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俺の家が魔力スポットだった件~住んでいるだけで世界最強~  作者: あまうい白一


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229.大漁の結果

「……す、凄い光景だな、ダイチ殿……」


 地引網漁が終わると、騎士団の合宿所前の砂浜は魚で埋め尽くされていた。

 若干、引いている顔のディアネイアをよそに、俺はウッドアーマーを解除する。


「ほとんど自動で巻き上がっただけなんだけどな」


 その中で俺は、ゴーレムを引き連れて網に絡まった獲物の処理をしていた。

 とりあえず、鮮度が落ちないようにイカなどの足の早そうなモノを一匹一匹絞めて回っている。


 それが終わったら、ウォーターゴーレムの力である程度冷やして保存している。

 ただ、鮮度を落ちないように、と言っても限度があって、


「……これだけ取れちまったのはいいけれど、料理するのも大変だよなあ」


 騒ぎを鎮圧するためとはいえ、大漁すぎた。

 数にして百は超えるだろう。


 ……それに、とらえてないと襲ってくるような奴は、湖に返せないしな。


 だからまあ、食べてしまうのが一番楽なのだが、これら一つ一つに下処理を加えて調理していくのにも、食べるのにも、それなりの人出がいる。

 

 どうすべきかね、と、考えたところで、気付いた。


「そうだ。ディアネイア。ここにいる全員で、この魚をさばいてバーベキューでもすれば処理しきれるかね?」


 ちょうどここに大人数がいることに。

 

「う、うむ? それはダイチ殿が獲ってくれた獲物を食材として提供してくれる、ということで良いんだろうか」

「ああ、コテージの方にいる連中だけじゃ食べきれないだろ? だったらここいらにいる全員で食えれば、と思うんだが」


 周囲には騎士団の姿がある。それに加えて、おそらくこちらに駆け付けたのであろう冒険者の姿もあった。


 その数はこれまた百を超えているが、ちょうどいい。一人一匹はきちんと回るだろうし。


「そ、そうだな……。これだけの大物を一人一匹食うのは中々大変そうだが……騎士団の男たちはガッツリ食う筈だ。これくらいの量でも、いけるとは思う。――どうだろうか、騎士団長?」


 ディアネイアは、近くにいた騎士団長に声を飛ばした。

 彼もこちらの話は聞いていたらしく、真剣な顔でしっかりと答えて来た。


「はい、問題ありません。というより、今日は体を沢山動かしたので、体を回復させるためにも沢山食べる必要があります。なので、食費が浮いて助かるくらいですよ。ありがとうございます、ダイチ様」

「いや、気にしないでくれ。こっちがこっちで食いきれないだけなんだから。ただ、これだけの量を調理できる鉄板とかはあるのか?」


 それがなければいくら処理をしたところで意味がない。そう思って問うと、騎士団長は合宿所の方を一瞥してから頷いた。


「はい、あちらの方に巨大な鉄なべと鉄板が何十枚もありますとも。それこそ、この巨大魚丸ごとが入るレベルのものですので、大丈夫です!」

「へえ、そりゃよかった」

「はい、普段は抱えて走ることで体を鍛えることに使っておりますが、調理にも勿論使えますとも! 調理部隊がしっかり整備しております!!」


 なるほど。まあ今までの使い方については置いておくとして、とりあえずの機材はあるようだ。


「なら、問題ないか」


 でかい鉄板が何十枚もあれば、流れ作業で調理も出来る。

 出来あがった傍から皿に預けて、鉄板を開けて焼けば良いだけだし。

 

「んじゃ、本格的に下処理していくか。――ゴーレム! 〆る速度を上げていくぞー」


 調理のめどがたったので、俺は早速ゴーレムたちに命令を出した。

 すると、今まで俺の後を付いてきて、獲物を冷やすだけだったゴーレムの目が光りだす。


「――!」


 そして俺の命令で動き始めた彼らは、一斉に獲物たちに近づき、鯖折りにしたり、眉間を突いていく。

 

 ――ゴキリゴキリ


 と派手な音が鳴っているが、魚が巨大な分、骨も太いらしい。それでもゴーレムの腕力があれば難なく、魚を処理することが出来た。

 

 ただ、微妙に問題なのはその見た目で、


「……うわあ、ちょっとグロいな」


 湖産物の血にまみれたゴーレムたちが、無事な獲物を求めてさまよう光景が広がっていた。


「うお、マジか……。俺の剣をへし折ってきやがった銀色の鱗が、手首の動きだけでねじ切られているぞ……!」

「や、やべえなあの腕力。あんなに苦労していた奴らをやすやすと。本当にゴーレムなのかよ。バケモンだぞ、あれ」

「流石は、大地の主の兵装たちだな……」


 騎士たちは、その様子を見て青ざめている。

  

「だ、ダイチ殿。こ、これは、私もちょっと怖いんだが」


 ディアネイアもかなり引き気味だった。


 ……確かに見た目はスプラッタで、印象がよろしくないけれどな。


 まあ、やっていることは調理なので、問題ないだろう、と俺は思うことにした。


「さて、見てるだけってのもなんだ。俺はさっさと活け〆していくから、焼いたり煮たりの調理は頼んだぞ」


「あ、ああ、分かった! ダイチ殿が下処理してくれるならば私たちはぼーっとしている場合じゃないな! 騎士団の諸君、疲れているところ悪いがもうひと頑張りだ! 美味い食事にありつくために、即刻、火と機材の準備をするぞ!」

「りょ、了解です姫様!」


 というわけで、バカンスの最後の最後になって、大規模な宴会が開かれることになっていった。

次でバカンス編はラストです。

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