197.午後の活動開始
アンネの薬によって日焼けに強くなった俺は、そのままの流れでアンネに日焼け止めを塗りたくることになった。
といっても大したことではなく、ベッドに寝転んでもらって、アンネから受け取った白い液体を薄く延ばしていくだけなんだけどな。
「ひゃあ……だ、ダイチさまの手、気持ちいいですう」
ただまあ、アンネはいろいろと大きいので、少し目のやり場には困る。
ベッドに押し付けている双球がつぶれて上から見えるしな。
「まあ、ささっとやるか」
アンネにも好評価なようだし、手早く塗っておしまいにしよう。
そう思っていたのだが、
「……」
「ん?」
不意に、湖の方を見ると、カレンが相変わらず俺の事をじーっと見ていた。
バランスの整った綺麗な体に、カラフルな水着を着こんでいるので、白い砂浜でかなり目立っている。
……何か用でもあるのかね。
まあ、塗り終わってから聞きに行けばいいか、と再びアンネの背中に視線を落とす。
そして静かに手を動かす。
「しかし、この日焼け止めはかなり固いというか、粘り気が強いな」
「そうですね。特殊な鉱石と薬草が使われていますので。ただ、効き目は確実にありますので、そこは安心してください」
「おう、アンネが持ってきてるんだから、そこの心配はしてないさ」
そう言うと、アンネは俺の顔を見上げて、照れくさそうに笑った。
「……だ、ダイチさまは真顔で褒めてくるので困りますね」
「事実だろ。ともあれ、ほら。終わりだ」
「あ、ありがとうございます」
そうしてアンネの塗りこみを終えた俺は、一息つくために顔を上げた。すると、
「……」
カレンがじーっと、俺の手と、日焼け止めを眺めていた。
というか、目を合わせる度に、接近してきている。
そのまま数秒後、俺の前に到着した。
「ダイチ、お願いがあります」
そして、俺の手を握って、そんな事を言い始めた。
なんとなく察したけどさ、
「えっと、カレンこれを塗ってほしかったりするのか?」
「はい! ダイチの手の感触を、私も味わいたいのです!」
目をめちゃくちゃキラキラさせながら言ってきた。
……でもまあ、普段はカレンにも知識を貰っていたりするからなあ。
そのお返しをする感じでやらせてもらえればいいかな。
「あー、じゃあそこに寝てくれ」
「はい! お願いします!」
「そこまで気合を入れんでいいから」
そんな感じで、竜王への塗り塗りタイムはもうちょっとだけ続けていった。
●
竜王へのサービスを終えた俺は、釣竿の改良に励んでいた。
「まずはコーティングして、と。あとは糸を短めに調節してから、ルアーを重めにするか」
この湖に来てから殆んど釣り関係でしか動いていないが、楽しいから良いだろう。
改良によって課題がどんどん解決していくのも面白いし、釣果が増えていくのも実感できるから、やる気も出るしな。
……泳ごうと思えばいつでも飛び込めばいいんだしな。
気が済むまで釣りで行こう。なんて考えながら、俺は糸の調整を終えた。
これなら力の伝わり方がよりよくなる筈だ。
……深い所にルアーは落とせないけど、まあいいか。
深い所で釣るためにはリールが必要だし。
糸を出して巻くだけの簡単なリールなら作れるだろうけれども、午前中にはあんまり必要性も感じなかった。
とりあえずはこれで行ってみよう。
必要になったものは必要になった時に作ればいいんだしな。
「んじゃ、実戦だな。ゴーレム、ついて来てくれ」
俺は麦わら帽子を被って、パラソルの下から出た。
……今度はどこで釣るのがいいか。
そんなことを考えつつ、俺は砂浜を歩いていく。





