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俺の家が魔力スポットだった件~住んでいるだけで世界最強~  作者: あまうい白一


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250 修行の成果


 言われた言葉に対し、ナギニは速攻で反応した。


「ど、どういう事っす?」


 目の前に座す創始竜の顔を慌てて見上げながら問うと、


「『どうもこうも無いだろう。貴様がそこの役立たずの体に押さえつけられている力を開放し、吸い取れと言ったのだ。さすれば貴様は真なる、ただ一人の王だとも』」


 頭の中の声と共に、先ほどと同じことを言ってきた。

 

「なんで、そんな……役立たずなんて……」

「『本当の事だ。そこのドーラはワシの絶大なる力を与えたというのに、妹を殺すのは嫌だと宣いおった。そればかりか、我が体を明け渡すという提案すら拒否しおった。その結果がこの昏睡だ。自ら眠りにつくなどという愚かしい真似をしおった。そんな詰まらぬ感情に踊らされるものが、王であってはならん。ワシの体であってはいかん』」


 口調には失望の色が宿っている。そして、創始竜は、明らかに憎々し気な瞳で、眠るドーラを見据えている。

 

「『この竜の国を再復興するためには、ワシの力と、ワシに従順な身体が必要なのだ。それくらいわかるだろうに。その為に貴様らを母体から産ませ、飼育ブリードしたというのに……不必要な情を持ちおって。……まあ、説明は終わりだ。既にドーラの中にワシの意識は無く、支配下にも無い。だからナギニ、安心して殺せ』」


 長い長い言葉が頭の中で渦巻き、理解する間もなく、創始竜はそういった。

 すると、なぜかは分からないが、自分の体が、ドーラの方を向いた。そして手を彼女に向け、攻撃魔法の準備を始めようとしていたのだが、


「い、いやっす……!!!」


 強引に、自分の体を動かすことで、その魔法をキャンセルした。


「む……動かんだと?」

「ドーラ姉は、大切な人で……死なせるわけにはいかないっす」

「む、未練でもあるのか知らんが、……それではワシがやろう。目覚める前なら手間が省けるからな」


 面倒くさそうな瞳で半透明の体を起こした創始竜は、その首周囲に弾丸型の電撃を発生させた。

「創始の雷弾」


 そこから何気なく放たれた電撃の弾丸は、ドーラの体に向かう。

 その魔法は明らかな殺意を持ったもの。威力だって、無防備な竜を一人殺すには十分すぎるモノと一目で分かった。だから、

 

「させない……!!」


 ナギニは自分の体をドーラの前に入れ、振って来る雷撃をその手で受け止め、

 

「う……っく!!」

 

 一息に天上に弾き飛ばした。

 そんな行為に創始竜は明らかに目の色を変えて、ナギニを見た。


「王族ナギニ……貴様……。貴様もワシのコントロールに従わないばかりか庇うとは……揃いも揃って忌々しい……」


 創始竜は呆れと怒りが入り混じった様な目で見降ろしてくる。

 その眼はこちらに恐怖を与えてくるが、それ以上に、


「どうして……アナタがそんな事を言うんすか……」


 そういう態度を取る意味が分からなかった。

 明らかに殺す気の雷撃を姉に放つ事から殺意は本物だと分かったが、


「なんで、なんでアタシたちを育ててくれたアナタが、そんな事を……!!」


 感情のままに聞いた。すると、


「そんなもの、ワシが強力な肉体を手に入れるために決まっているだろうが……!!」


 苛立ちと共にそう吐き捨ててきた。そこまで聞けば、ナギニも理解できた。


「……アタシたちは、ただの器、扱いっすか」


 思わずの呟きに、否定の言葉はない。代わりにきたのは、舌打ちがひとつだけ。


「ちっ、自我が育ち過ぎたか。面倒な。ワシが用意した餌が足らんかったか……コントロール出来んとは……嘆かわしいが……まあ、良かろ。貴様ら二匹とも身体だけは合格なのだ」


 創始竜の言葉に落ち着きが戻った。

 それと同時に、ナギニの頭から灰色の光が出ていき、半透明な創始竜の身体に宿る。

  

「横着をしようとしたワシが馬鹿だった。一度肉体を分解し、霊魂に戻してから、再構築するのもいいし。その意識を根こそぎ消すのもいい。まあ、どうにでもなる」

 

 光が出て行ったことで、創始竜の声はもはや頭からは響いて来なくなった。

 創始竜の力が抜けたからだろう。

 何となく頭の中がクリアになった気がした。

 けれど、そんな風に自分の体を分析している暇はなく、


「とりあえず、眠って弱って使い物にならん肉体から解体しようか」


 何気ない動きで、創始竜はドーラに牙をむいた。

 文字通り、大きな顎を開き、眠るドーラを丸ごと食らおうとした。が、


「……分かったっす」


 ドーラの体に近づくよりも速く、ナギニの腕が、創始竜の下あごから首までを切り落とした。


「……ッ?!」

「アナタは敵だ。ドーラ姉は私が守るっす……!!!」

  

 自分の姉を殺そうとしてきた創始竜は、敵だ。そう認識したナギニの腕は、とても自然に、躊躇なく攻撃することに成功していた。


 ……自分をここまで育てて来てくれた事には感謝するっすが……死ぬために育ったわけじゃないっす……。

 

 そして姉を殺されるために強くなったわけでもないのだ。

 そう思いながら、ナギニは意外そうな瞳を向けながら落ちていく創始竜の頭に背を向けて、姉を抱きかかえる。

  

 持ち上げた姉の体はぐったりと力なく圧し掛かってくるが、鼓動は聞こえる。

 生きてはいる。それに、

 

「……ぅ……」


 声もする。目覚めかけているのだ。

 創始竜の支配から抜け出たからかもしれない。 

 

 とはいえ、体の力は弱いし、体温もだんだん下がってきている気もする。

 だから早く外に出て、助けを求めなければ。

 

 ナギニは思い、腕に力を込めた。その時だ。

  

「ワシの防護を貫通して切り落とす、中々頑丈で強い肉体に育ったな。直ぐにワシへ攻撃を放つ、その割り切りも素晴らしく良いな」

「――っ?!]


 背後、首を飛ばしたはずの、半透明の竜から声がした。

 いや、正確には、

 

「な、直っていく……?!」


 その首を赤い光で修復しつつある竜から、その声は響いていた。更に声の出る箇所は一つでは無かった。

 

「その身体を壊すのは最終手段として」

「「まずは意識を焼き尽くす方向で行こうか」」

「「「思考能力だけは残しておくのもいいし、もしくはバラバラに砕いて二つで一つに再構成するのもいいな。うむ、とりあえず、身体を動かせなくするか」」」


 ぼこぼこと血の様な赤色を放ちながら、竜の体に幾本の首がはえて行く。それだけではない。

 体がどんどん巨大化していき、、首の一本一本が声を放ち、重ね合わせ、そして、ナギニを見下ろしてくる。

 

「首が……増えて……。なんすか、これは……」


 いつもの二倍以上はあろうかという、そうしりゅうの巨体が目の前に現れた。

 感じる魔力も先ほどとは比べ物にならないほど大きい。

 

 見たことが無い創始竜の変貌に、ナギニは姉を抱きかかえたまま、後ずさる。

 いや、見たことある部分は少しだけあった。それは、


「れ、歴代の国王の首……?」


 それは資料映像として見せられた過去の王の首に似ていた。

 震えながら声を発するナギニに対し、彼女のをあざ笑うかのように創始竜は口元を吊り上げた。

「何を驚いておる。我は創始竜。この国の全て。この国の歴代王の首は、全てはワシのモノだ。ワシが取り込んでいて当然だ。……そう、先代も先々代も、歴代の誰もがワシに、従って来たのだ! ――故に、貴様も従うべきなのだ」

 

 創始竜の語りは止まらない。

 まるでせき止められていた水があふれ出すように。目線すら定まらぬ状態で、言葉が次々に漏れていく。

 

「ああ、そうだ。今回飼育した体さえあれば、力を溜め切った完璧な体があれば領土も拡大できる。魔境森も人の国も、かつて支配し損ねた獣鬼も捻り潰せる。そう、この力さえあれば奴らの鬼王ですら滅することができるのだから……!! いや、東でほくそ笑む、ワシの国を衰えさせた神族も踏み潰しても問題ない……!!」


 そこまで言ってようやく思いの丈を吐き付くしたのか、創始竜は動きをぴたりと止める。そして胡乱げな目をこちらに向けて、


「さて、分かったら、体を貰おうか」


 彼の目的だけを伝えてきた。

 なるほど、目の前の創始竜がこちらの体を求めるのは分かった。けれど、

 

「そんなアナタの願望の為に、姉さんを犠牲になどさせないっす……」


 その希望には応えられない。

 一言だけ答えると、ナギニはドーラを抱きかかえて、外部と繋がる通路に向かって走り出した。

 一目散だ。


「ふむ、失敗作めが。逃げを選ぶか」


 当然だ。

 あの魔力量と巨体を相手にして、姉を守りながら、勝つ方法は思いつかない。

 けれど姉を守りながら逃げる算段くらいはできる。


 ……師匠の所で学んだんす。

 

 例えその時敵わなくても必死に頭を動かして、動き続けると。

 閉所で巨体の相手は無謀だ。とにかく逃げて、広い場所にでて、あとはそれから考える。

 

 少なくとも姉だけは外に出して、創始竜に追いつかれない内に隠す。

 そう考え、全速力で通路まで走った。だが、

 

「誰の許可があって霊廟を出ようとしている」


 首の一本が、高速で自分の横に並んだ。

 

「はやっ……!?」 


 こちらは全力で走っているのに、首の動きだけで追いつかれた。

 そしてその首には炎が纏わりついており、

 

「まずはその荷物をこちらによこせ」


 炎が無知のような動きで、こちらの腕と姉を襲った。


「づっ……!」


 片腕を焼かれた。けれど、炎を弾いて姉は守れた。

 

 ……それに、足が動くなら問題ないっす……!


 痛みに顔をしかめながらも、ナギニは更に走る。

 

 後ろからは、巨体が高速で這っている音が聞こえる。

 創始竜が追いかけてきているのは分かるが、振り向く事は出来ない。炎の弾丸による攻撃が常に降り注いでくるからだ。


「外に出てどうするつもりだ」


 言いながら炎の弾丸が放たれる。

 

「うぐっ……」


 感知して、急所は外したが、背中ごしに肩を貫かれた。

 ぶすぶすと音を立てて、貫かれた場所から血が噴き出す。


「貴様も知る通り、何も無い土地が広がるのみだ」


 弾丸が近くで爆発する。

 霊廟の通路そのものは頑丈だから、大きく壊れない。ただ、それでも、多少は砕け吹き飛んできた欠片が額にあたる。

 片目に血が流れ込み、視界が狭まる。


 ……でも、まだ……出口はそこっす……!!


 目の前にぼやっとした光が見えた。


「無駄だ。貴様らには何も残されてはいない。大人しくワシにその命を捧げよ。それが貴様らの運命だ」

「そんな言い分、信じないっす……!!」

「貴様らの信心などどうでもいいのだ。その意思をまず殺すのだから」


 再び炎の一閃が来る。

 

 通路の半分以上を埋め尽くす、今までで一番大きな炎の弾丸だ。

 通路でどれだけ動こうとかわせない。

 外に出れればまだ回避場所はあるが、

 

 ……間に合わない……! 

  

 出口にたどり着いた瞬間、回避行動を取る前に焼かれてしまうだろう。

 けれど、諦めている暇など無い。

 

 せめてもの抵抗として、自らの魔力を全て防御壁に変換し、背部と姉の周りに展開。そして全力を緩めず、突っ走る。そして霊廟の外に足が踏み出ようとした、刹那

 

「無駄なあがきを……!」

 

 声と攻撃は放たれた。莫大な破壊力を持つ炎は一瞬でナギニの背中に迫り、そして――

 

「――」

 

 その一撃は、ナギニとの間に、轟音と共に発生した樹木でガードされた。

 

「え……」

 

 霊廟の入り口通路をぶち壊すほどの勢いで、周囲の天井や床から育った樹木が、自分の背後から通路を塞いで壁になってくれたのだ。

 助かったのか、とナギニは、思った。

 でも、何故、とも。

 

 は、と緊張の息を吐きながらナギニは霊廟の外、晴天の太陽光が降り注ぐ場を見渡す。すると、助かった理由であろう存在を目にした。


「し、師匠……?」

「霊廟の奥から、さっきから響いてくる声が不穏でさ。まあ、ちょっとだけお邪魔させて貰ったぞ、ナギニ」

 

 身体に樹木の鎧を纏い、手の動きで周囲の樹木を操って霊廟の結界を貫いているダイチの姿を。

いつも応援ありがとうございます!

面白いと思って頂けましたら、ブクマ、評価など、よろしくお願いします!


そして、9/19(水)に魔力スポットのコミックス1巻が発売されます!

詳細は↓に。

とても面白いので是非お読み頂けると嬉しいです。

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  ●同時連載作品のご紹介
こちらの連載も応援して頂けると嬉しいです!
最強の預言者な男が、世界中にいる英雄の弟子に慕われながら、世界を回る冒険者をやる話です。
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