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俺の家が魔力スポットだった件~住んでいるだけで世界最強~  作者: あまうい白一


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238.新たな学び

 家の庭の中心から少し離れた場所。

 俺はそこにベンチとテーブルを作り、ディアネイアたちとサクラが入れてくれたお茶を飲みながら話をしていた。


「さっきは防御が必要だって話になっていたが、ディアネイアのところではそういう事はまだ教えてないのか?」

「ああ、こちらとしてはまず攻撃に参加できるような実力になってもらうのが最優先だからな。基本的に魔女隊の仕事は防衛拠点からの攻撃魔法を叩き込むことであるし。……その結果、ナギニ殿はこうなってしまったワケだが。本当に申し訳ない」


 ディアネイアの言葉を聞いてか、ベンチでぐったりしていたナギニが体を起こした。


「いや、ディアネイアさんは悪くないっす。こちらこそ、本当にめんぼくないっす……」

「起き上がれるようになったか」

「お陰様で。ご迷惑をお掛けしたっす……」

「気にするな。今更だしな」

「ナギニちゃんもお茶飲みます?」

「あ、うっす……ありがとうございます、サクラさん。あ……冷たくて気持ちいいっす……」


 サクラから受け取ったお茶を口にして、ナギニはほっと息をついた。とりあえず、ナギニの様子はサクラに見せておけば大丈夫そうだな、と思いつつ、俺はヘスティに視線を移す。

 

「で、防御ってどうやって覚えればいいんだ、ヘスティ」


 大体の物事を知っているヘスティ先生なら何か妙案が出るんじゃないか、と思っての質問だったのだが、


「んー、この辺りの魔力防護は、プロシアの魔女や騎士たちよりも冒険者を見習った方が早いと思う」


 どうやら俺の予想は正しかったらしい。

 ヘスティはあっさりと、そんな言葉をくれた。

 

「冒険者と騎士、魔女ってそんなに違いがあるのか?」

「もちろん。彼らは、魔力の濃い土地でも活動できるように、まずは防御方面を鍛える傾向にあるから。ディアネイアも、ダンジョンに入る時に、上手く体を防護している冒険者、見たことある、でしょ?」


 ヘスティの質問にディアネイアは数秒考えてから、静かに頷いた。

 

「確かにそうだな。例えばシャイニングヘッドの彼らはダンジョンを潜る時に、常に退避のことを考えて動いていたし、実際そのお陰で護衛任務などもこなせていると聞いた」

「そう。だから、冒険者は単独行動が常に出来るように身を護る術を身に着けている。だから、ナギニが学ぶとしたら、そっちに当たるのもいいかも、と今思った」

「流石はヘスティ先生。良い案をありがとうよ」


 説明を聞くと、やってみる価値は十分にありそうだ。

 ただ、ナギニと喋って問題なさそうな冒険者を探さなきゃいけないことになるが、

  

「……ディアネイア。シャイニングヘッドの連中って凄く優秀な連中なんだよな?」


 先ほど名前が出て、そして自分も知っているグループが頭に浮かんだので聞いてみた。


「うむ。正直、この周辺どころか、国でも五本の指に入るレベルには優秀な集団だと思うぞ」

「そうか。……じゃあ、あいつらに話をして、色々と教えて貰うのが一番早そうだな」

 

 その言葉に、ヘスティとディアネイアも頷いた。

 

「確かに。あの、禿頭の冒険者たちは、貴方の家に、普通に入って来れたっけね」

「うむ。私としても信用のおける冒険者だと分かっているので、彼らなら大丈夫だと思う」


 二人からもお墨付きがある。俺としても、あの冒険者集団は言動こそ荒っぽいが、気の良い連中であることは知っているので、話をしてみるだけでも悪くないと思うし、


「んじゃ、最初にシャイニングヘッドの連中に当たるか。で、アイツら街の酒場にいるんだっけか? で、適当な仕事を得ながらメシを食っているって言っていたけど」

「ん? ああ、前はそうだったけれど、今は違ってな。最近は、ウチからの依頼を継続してもらって、草原のダンジョン跡の見回りなどをやって貰っているんだ。今の時間帯はそこか、もしくは、その近くにあるウサギの店回りにいたりもするな」

「……この時間帯から、ウサギの店に? 大丈夫なのか? あそこ夜の店だろ」


 まだ昼間だぞ。


「うむ。まあ、あそこは昼間は普通の飲食店も兼ねているから、休憩することも出来るしな」

「ああ、そういや、喫茶店って名目だったもんな」


 ならば、普通にたむろする分には大丈夫か。あの厳つい冒険者連中が喫茶店員として勤務中の戦闘ウサギにデレデレになっているのは想像に難くないけれどもな、なんて思っていたら、


「あの、ダイチ師匠。ディアネイアさん。ウサギの店ってなんすか? というか夜の店って昼の店と何か違いがあるっす?」


 そんな問いかけを、ナギニがしてきた。

 だから普通に答えようとナギニの方を見て、俺は少し迷った。

 何せ、ナギニの見た目は少女だ。そして、立ち振る舞いもヘスティたちと違ってどこか子供っぽい。


「なあ、ヘスティ。ウサギの店の話って。ナギニにしても良いと思うか?」

「え? どういう意味?」

「いや、その、ヘスティたち竜王って見た目で歳が分からないだろ? だから、言って大丈夫なのか、とな。というかナギニって何歳?」

「あー……、ナギニは確か、生まれて十何年しかたっていない、筈だから。うん、やめた方がいいかも。今は強くなることに集中させた方がいい。今性教育をしても、強さに関係ないし」

「そうだな。まだ良いか」


 そんな感じでヘスティと相談した結果、


「――という訳でナギニ。店に夜も昼もないから、気にするな」

 

 そんな答えに収まった。


「な、なんすかー! 師匠たちだけの秘密ってずるいっすよー」

「うん、後々になったら話すよ。で、シャイニングヘッドたちは今、草原かウサギの店にいるのか?」


 ナギニの半目を流しつつ、ディアネイアに聞くと、彼女は苦笑いを浮かべながら答えてきた。


「そうだな。もしくは近場の露店にだな。最近ではあの周辺に小さな露店も開かれて、道具や魔法具を売る者がいるようになったから、そっちにいる可能性もある」

「へえ、そんな場所が出来たのか」

「ああ。ダイチ殿のおかげで農地として一部を使っているだけだった草原が随分と賑やかに発展していて、有り難いよ」

「発展したのはあのウサギたちが働いて人を集めたって要因の方が大きい気もするけどな。……ともあれ。場所が分かっているなら散歩がてら、今行くか」


 せっかく話がまとまったのだから。動き出しは早い方が良い。

 そう思いながら、俺はサクラにお茶を飲まされていたナギニを見る。


「動けそうか。ナギニ」

「うっす! 問題ないっす。なんか、このお茶を飲み続けたら、凄く元気になったので!」


 先ほどまでグロッキーだったのが嘘のように回復していた。

 凄い回復力だが、このお茶にそんな効能はあっただろうか。

 

「あれ? サクラ、このお茶に普通のお茶だよな?」

「はい、普通のお茶ですよ。ただ、お水がウチの地下水を使っているので、色々と性能が強化されていますので、ナギニちゃんが元気になったのはそのせいかと」

「へえ、いつも飲んでいるお茶にそんな効果があったんだなあ」


 これまで知らずにがぶ飲みしてたよ。そう言ったらヘスティとディアネイアに慄かれた。

 

「……こうやって、知らず知らずのうちに、強化されているんだよね、この人……」

「ああ、まだまだ成長が止まらない辺り、ダイチ殿は末恐ろしいな……」


 毎日飲んでいるお茶でこんな反応をされるとは思わなかったぞ。ただまあ、今、気にするのはそこじゃなくて、ナギニのことだ。

 

 先ほどの言葉通り、ナギニの元気は戻ったようで、行動には全く問題なさそうだ。

 

「じゃ、行くか、ナギニ」

「うっす、付いて行きます!」

「というわけでサクラ。ちょっくら出て来るわ」

「はい、行ってらっしゃいませ。ご飯を作ってお帰りの方、お待ちしておりますのでー」


 そんな感じで、俺たちは街と魔境森を挟む草原の方へ向かっていく。

 彼らはナギニに物を教えてくれるだろうか、という懸念と。

 教えるとしたらどんな内容だろう、という楽しみの気持ちを半分ずつ抱きながら。


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