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俺の家が魔力スポットだった件~住んでいるだけで世界最強~  作者: あまうい白一


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243.道具作りワンモア


 ナギニの鍛錬を俺……というかゴーレムが担当するようになってから数日が経った。

 スケジュールとしては午前はゴーレムに優しく可愛がられつつ吹っ飛ばされて、午後は俺の傍で魔力を扱う練習をする。そして次の日、また朝からゴーレムに挑む、というものになっていた。

 

 最初はほんの数秒で、ゴーレムに吹っ飛ばされて気絶していたナギニも今では数分持つようになった。けれども、

 

「うぐぐ……今日も、ダメだったっす師匠……」


 やはりゴーレムには勝てず、庭のベンチでぐったりしていた。


「お疲れ。まあ、いつも通りゆっくり休んでくれ」

「順調、順調」


 そんなナギニと、見守り役であるヘスティに昼飯であるサクラ特製弁当と飲み物を渡した俺は、彼女たちの隣で弁当を食べながら、午前中動きっぱなしだったゴーレムの整備をしていく。

 

 整備と言っても欠けた箇所に木々を詰めていくだけだが、それだけでもゴーレムは嬉しいのか、ガッツポーズ姿勢を取っている。

 そんな整備を見て、ふわあ、とナギニは息を吐いた。

  

「相変わらず師匠の魔法はスムーズというか、見事っすね……。何度見ても感嘆するっす」

「そうか? スムーズなのは回数をこなしているから、だと思うけどな」

「いやいや、これだけの性能を持った強力で緻密なゴーレムっすよ。回数をこなしたからってこんなに早くなるとはとても思えないっす。……というか、師匠の魔法全体に言えるっすけど、師匠でも時間が掛かる魔法とか無いんすか?」


 無いんすか、と言われても、特に時間がかかるような魔法は覚えていない気がする。

 サクラやヘスティに教わったのは素早く出来る物だし。


「時間がかかるねえ……。魔法とはまた違うかもしれないが、物凄く硬い魔石を使った道具を作成する時は、流石に時間が掛かった記憶はあるな」

「おお、師匠でも手こずるコトがあるんすね! なんか安心したっす……!!」


 何でホッとした様な息を吐かれているんだろうか。ヘスティも分かる分かる、というような感じで頷いているし。

 魔法のプロという訳じゃないんだから、時間がかかる事があったって当然だろうに。まあ、道具作りに置いていえば、ヘスティの方が先輩だからそっちの意味で頷いているのかもしれないが。そう思っていると、


「ううむ、師匠がそういう難しい道具作りをしている姿、アタシも見てみたいっす……!」


 ナギニはワクワクしている様な瞳を向けて言ってきた。

 

「あー、それ、いいかも。アナタの魔力を練って道具を作る姿は勉強に、なるし。これも修行の一環として、メリットが抜群にある」

 

 更にはヘスティまでそんな事を言ってくる。


「そうなのか? でも、見てみたいと言われても、あの時に使っていた魔石は特殊なモノで……って、そうだ。ちょっと待ってろ」


 話していて一つ、思い当たるモノがあった、と俺は庭の隅へと向かう。

 そこにあるのは巨大な白と黒が混ざった色合いの、大きな丸い結晶だ。

 

 ……丁度いいから、湖で採ってきた魔力結晶を使えばいいんだよな。

  

 元々何に使うか決めておらず、庭の一角に置きっぱなしになっていたものだ。

 硬度的にはそこら辺の魔石よりもずっと硬いらしいし、プロシアの祭りで使ったものと同じかそれ以上はあるだろう。これを使ってモノづくりをして見せよう。

 新しい教材代わりに出来るのであれば、こちらとしてもやるのは吝かではないのだし。


 そう思って、俺は庭の一角から魔力結晶を持ってきたのだが、

 

「な、なんすか、その沢山の魔石と、禍々しく輝いてる物体は……」


 魔力結晶をナギニの目の前に置いた瞬間、彼女は青ざめた顔で後退りした。


「いや、今回の材料だけど」

「材料って……こんなやばいモノで何を作るつもりなんすか……」

「何をって、ちょっとした掘削用具の予備だ」

 

 そう。今回作るのは杵だ。プロシアにいた時に一本、魔石の杵を作ったけれど、予備があって損は無い。

 ヘスティも杖の予備は何時でも持っておくようにと言っていたし。

 なら、杵も、もう一本位予備として持っておいて良いだろう。

 

 なんなら二つ持たせて使い回すことで、長持ちさせることも出来るかもしれないし。

 

 キープしていた他の魔石も合わせて、この際使ってしまうのもいいだろう。

 そうして俺がゴーレムに家の倉庫から魔石を持って来させていたら、ナギニは口を何度かパクパクさせた後でヘスティに声を掛けていた。


「えとえと……物凄くヤバイ材料が集まりまくっている気がするっす。いや、師匠が手こずるほどの魔石って聞いた時点で想像すべきだったっすけど……この水晶、取り扱って本当に大丈夫なんすかね、ヘスティさん……」

「ん……我たちが取り扱おうとしちゃダメなやつ。牙も爪も魔法も通じないし、そもそも魔力量的に触れてたら圧迫されて、気分悪くなって倒れると思うけど……ダイチだから大丈夫」


 ナギニが唖然としたように魔力結晶と俺を見てくる。


「師匠、気分悪くなってたりは……」

「しないな」


 というか、そんな劇薬みたいなモノだって事も知らなかったし。

 いや、確かにディアネイアとか、この魔力結晶に触れようともしなかったけれどさ。まあ、今まで特に問題が無かったからいいけれど。


「何はともあれ、ヘスティ先生からも大丈夫って御墨付を得たし、作るか」

「ん、頑張って。我も何かあったら手伝う。あと、ナギニ相手の解説とかもしておく」

「おお。ありがとうな」

「た、助かるっす、ヘスティさん」


 そんな訳で、ヘスティとナギニが見ている前で、俺は新たな杵の製作を始めていく。

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