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俺の家が魔力スポットだった件~住んでいるだけで世界最強~  作者: あまうい白一


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205.天然の水族館

 ゴーレムを伴い湖に入った俺は、地上から見る湖とはまた違った風景を眺めていた。


「こりゃ、面白いな」


 水中では魚の集団や、水棲生物たちが自由気ままに泳いでいた。

 当然と言えば当然だが、家の近くの湖は生き物がカトラクタしかいなかったので、こんな光景は見たことが無かった。


「ん、感動しているようで良かった。あと、呼吸は大丈夫?」


 水の中でも、ヘスティは平気で声を飛ばしてくる。

 コーティングをしただけだというのに、呼吸も会話も出来るとは、本当に魔法は何でも出来るな。


「問題ないよ。むしろ光景に意識をやり過ぎて息をするのを忘れていたくらいだ」

「そう。一応、この中には、アナタが釣った魚とかも、結構、いるね」

「あー、確かにな。金銀でキラキラ光ってるから分かりやすいわ」


 ディアネイアの言った通り湖底近くでウロウロしているようだが、色が色だけに良く目立っていた。


 こんなに目立って他の捕食者にやられないんだろうか、と思うほどだ。


「あれらは力が強いから。普通の魚では逆に食われるし、飲み込まれてもお腹を食い破ってくるような存在だと認識されていると、思う」

「そう考えると本当に物騒な奴を釣り上げていたんだな」


 味はとても良かったので、また釣って食べたい、とは思っていたけれどさ。

 改めて奇妙な魚だと思ってしまう。


「というか、こんなに深いと太陽光も届きにくいだろうに、どうしてこんなに明るいんだ?」


 ヘスティに案内されるがまま、湖底に向かってほぼ垂直に潜っている訳だが、周辺の明るさが殆んど変わらない。


 いくら透明度が高いとはいえ、ここまで太陽の光が届くものなんだろうか、と思っていると、

 

「湖底に、光る魔石が多いからね。その成分が水中にも少し混じっているし、明るさはそういう所から来てるね」

「ああ、底の方で光ってるの全部魔石か」

「ん、そういうこと。――っと、もうすぐ着く」


 ヘスティはそう言って、前の方を指差した。

 そこには石を半球状に積み上げたような物体があった。


「これは何の建物だ?」

「海底神殿……というか、マナリルの仮眠所みたいな所、かな。入口は、真横だから、こっちに来て」

「おう」


 ヘスティに誘導されて、半球の側面に行くと、そこには金属っぽい材質のドアがあった。

 それを開けて、中を見ると、そこには普通の板間の部屋があった。


 しかも部屋の中には水が一切入っていなかった。

 ドアを開けても流れ込む気配が全くしない。


「えっと……? ここは空気があるのか?」

「そう。耐水と、空気の供給機能はあるけどね。さ、入って」


 先に入ったヘスティを追うように、俺も部屋に入る。

 ただ、ゴーレムたちは流石に入れないので、湖底で待機させておく。


 内部にはやはり空気があり、普通に呼吸が出来るようだった。

 そして、それ以上にビックリしたのは、


「天井が透けて見えるのか、ここ」


 まるで水族館のトンネル水槽のように、湖の底から湖面までをじっくり見れていた。


「どういう仕組みだ、こりゃ」

「ん、ここは空気で作ったドーム。外壁は石のように見えるけど、ただのカモフラージュで、普通の魔力壁で出来ている。空気は板の下にある地中から精製しているから、無くならずに安定して供給される仕組み」

「詳しいな」

「ん、我とラミュロスとマナリルで作った、施設だからね。本来の目的は、カトラクタの監視、だね。天井を透けて見えるように作ったのも、そのせい。今はアナタのお陰で使わなくてよくなった場所だけど」


 そうだったのか。


「あれ、でもどうしてここに?」

「ん、忘れ物というか、置いていた対カトラクタ用のマジックアイテムの回収。湖底に置きっぱなしというのも、よくないから。代表して我が取りに来た」


 ヘスティは言いながら、部屋の隅っこにある袋を回収していた。

 本当にヘスティは真面目だ。


 ……しかし、ヘスティたちが建物づくりをしていたなんて初めて知ったが、


「監視施設だとしても、本当に凄いな、ここ」

「我らは、数年かけたけど、まあ、アナタだったら数時間もあれば出来ちゃうものだから。そこまで凄いものじゃない」

「いやまあ、あとで作り方は教えてほしいけど、それでも、これは良い所だよ」


 俺は板の床に体をごろんと寝転ばせて、上を見た。

 するとそこには、青色の中を優雅に泳ぐ魚達が沢山いた。


「ああ、これは見ているだけで楽しいわ」

「ん……アナタに嬉しそうな顔をして、なんだか、有難い」


 ヘスティはそう言って、ほほ笑みながら、俺の横に座る。


「……それと、ここに誰かと来るのは初めてだから、ちょっと我も楽しい」

「そうか。じゃあ、ちょっとここでゆっくり楽しむか」

「ん、そうする」


 ヘスティは俺の横にコロンと転がった。

 そして、彼女の体温を感じつつ、綺麗な水中の景色を眺めていった。


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