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俺の家が魔力スポットだった件~住んでいるだけで世界最強~  作者: あまうい白一


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218.静かな夜のお散歩

 夜の砂浜を、俺は竜王二人と歩いていた。


 昨日はコテージの傍でずっと釣りをしていたから分からなかったが、


「こっちのほうは夜風が涼しくていいな。波の音も気持ちがいいし」

「ん、そうだね。ここの湖は本当に、夜が静かでいい」


 ヘスティも同意して、心地よさそうに風を浴びている。

 

 昼間は魚や人が元気よくバチャバチャ泳いでいるから、こんな静けさを感じられるのは夜だけなんだろうな。

 そんな事を思いながら歩いていると、


「……」

 

 カレンが俺の顔をじっと見ているのに気付いた。


「うん? 俺の顔に何か付いているか?」


 気になったので尋ねてみると、彼女は少しだけ頬を染めて口を開いた。


「いえ、その、ダイチは凄くて、有難い存在だなあと思いまして」

「……いきなり何を言っているんだ、カレン」


 何もしてない状態で、そんな賞賛の台詞を言われたものだから、流石に面を食らってしまった。

 

「ああ、いや、すみません。私は今、体の周囲に、魔力をほとばしらせたままなのですよ。それなのに、ダイチは怯えず怖がることもなく、隣を普通に歩いてくれているので、有難いと」

「うーんと、魔力がほとばしっているのか?」

「はい。ヘスティは分かりますよね?」


 カレンの言葉にヘスティは小さく頷く。


「ん、かなり力強く魔力を飛ばしているから、野生の生き物とか滅茶苦茶、逃げていってる」

「……マジか。全く分からなかった」


 そう言うと、カレンはくすりとほほ笑んでくれた。


「ふふ、まあダイチにとってはそこまで強くないレベルですからね。――でも、この力は無理やり抑えないと、怖がられてしまうレベルなんですよ。特に竜王の魔力は人のそれとは違って異質な部分もありますので」


 カレンはそう言って視線を遠くにやった。

 その顔は少し、寂しげに見えた。


「だから、自分が力を出しても受けとめて貰えるというのは、私たち竜王にとっては憧れに近いものがあるのです。そしてダイチ、憧れが顕在化している。これほど有難いことはありませんよ」


 いつになくカレンはしんみりした口調で話してくる。


「俺としては受けとめてる感覚は無いんだけどな。物理的に受けとめた経験は何度かあるけれど」


 というか、今にして思えば、ヘスティやラミュロスやマナリルなど、竜王の大半を受けとめている気がするぞ。

 

「……そうですね。でも、私のような竜王からすると何よりうれしいことだったりするのですよ。竜王を受けとめてくれる貴方の傍に居続けられるヘスティがちょっと羨ましいくらいです」

「まあ、俺もカレンの世話になっている事は多いからな。知識面において教えて貰うこともあるし。お互い様ってことでな。これからも気軽に話をしようや」

「ええ……、そう言って頂けると助かります」


 そうして珍しくしんみり状態のカレンと話しながら、歩いていると、


「……んみゅ?」


 ヘスティがすっこけた。


「どうした、ヘスティ」


 コケるだなんて、彼女にしては珍しいな。


「いや、ちょっと眠気が来ていた。あと、足元に何か埋まっている」


 そう言われて、ヘスティの足元を見ると白い何かが埋まっているのが分かった。


「なんだこりゃ」


 それは細長くとがった円錐状の物体だった。


「あー、この辺に生息している生物の牙ですかね」

「ふむふむ……この牙の大きさだと相当な大物がいそうだな……」


 今度はここで釣りをするのもいいか。

 ただ、今の釣竿では力不足かもしれないし、コテージに置いてある竿と糸を改良しようかね。


「ともあれ、カレン。ヘスティ、そろそろ戻るか」


 ヘスティも眠いみたいで、目をこすっているしな。


「そうですね。あ、アテナ王女の夜食もそろそろ出来ているでしょうし、ダイチも一緒に御夜食どうですか?」

「ん? まあ……そうだな。どうせサクラの料理も食うつもりだったし、皆で食うのもアリか」


 夜食を食いながら釣竿の改良をすればいいんだしな。

 そうして、俺はカレンと共にコテージへ戻ることにした。

 

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