190.脱いで開始
ディアネイアが用意していた宿泊場所とは、砂浜の上に建てられたコテージであった。
それも一軒や二軒ではなく、何軒もの小屋がそこには建っていた。
「ダイチ殿の家に比べたら狭いだろうが、好きな所に泊まってほしい。一軒に付き、五~六人は眠れるし、どこの部屋でも使えるようにしてあるのでな」
ディアネイアがそう言うので、俺たちは適当に部屋割を決めて入ることにした。
ただ、
「私、主様と一緒でいいですか?」
「ああ、構わないぞ」
一人一軒を使っても逆に面倒になるし、俺とサクラは普段通り一緒の部屋にすることにした。そして、
「姉上さまと同部屋……姉上さまと同部屋……!!」
「あの、申し訳ないけれど、我も一緒で良い……? 一人になると、確実にアレ(・・)が来るから」
「おう、構わないぞ」
そんな理由もあって、俺はサクラとヘスティと同じコテージを使う事にした。
まあ、いつも通りの三人と言えばいつも通りだけどな。
「中も大分広いな」
「大きなベッドが人数分、ちゃんとありますし、シャワーもキッチンも使えるようです」
広いワンルームみたいな構造だ。
三人で使っても不自由なさそうな広さがある。
……うん、参考になる作りだな。
建造物を作ってきたものとしては記憶しておきたい間取りだ。
丁度いいし、軽く覚えておこう。
どこかで利用できるタイミングも出来るだろうしな。
「ともあれ、荷物置いて外に出るかー」
「はい、了解です、主様」
「ん、我も、置いておく」
そうして俺たちが荷物を置いて、部屋から出ると、
「ダイチおにーさん、いらっしゃーい!」
隣に建っているコテージから、アテナが出てきた。
そのまま、とててっと走り寄って来る。
この前よりも薄着状態なのは、この湖にいるからだろうか。
「おう、アテナ。元気そうだな」
「元気だよー。今日の為に修行をいっぱいして、力を溜めこんできたからね! 服の下に水着も着こんできたから、いつでも泳げるよ!」
そう言ってアテナは、服の下に着用している水着をアピールしてくる。
フリルのついた可愛らしいものだ。
「えへへー、どう? 新しいの似合ってる?」
「おう、ちゃんと似合ってるぞー」
「やったあ! ありがとう、ダイチおにーさん!」
陽気に笑うアテナを見て、本当に楽しみにしていたんだなあ、とほっこりしていると、
「こら、アテナ王女。はしたないですよ」
既に水着に着替えた状態のカレンが、ツカツカとやってきていた。
綺麗なビキニをビシっときっちり着用している。
「すみません、ダイチ。アテナ王女が先走ってしまいまして。どうにも早く泳ぎたいようです。ともあれ、今日からよろしくお願いします」
「……先走っているのは、カレンも同じ気がするけれどもな」
むしろ、一番気合が入ってるんじゃなかろうかという服装だ。
「まあ、よろしく。部屋も隣みたいだしな」
「そのようですね。……私としても、本当に有難い話ですよ……」
ブルブルっと震えてカレンはほほ笑んだ。
やっぱり微妙に扱いづらいなあ、この竜王。
態度は常識的だから良いんだけどさ。
「カレンー、カレンー。ダイチおにーさんたちへの挨拶も終わったし、そろそろ私も脱ぎたいから、ちょっとだけ部屋に戻ろう」
「あ……ええ、そうですねアテナ王女。では、ダイチ。また後ほど」
そう言って、二人は部屋に戻っていった。
本当に挨拶の為だけに出て来たらしいな。
普段よりもテンションが高めなようだ。
「ん、まあ、こういう所に竜王が来れるのは、中々ないからね」
「そうなのか?」
「集まって来るとか、そういう連帯的な行動は、しないから。だから、こういう大人数で来るのは、珍しい」
なるほど。竜王は個人行動が多いのかね。
割と思うがままに生きているように見えるので、頷けはするんだけど。
「って、そうだ。俺たちも着替えないとな」
「あ、うん、そうだね」
ここまで来て普通に服を着ている必要もない。
釣りをするにせよ泳ぐにせよ、海パンで十分なんだから。
「よし、順序が滅茶苦茶になっちまったが、俺たちも水着に着替えるか」
「了解です、主様! あ、日焼け止めとかも塗ってしまいますね」
「おう、頼むわ」
そして俺たちのリゾート初日は、本格的に始まっていく。





