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俺の家が魔力スポットだった件~住んでいるだけで世界最強~  作者: あまうい白一


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211.ちょっとした立ち寄り


 プロシアの騎士団は、訓練用の鎧を身につけ砂浜を走り回っていた。


「よーし、砂浜ダッシュ十本終了。五分休憩!」

「うーっす!」


 金属の鎧を身につけて十本のダッシュを終えても、騎士団には余裕があった。

 特に若手の騎士たちは、体力が有り余っているようで、


「ひゃっほーい! バカンスだぜー」」


 そのまま湖に走り込むくらいだった。

 足首までつかる浅瀬で涼みながら、若手騎士たちは走り回る。


「ふいー、気持ちいいー」

「ああ、毎日の訓練の方が大変だし、この合宿は天国だぜ」


 日ごろはそれこそ、汗水たらした後、更に血汗を絞り出して仕事をするのが普通になっている。

 それに比べたら、この広く開放的な空間で鍛錬のみに力を割けているのは、本当に極楽だった。

 昨夜に到着して早速訓練に入ったが、夜には酒をがぶ飲みするくらいには余裕だった。


「おーい、ほどほどにしておけよお前ら。まだ鍛錬は残ってるんだから」

「うっす、先輩。分かってますって」


 先輩騎士の苦笑しながら忠告に、若い騎士たちも軽く頷く。


「砂浜ダッシュ百本くらいなら出来る体力残ってるんで大丈夫っすよ」

「そうですよ。先輩もこっち来ませんか?」

「はは、俺は遠慮しておくよ。あの騎士団長と姫様のことだし、まだ気力練成の鍛錬とか……まあ、色々と仕込んでいるだろうからな」


 先輩騎士が呟いた。

 その瞬間だった。


「っ……!?」


 若手の騎士の心臓が大きく飛び跳ねたのは。


「な、こ、このプレッシャーは……!」


 言葉をもらしながら、湖に入っていた騎士の一人は膝をつく。彼だけではない。


「――」


 砂浜で休んでいた若手騎士数名が、同じく膝をついて震えだした。

 若手騎士には、この感触に覚えがあった。


「これは……姫さま以上の魔力……大地の主の力……!!」


 騎士は歯を食いしばりながら、プレッシャーの発信源である方向を見た。すると、そこにいたのは、


「ここが騎士団の合宿所だぞ、ダイチ殿」

「へー、思った以上に広くて綺麗な場所だな」


 自らの都市を治める姫と、自らの都市を何度も救ってくれた男の姿があるのだった。



 俺はディアネイアに連れられて騎士団の合宿所に足を運んでいた。


 巨大なアパートのような三階建の建物の前には広い砂浜が広がっており、顔から汗を流している鎧姿の騎士たちが座っていた。


 その中から一人、騎士団長が出てきて走り寄ってくる。


「ようこそです、姫様、ダイチ様! ――総員、整列して待機!」

「はっ!」


 そして一言命令を下して、砂浜の騎士たちを纏めていた。

 騎士たちは油のような汗を流しながら、背筋を伸ばして立っている。


「あー、なんか変に気合を入れさせちまってすまんな」

「いえ、丁度休憩が終了するタイミングでしたので、問題ありませんよ」


 騎士団長は首を横に振ってそんな事を言ってくれるが、未だ座ったまま、立ち上がれない奴らもいるみたいだし。

 到底休憩が終わっているようには思えないんだよな。


「何人かコケてるみたいだけど、本当に大丈夫なのか?」

「ああ、問題ありません。ダイチ様の魔力の波動を受けて、気が抜けて転がっているだけですので。少し休めば元気いっぱいになりますとも」


 騎士団長は笑顔で告げてくる。というか、俺のせいだったのか。

 自己流コーティングはしてきているけれど、魔力はやっぱり漏れ出しているようだ。


「ええと、マジで邪魔をしちまったか?」

「いえ、邪魔どころか大助かりですよ。本来であれば、私と姫様が全力で魔力を飛ばして気力の鍛錬をするつもりだったのですから。それ以上の強度で鍛錬できるのですから、有難いことこの上ないのです!」


 騎士団長は思い切り頭を下げてくる。更には、

 

「ああ、私からも礼を言わせていただこう、ダイチ殿。このあと少しの時間を使って私が全力で魔力を使い、気の抜けた騎士たちにぶつけようと思っていたんだ。……だが、貴方が来るだけでそれが済んでしまった。本当にありがとう」


 ディアネイアまでそんな事を言ってくる。

 迷惑になっていないなら良いんだけどさ。


「さて、折角訪問して下さったのですから、騎士団謹製の酒や菓子類でも持ち帰ってくだされ。ラウンジの方に用意いたしますので」

「え、気力の訓練中なのに、そんな事をして貰っていいのか?」

「はい。というか、気力の訓練は、この強度であれば一瞬で十分ですとも。あとはクールダウンの時間になりますので、実質的に訓練は終了です」


 そう言った後、騎士団長は振り返り、騎士団に声を飛ばした。


「総員、休め! 数分後、各部隊長の指示に従い、行動せよ!」

「はっ!」


 騎士団は騎士団で力強い返事を返してくる。

 本当に訓練は一瞬で済んでしまったようだ。


「ははは、ダイチ様のお陰ですとも。そのお礼を兼ねまして、こちらへどうぞ」

「おお、じゃあ、少し貰っていくかね」


 そうして、俺とディアネイアは騎士団長の後を追うようにして、合宿所のラウンジに向かって歩いていく。

 

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