彼らは注視する。

 しかし、そこに予想外の動きが加わった。


「――!」

「……なんだ、あれは」


 幼女の傍に会ったリンゴの木が、いきなり、筋骨隆々のゴーレムに変化したのだ。


「あー、自立型のゴーレム、作ってたね。では、お任せ」


 そしてゴーレムは、ノシノシと、幼女の傍を離れた。

 無言で、冒険者たちに近寄っていく。


「な、なんだ、このゴツイゴーレムは……!」

「ヒャッハー、構うな! ゴーレムといっても木製だ。叩ききれ!」


 スキンヘッドの男は大剣を振りかぶり、ゴーレムにきりかかる。

 大剣の重量を活かしたフルスイング。だが、


 ギン、と、その刃は樹木に弾かれた。


「は、刃が通らないだと?!」


 そして、そのままゴーレムの太い腕で殴り飛ばされた。


 あっさりとスキンヘッドがやられたことで、他の冒険者たちは後ずさりをし始めて、


「ひ、ひいいいいいいいいい!!」

「た、助けて、助けてええええええ!!」


 逃げだそうとするが、遅い。

 ゴーレムはその腕を伸ばし、次から次へと殴り飛ばして行く。


「ぎゃあああああああああ!!」

「……ん、まあ、多分、死なない程度に、収まるかな」


 その様子を、静かに、ヘスティは観察するのであった。


 ●


 遅めの朝。俺が起きたら、何故か庭が騒がしかった。


「主様、おはようございます」

「おーう……」


 とりあえず、ボーっとする頭を、顔をバシャバシャ洗う事で起こす。


「はい、主様。タオルです」

「お、サンキュー、サクラ。……にしても、なんかあったのか?」


 随分と庭の方が荒れているけれども。


「はい。襲撃者が来ておりまして。――全員ノびておりますが、いかがしましょうか?」

「ああ、自動的に迎撃したんだな。いいことだ」


 しかし、また、魔力狙いだろうか。


「装備的に、ただのあらくれ者かと思いますが、狙いは不明ですね。そこそこ大勢ですし。――あ、朝ごはんは温め中ですので、もう少しお待ちください」


 おお、ありがたい。

 いつも、準備万端だな。


「そういや、普段から俺が起きた瞬間に朝飯が出来てるけど、夜中から作ってるのか?」 

「そうですね。眠ることが出来ないので、朝ごはんを食べる主様を想像しながらご飯を作るのが楽しいんです」

「レンジとかも動くから、そこまで手間をかけなくてもいいんだぞ?」


 サクラの魔力で電気高熱系の設備も使えるようになっている。

 だから、レンジでひや飯を温めることだって可能だったりする。


「いえいえ、これが私の楽しみなので」

「そうか? それならいいんだけれど」


 タオルで水にぬれた顔を拭き終えるとすっきりした。

 その状態で、外に目を向けると、


「――う、うわあああ!! な、なんだこの森は。逃げられねえ……!?」


 新しい叫びが聞こえた。


「ありゃ、まだ襲撃者の残党いたのか」

「殿ですかね。それとも、情報伝達の為に逃げた輩か」

「そうか。じゃあ、吹っ飛んでもらって、話を聞くか」

「はい」


 俺はサクラと同期し、新たにゴーレムを作りだす。


「ウッドゴーレム×二〇!」


 二十体ほどを、一気に。

 その冒険者の周辺に立たせてみた。すると、


「…………!!」

「あ、気絶しちゃいましたね」


 その光景を見て、その場で卒倒してしまったようだ。


 罠を使うと威力が強すぎて、意識を失うかなあと思ってウッドゴーレムで捉えようと思ったのに。

 

 結局一緒だったか。


「うーん、上手くいかないもんだな。まあ、朝飯を食ってる間に起きるだろ」

「はい。では、朝ごはんの用意しちゃいますね。お米が炊けましたし」

「おう、それじゃあ、メシにするかー」


 良い感じに眠気も覚めた。

 食って話を聞いた後はゆったり散歩コースだな。


 そんな事を思いながら、熱々のご飯をほおばっていく。

 うん、一仕事終えた後の朝飯は、すごく美味い。

 

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