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俺の家が魔力スポットだった件~住んでいるだけで世界最強~  作者: あまうい白一


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209.砂の構築


 アテナと一緒に砂の操作を練習していて分かったのは、砂は樹木よりも扱いが難しいということだった。


 元がサラサラしているので、形を変えるのは楽なのだが、


「硬化させて、維持するのが大変だな、こりゃ」


 試しに一体サンドゴーレムを作ったのだけれども、大きく作り過ぎると、欠けたり崩れたりしてしまう。


 今の所、安定して作れるのは三メートルほどの、中型ゴーレムといったところだ。

 しかも樹木や水のゴーレムと違って大分スマートな形になっている。


「あ、あの、大変って言いながら、もうこんなゴーレムまで作ってるんだね、ダイチおにーさん」

「まあな。作ること自体は出来るさ」


 ただ、それと難易度は別の話だ。

 サンドゴーレムについてはもう少し練習が必要になるだろうし、


 ……建物は作りにくそうだから、後回しだな。。

 

 遊びで砂のミニチュア城を作ったけれども、それだけでも手間が掛かったし。

 砂というのは使い道は多そうだけれども、使いどころは考えないといけないらしい。

 本当に大変な素材だ、と思っていると、


「あ、ダイチおにーさん、向こうから何か来るよ!」

 

 急にアテナが叫んだ。


「ん? 向こうって、湖の岩場の方か」


 俺はアテナが指をさした方に目を向ける。

 そこには大きな灰色と黒色が混ざった、全長数メートルほどの大きな岩があった。


 というか、その岩が、こっちに向かってきていた。


「なんだ、あれ。ゴーレムか?」

「いや、ダイチおにーさん。あれはロッククラブだよ」

「ロッククラブ?」

「うん、水辺の岩場とかに擬態しているカニでね。普段は静かにしているんだけど、空腹時は気性が荒くなるんだ」


 あれは、カニだったのか。

 確かに目を凝らしてよく見れば、岩だと思っていたのはカニの外殻だ。

 そして、巨大なハサミを掲げて、俺たちの方に向かって来ているのが、よく分かった。

 

「――ってことはなんだ。気性が荒くなって俺たちを襲ってきてるわけか」

「そう、だね。一応、人も襲う生物だから」

「ふむふむ、なら、ぶっ飛ばしてもいいのか」


 そう言うと、アテナは頷いた後で、難しい顔をした。


「うん、だけどこのロッククラブは岩のように硬くて厚い殻を持っていから、打撃も炎も効きづらいんだ。正直、今の私の攻撃じゃ、効果がないと思う」

「打撃が効きづらいのか。……じゃあ、サンドゴーレムの具合を見るのに都合がいいかもな」

「へ?」


 首を傾げるアテナを後目に、俺は作ったばかりのサンドゴーレムに命令する。


「とりあえず、サンドゴーレム。あのカニを殴ってみてくれ」


 作り上げたゴーレムの耐久度、硬度を知りたい。

 あの岩の堅さと分厚さは相当だと言うし、試し打ちには丁度いいだろう。

 そう思って命令を出した。すると、


「――」


 サンドゴーレムは即座に命令を果たした。

 砂浜を滑るように歩いてロッククラブに接近する。

 そして、今まで作ったどのゴーレムよりもなめらかな動きで拳を振るった。


「ギイ……」


 対し、ロッククラブは防護に自信があるのか、声をあげながら突っ込んでくる。

 そうなれば当然、正面衝突になるわけで、


 ――グシャッ


 と、サンドゴーレムの拳は、正面からロッククラブの体にめり込んだ。

 カニの体の中心が、外殻ごと凹んでてしまっている。

 

 そして、カニはその場に崩れ落ち、動かなくなった。 


「わ、わー……ダイチおにーさんの魔力で硬度が増してるみたいだね」

「……そうだな。あと、砂の特性もあるんだな、これ」


 倒れた蟹の打撃痕を見れば、その周辺が削れていることが分かった。

 砂がザラザラしているから、拳の命中と共に削れたんだろう。


「削りながら殴る感じになったわけか。もうちょっと研磨性能を落とさないと危ないな、これ」


 このままでは全身がやすりのようになっているゴーレムになってしまうし。

 というか、今回の打撃もやり過ぎだ。

 

「折角取ったカニの身がもう少しで、砂だらけになるところだった……」

「あ、あはは……で、でも、結果的に、大物が獲れてよかったね、おにーさん。ロッククラブは美味しいらしいし、たくさん食べれるよ」

「そうだな。これだけデカけりゃ、一杯食べれるな」


 アテナの言うとおり、今は、無事にカニが獲れたので良いという事にしようか。

 丁度昼飯も近いし、味がどんなものなのか、食べてみようかね。


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