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俺の家が魔力スポットだった件~住んでいるだけで世界最強~  作者: あまうい白一


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-side 竜王- 一因発見、対処開始

 魚釣りから戻ってきたヘスティは、マナリルと共に調理場のテーブルに座ってサンドイッチを食していた。


「このダイチさんが作ってくれたサンドイッチ、美味しいわね、ヘスティ」

「ん、シルバーガードのフライを挟んだの、初めて食べたけど、いっぱい食べられそう」

「あはは、普通は食用にできないものね。貴重だし、そもそも堅過ぎるし。それをささっと捌いてるのは流石、としか言いようがないわ」


 調理場の方では、ダイチが魚をさばいている最中だ。

 たまたまこちらに立ち寄っていた騎士団長が目を見開いて驚くほどの手際で、硬いうろこを切り裂いている。


「あれもシルバーガードよね? 金属級の鱗をしているとは思えないわね」

「ん、そうだね。ナイフの硬さもあるけれど、鱗にある対魔力防護が触っているだけで、全部吹き飛んでいるから、ああなる」


 ヘスティは先日、シルバーガードについて調べていた。

 それ故に鱗についての知識は増えている。

 本当ならば、魔法が付与されたナイフでも歯が立たない強度だ。

 竜のナイフがあるからといって簡単に断てるものでもない。


「……この湖の生物はカトラクタがいたせいで、対魔力については秀でているのだけどね。でないと死んでしまうから」

「今はいないから、そういう進化をする必要はないけれども。まあ、あの人にはどっちにしろ意味がないみたい」

「そうねえ。あー……魔力的な防護がダイチさんが触れた個所から解けているのが良く見えるわ」

「ん。――ああ、カトラクタと言えば、聞き忘れていたけど。湖の調査の方、どうだった?」


 聞くと、マナリルは口の中に入れていたサンドイッチを飲みほしてから喋り出す。


「それなんだけど、巨大生物発生の一因、分かったわよ」


 彼女の言葉にヘスティは首を傾げる。


「原因って、カトラクタがいなくなったこと、だけじゃなくて?」

「ええ、もちろん、この湖の魔力量が全体的に豊富になったのは、ダイチさんが来たことだったり、カトラクタの件だったり、色々な出来事が重なっているのだけどね。現時点における一番の理由は、湖の底に露出している巨大な魔石の成分流出みたい」


 マナリルは、追加のサンドイッチをつまみながら湖の中央付近へ視線を送る。

 ヘスティも彼女の視線につられて目と意識を向ける。


「確かに、向こうから、魔力の流れは感じられるけれど、成分が流出するなんてこと、あるんだね」

「もともとここの湖はカトラクタの封印を受け入れていたくらい、魔力を溶かす許容量はあるからね」

「……そっか。でも、どうするの?」


 水生生物の巨大化は異常事態ではあるが、あくまで自然現象だ。

 生態バランスが崩れてないのであれば、手出しする必要は無い、とヘスティは思っている。だからこそ聞くと、マナリルは苦笑した


「まあ、そうなんだけれどね。向こうで訓練している騎士団の人たちも、『鍛錬に張り合いが出来ていいですな!』って言ってたし」

「向こうでも、そんな感じなんだ」

「そうね。人間でも対処できるレベルだし、生態バランスも崩れてない。だから放っておいてもいいのかもしれないけれど……急激な変化は危ういからね。バランス崩壊も『今はまだしてない』って段階だし」

「ん、それは同意する」

「だから、この後もう一度潜って、私の歌で成分の流出を抑えてくるわ。そうすれば緩やかに巨大化していくだけになるからね」


 湖を守るために、コントロール出来るものはコントロール出来る内に対処をしてしまう。

 それはカトラクタがいる頃から変わらない方針だ。


「ん、微調整するんだね。歌だけでいけそう?」

「ええ、私の歌は魔力に作用するし、そこは問題ないと思うわ。カトラクタを封印する要領でやるつもり。――もしも、反撃を受けても、多少なら平気だしね」


 マナリルは膂力は弱い方だが、それでも竜王だ。

 そこいらの水生生物には負けないくらいの力は持っている。

 その点はヘスティも信用していた。


「了解。我に何か、手伝える事、ある?」

「ふふ、その気持ちだけで嬉しいわ。でも、特にないわよ。ダイチさんたちが楽しんでいる所を邪魔するのも悪いし、私の方でやってしまおうと思うの。ヘスティも気にせず楽しんで行って」

「そう。分かった」


 ヘスティがこくりと頷くと同時、マナリルの前に合ったサンドイッチが全て無くなった。


「ふう、ごちそうさま。――さ、ダイチさんとサクラさんが作ってくれた朝ごはんも美味しく食べて満腹になったことだし、ささっと行ってくるわ」

「ん、行ってらっしゃい。何かあったらすぐに戻ってきて」

「ふふ、了解。まあ、何もなくても、夕方前には戻る予定だけどね」


 そう言って、マナリルは再び湖の中へと潜っていった。 


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