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俺の家が魔力スポットだった件~住んでいるだけで世界最強~  作者: あまうい白一


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-side ナギニ- 成功とそれから


 霊廟の通路をナギニは歩いていた。

 多くの魔石と樹木を組み合わせて作られた、竜の体重にも耐えられる頑丈な通路だ。

 遥か昔、そうしりゅうが国を作った際にこの霊廟も建てられたので諸所はだいぶ古くなっており、足元はでこぼこしている。


 そんな風にやや荒れた通路を、踏みならすように、力強い足取りで、ナギニは進む。


 ……今日、この時のために鍛えていたんすから、師匠にもお墨付きを得たんすから、絶対に大丈夫……!

 

 そんな風に自分に言い聞かせながら、縦にも横にも大きな通路を進むこと数分。辿り着いた先は、巨大な広間だ。

 

 通路と同じく魔石と樹木の組み合わせて作られた広間で、中央には四角い石の台がある。その上にはナギニに似た容姿の少女が、仰向けで寝ていた。

 

「…………」

 

 石の上で眠る少女は身じろぎすらせず、微かな寝息のみを立てている。そんな彼女にナギニは近寄り、


「帰ってきたっすよ、ドーラ姉」


 ドーラの、自分をいつも助けてくれていた姉の顔を見て、触れる。

 やや青ざめているモノの、その肌は暖かく、生きているのだと実感できる。


 ……間に合った。ちゃんと間にあった……!!

 

 姉を救えるタイミングで戻って来れた、と深く吐息していると、

 

「来たか、王族ナギニよ」

 

 重い声がした。台の向こうからだ。

 そこには、大きな魔石を組み合わせて出来た舞台が置かれている。そして声の主は、舞台上に身を丸めて座す、半透明の巨大な竜だった。


「創始竜様……」


 体長十数メートルは超える、額に虹色の宝玉を付けた創始竜は、こちらの声に反応し、厳しい瞳で見下ろしてくる。


「随分と待たせてくれたが……ワシの試練を受ける覚悟と、力の準備は出来たのか?」


 重々しい口調と、視線で問いかけてくる。

 威圧感も凄まじい。

 ちょっと前までならば怯んで、数歩下がって姉の後ろに隠れてしまうほどのプレッシャーがある。だが、

 

 ……あそこにいた人たちの方がやばかったっす……!

 

 そう思えば、隠れる程のものではない。だから、

 

「はい。出来たっす……!!」


 力強く頷きを返した。

 すると、創始竜は、口元を吊り上げ、その身体を起こした。

 

「そうか。ならば、始めよう。――『戻れ、力よ。意思出力、強制変遷』」


 そんな声が発せられると同時、ドーラの身体から黒と灰色が混じった光が抜けて行く。

 その光は、一度創始竜に吸われたかと思うと、

 

「ワシの力と意志を受け取れ、王族ナギニよ。――『強制降誕の義』」

 

 自分の方へ振って来た。

 試練の始まりだ。 


「うぐ……!」


 瞬間、全身を締め付けるような感覚がきた。

 いや、それだけではない。脳が痺れるような痛みと、内臓を押し潰してくるような気持ち悪さがきた。

 

 ……最初に駄目だった時よりも、はるかに、きついっすね……!

 

 最初に受けた時も辛さはあり、直ぐに膝をついて、倒れてしまった。

 その時は姉が自分が受け持つ分も肩代わりしてくれた。

 姉はこんな力を受け止めていたのか、とナギニの心に尊敬と申し訳なさが浮かぶ。一人に背負わせるようなものではなかった、と。ただ、


 ……今なら……そう、今なら、アタシも背負えるっす。

 

 これくらい。イノシシの体当たりに比べたら。ゴーレムのパンチに比べたら。師匠や他の竜王たちが発している力場の圧力に比べたら。

 

 ……なんてことない……!!


 倒れる事はない。このくらいの苦痛ならば、耐えきれる。

 耐えきって見せる。

 そう思う事しばらく。

 時間にして数十秒だったか。もしかしたら数分だったかもしれない。

 経過時間はよく分からない。だが、それでも、 

 

「く……た、耐えきった……っす……」


 創始竜からの光が止むまで、ナギニは踏ん張り続け、力を受け止めきった。


「……ほう、試練は終わりだが、ワシの力の七割以上を留めるとは、よくやった。しかもドーラと違い、足腰もしっかりしておるか」

「はいっす!」


 ナギニは思わず歯を見せて笑みを浮かべた。

 目はかすむし、何だか頭はぼーっとするけれども、それでも、試練を乗り越えた。

 その事実が、とても嬉しかった。

 

 修行した甲斐があったと。修行してくれた皆の力を無駄にすることは無かったと達成感と有り難さがこみあげてくる。更には、 

 

 ……これで、これでドーラ姉は目覚めてくれる……!!


 創始竜の力を受け止め過ぎたから姉は昏倒した。

 先ほど自分が味わったように、七割以上を、姉が受け止めていたのだ。

 

 けれど今回、自分がその分を引き受けた。

 

 ならば、姉はしばらくすれば目を覚ますだろう。

  

 ……久々にドーラ姉と喋れる……!

 

 生まれてからずっと一緒にいた姉だ。また彼女と一緒に笑い合える日々が来るのだ、と、ナギニは幸福感に包まれていた。すると、


「『さて、では、王にふさわしいモノ、ナギニよ。王として、最初の仕事をして貰おうか』」


 頭の中と、目の前の半透明の竜から同じ声が響いた。


「あ……れ? なんで、頭から創始竜様の声が?」

「『ああ、焦る必要はない。力の中にワシの意識が流れ込んでいるだけだ。気にせず受け入れるといい』」

「そ、そうっすか。了解っす。それで、仕事とは、なんすか?」


 ナギニの問いかけに、創始竜はうむ、と一度頷くと、


「『簡単な事だ。試練の後始末、そこに眠る役立たず――ドーラを殺して、残りの力を奪えばよい』」


 そう言ってきたのだ。

  

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