210.ビーチ巡り開始
午後。
新鮮なカニと、ヘスティが持ってきた獲物を昼飯として食べた後、俺は砂浜でサンドゴーレムの改良に入っていた。
「とりあえず、こんなものか」
目の前には五メートルほどのゴーレムが三体、完成していた。
上手いこと水を入れて砂を固めたりすることで、このくらいのサンドゴーレムは作れるようになっていた。
「砂で出来る事は意外と多いからな」
出来るだけ、多く作れるようになっておきたかったりする。
なにせ、サンドゴーレムがいれば、ウッドゴーレムの表面を研磨して、よりツルツルにすることが出来るんだからな。
……この研磨能力は有難い。
今まで、ウッドゴーレムの表面をきれいにするときは、基本的に魔法でツルツルな表面をイメージしていた。
大まかな部分はそれでどうにかなってきたけれども、細かい部分は手作業でやらなければならなかった。
それがサンドゴーレムのお陰でとても楽になったのは本当に有難いことだ。
なんて思いながら、作り上げたサンドゴーレムの表面を軽く撫でていると、
「ダイチ殿。そろそろ行こうと思うのだが――って、あ、あの、そんなゴーレムのような武装はいらないと思うぞ?」
ディアネイアがコテージの方からやってくるなり、そんな事を言ってきた。
いきなりゴーレムを武装扱いされるとは思わなかったな。
「ディアネイア、これは武装じゃなくて砂で遊んでいた結果だから。特に装備している気は無いんだぞ?」
「あそ……!? ま、まあ、そうか。ダイチ殿にとってはゴーレムは軽く作れるものだったな。それがどんな素材であっても、出来る辺りおかしいとは思うのだが……」
素材が変わっても作り方は殆んど変わらないから出来るだけなんだけれどもな。
それでおかしい扱いされるのはどうなんだろう。
まあ、今、ゴーレムについてどうこう言うつもりは無いのでスルーしておくが。
「ともあれ、出発だ」
「ああ、いい感じに日も昇ったのでな。周辺の施設も景気よく動いていることだろうし、この時間から動けば色々と見れると思ってな」
「気遣いありがとうよ」
俺は既に軽く出歩いても大丈夫な靴と、麦わら帽子は装備済みだ。
準備は万端で、いつでも行ける。
「ディアネイアもそのまま行けるのか?」
聞くと、彼女はこっくりと頷いて両手を広げた。
「ああ、見ての通り、しっかり服も着こんできたからな。日よけの対策もばっちりだ」
見れば彼女は、オレンジ色の水着の上に薄手のシャツを羽織っていた。
下にちゃんと水着を着用しているのは分かっているが、なんとなく色っぽく見えてしまう。そんな事を思いながら彼女を見ていると、
「え、ええと、どうしたんだ、ダイチ殿? そんなにじっと見て、何かおかしい所でもあっただろうか?」
「ああ、まあ、色っぽいなと思ってな」
「いっ……!?」
変に誤魔化すのもアレだと思ったので、思った事を直球で言ったら、ディアネイアの顔が真っ赤になった。
この反応はちょっと予想外だったな。自信満々に『うむ、ありがとう!』とか言ってくるかと思ったんだが、
「ああ、なんかスマン。遠まわしに言うべきだった」
「い、いや、大丈夫だ! 私は全然気を悪くしてないから! むしろ、もっと見てくれてもいい!」
ディアネイアは首をブンブン振りながらそう言ってきた。
微妙に顔もにやけているし、本当に気を悪くしていなければ幸いだ。
「そりゃ良かったよ。……じゃ、案内よろしく頼むわ」
「う、うむ、よろしく頼む。――因みに、近場までテレポートして、それから少し歩く感じにした方が色々とめぐれると思っているのだが、移動はそれでいいだろうか?」
「おう、了解」
「で、では、行こうか」
ディアネイアは言いながら手を握ってくる。
ただ、その手は微妙に震えていた。
「ディアネイア。なんか震えてるけど、脱水症状とかじゃないよな?」
「う、うむ! それも大丈夫だ。しっかり補給してきたからな。この震えはただ緊張しているだけなので、気にしないでくれ!」
微妙に顔が赤いままだが、平気だというのであればそのままにしておくか。
「で、では行くぞ。――《テレポート》!」
そうして、ディアネイアに手を握られながら、俺は砂浜から移動した。





