表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の家が魔力スポットだった件~住んでいるだけで世界最強~  作者: あまうい白一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

280/309

230.夜の花火の下で

 コテージの前に作られた野外調理場は、いつも以上に賑わっていた。


 空には魔女隊による魔法花火が打ち上げられ、その下では騎士たちが次々に焼かれる湖産物にかぶりついていた。

 そんな光景を、俺はサクラと共に、コテージのベンチに座って眺めていた。


「賑やかだな」

「そうですねえ」


 俺たちは既に腹いっぱい飲み食いしたのですっかり観戦モードだ。


 コテージと食事場所とはそこそこ離れているので、うるさすぎる事もなく、程々の静けさで過ごせている。


「明日でこのリゾートでの日々も終わりだなあ」

「そうですねえ。ディアネイアさんは、来たくなったらいつでも言ってくれ、なんておっしゃってましたけどね」


 その申し出は有難いのだが、一年分くらいがっつり遊んでしまったので、しばらくはこっちに来ないとは思う。


 それに明日でここを立ち去るとなると、当然寂しさも感じるのだが、自分の家に帰れる嬉しさも強まっていたりする。


 だからしばらくは家でまったりしているだろう。


「また、ウチの方ではよろしくな、サクラ」

「はい、全身全霊をもって、お世話させていただきます!」

「ありがとうよ。ああ、それと、今まで言い忘れていたけれども、この数日間、本当にお疲れさまだ、サクラ。調理だなんだと頑張ってくれて感謝してるよ」


 ウチでは勿論だが、こちらに来てからもサクラには世話になりっぱなしだった。


 釣りに行く時には食事を毎回用意してくれたし、取った魚の下処理だって普通にしてくれた。

 泳ぐ時も、パラソルゴーレムの維持などを手伝ってもらっていたし、家にいる以上に世話になった感がある。


 だから礼を言ったのだが、サクラはほほ笑みながら首を横に振った。


「いえいえ、主様が過ごしやすかったのであれば何よりですから。それに私も主様と泳いだり、ご飯を作れたりで楽しかったですし」

「そう言ってくれるのも有難いんだが……まあ、してもらいっぱなしってのもどうかと思ってな。こんなものを持って来てみた」


 俺はそう言って、懐から一つの箱を取りだした。

 その中には、桜色をした魔石貝の結晶で装飾した指輪が入っている。


「え、ええと、これ、は……?」

「頑張ってくれたサクラに、プレゼントをしようと思ってな」

「どうなさったんです、こ、この指輪? 以前、主様が入手した魔力の結晶がついているようですが……」

「この前、街でアンネが自作の指輪を売っていてな。ちょうど真珠っぽいものも手に入れていたってこともあったし。アイツから作り方を聞いて、俺も作ってみたんだよ」


 先日まで竜の鱗の網を作っていたが、予想以上に早く作り終えた。

 その後、手が開いていたので新しく作れるものがないか探していた時に、ふとサクラが頑張っている事を思い出したのだ。


 ……ヘスティやディアネイアにプレゼントをしたって話を聞いて、少し羨ましそうにしていたしな。


 こちらに来てから一番世話になっているサクラに何も渡してない、というのはおかしい気がした。

 それ故のプレゼントだ。


 魔力の結晶という物の使い道が、他に考え付かなかったというのもある。

 見た目は綺麗な真珠なのだし、だとしたら指輪を作りたいと思ったのだ。


「何度も練習して作ったから、それなりの形にはなっていると思うぞ」


 こちらに来てから様々なものを作り上げて来たが、細かいものを作る機会は中々なかった。

 

 その為、この指輪には一番時間をかけた。

 かなり丁寧に仕上げたから、俺の主観では恰好悪くは無いものが出来た――気はする。


「けどまあ、でも俺のセンスはアレだからな。サクラが気に行ったら付けてくれよ。気に入らなかったらその辺にしまっておけばいい」


 軽く言いながらサクラの手に指輪を置くと、サクラは驚いたような眼のまま首を横に振った。


「も、もちろん付けますよ! 気に入らないわけがありません……!」

「そうか。そりゃよかった。――って、サクラ?」


 サクラは指輪を置いた俺の手ごと、自分の胸元まで持っていって、ぎゅっと抱きしめるように握ってくる。


「嬉しいです。本当に……!」


 その顔にはとても嬉しそうな、それでいて泣きそうな笑みが浮かんでいた。


「……なんというか、そこまで喜んでもらえると、作った甲斐があったな」

「はい。本当にありがとうございます、私の、私の唯一の主様……! ……この指輪、大切に、心から大切にしますね」

「ああ、気にいってもらえたようで、何よりだよ」


 花火の光の中で俺とサクラは静かに言葉を交わす。

 そうして俺達は、バカンスのシメとして、ゆっくりとした時間を楽しんで行った。

というわけで、長くなったリゾート篇は終了です。

今までで最もまったりしつつ、さっぱり終えた話になりました。

次回からは新しい竜王が出たりして、少しだけ話の波が大きくなるかと思います。

今後ともよろしくお願いします!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
●コミックス最新3巻発売のお知らせ
4/19(金)に『俺の家が魔力スポットだった件』のコミックス3巻が発売されます!
 面白いので是非お手に取って頂ければ嬉しいです! 
↓の画像はコミックス3巻の表紙です。クリックでコミックス3巻の公式サイトに飛べます。
avsf2uwqhujmfl939pohhpkl2j8k_1255_e6_k5_5sbz.jpg
  ●同時連載作品のご紹介
こちらの連載も応援して頂けると嬉しいです!
最強の預言者な男が、世界中にいる英雄の弟子に慕われながら、世界を回る冒険者をやる話です。
 100人の英雄を育てた最強預言者は、冒険者になっても世界中の弟子から慕われてます
https://book1.adouzi.eu.org/n2477fb/

+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ