202.二日目の起床
朝日が差し込むと同時、俺はコテージのベッドで目を覚ました。
「あ、おはようございます主様。よく寝つけましたか?」
「おう、元気全開だ」
昨日は夜釣りにハマって寝るのが少し遅くなったけれども、いい感じに熟睡出来たらしく体力はしっかり回復していた。
気持ちのいい日差しが一気に頭を覚醒させてくれたし、今日も問題なく動けるだろう。
そう思って起き上がろうとすると、枕元に白い体があるのに気づいた。
「ん……おはよう」
「……ヘスティ? なんでヘスティは俺の枕元にいるんだ?」
というかヘスティだった。
俺の枕もとで体を丸めるようにして横たわっていた。
「さっきまで、ここで眠らせて貰っていた。場所を取ってごめんなさい」
「いや、別にベッドは広いし、寝てる時は全然気にならなかったから良いんだけどさ」
少なくとも俺がベッドに入るまで、彼女の姿は無かった。
そして今の今まで気付かなかったけど、いつの間に来たんだろう。
「ん……酒に酔って色々酷くなったアンネから逃げて、こっちに戻ってきた。そのまま眠くて、手近のベッドに転がったら、アナタのベッドだった」
「なるほどな。そういうことなら、まあ仕方ないな」
素面でも酷いアンネがもっと酷くなったのであれば、眠気に襲われるほど疲れても仕方なさそうだ。
今のへスティもわりと疲れた表情をしているし。
「ありがとう。まさかあそこまで酔うとは思わなかった……」
「まあ、大変だったな。ヘスティは二日酔いとかないのか?」
「我は平気。多少は、抑えてきたから。……くあ」
ヘスティはぼさぼさになった髪の毛を掻きながらあくびをする。
まだ眠たそうだな。
「もうちょっと寝るか?」
「ん、大丈夫。ちょっと頭がぼーっとしているだけ、だから。しばらくすれば、しゃっきりする」
ヘスティは、そう言ってベッドから降りた。
少しフラフラしてはいるけれど、大丈夫って言うのならば良いんだろうな。
そう思いながら俺もベッドから降りると、
「主様、ヘスティちゃん。朝ごはんを用意しましたー」
サクラがテーブルの上に料理を置いていた。
焼きたてのパンのいいにおいが部屋中に立ちこめる。
「おお、ありがとう。今日も作ってくれたのか?」
「はい、コテージにも小さなキッチンはありますし、食材もディアネイアさんが用意してくれたようなので、それを使わせて貰いました」
テーブルの上には美味しそうな朝食がずらりと並んでいる。
「それじゃあ、頭をすっきりさせるためにも、食べさせてもらうかね」
「ん、我も、頂くね」
「どうぞどうぞ。沢山用意しましたので、しっかり食べていってください」
旅先で食べる朝食は、自宅のそれとはちょっと違った味がする。
……雰囲気ってのもあるんだろうけれどな。
材料も設備も違うので、当然と言えば当然だが、それでも、
「うん、美味いな。流石はサクラだ」
「えへへ……ありがとうございます主様」
サクラの作る朝食はとても美味しかった。
昨日の夜まで動いて腹が減った体にどんどん入っていく。
「ん、本当に。美味しい……」
ヘスティもヘスティで焼きたてのパンをもきゅもきゅと食べていた。
やや疲れていても食欲はしっかりしているようで何よりだ。
「――っと、この焼き魚は俺が昨日釣ったシルバーガードか」
「はい、主様の釣果を使わせていただきました」
昨夜は糸と針を垂らしていただけなのだが、何故か数匹が引っ掛かってくれた。
ルアーも餌も付けていない。
……なんで釣れたのかは分からないので、あとで原因の研究はしたいな。
そんな事を考えつつ、昨日はとりあえずゴーレムの生簀に入れて戻ってきたのだが、こんな美味い朝飯になってくれるとは大助かりだ。
「この魚も結構な力を持っていたみたい、だね。焼かれてもそこそこ力が残存している。身が引き締まっているのも、そのせいかな」
「へー、そうなのか」
保有している力によって美味さも変わるのかもしれない。
だとしたら面白い話だな、と思いながら俺は朝食をガツガツと平らげていく。
そうしてあらかた食べてから、サクラに入れてもらったお茶で一服して、落ち着いたあと、
「さて、今日は何をするか。適当に決めていくかね」
今日の方針を決めることにした。
そんな感じで、リゾート二日目は、一日目以上にゆったりスタートした。





