187.お出かけ早朝
昨日は早めに眠ったから、今朝は早めに起きることができた。
昨晩のうちに出掛ける準備はしておいた。
待ち合わせ時間にはまだまだ余裕はあるが、
「んじゃあ、先に庭へ出ておくか、サクラ」
「はい、了解です主様」
朝飯を食べた俺はサクラと共に鞄をもって、ゆっくりと庭の外に出た。すると、
「おはよう」
そこにはすでにヘスティがいた。
彼女は小さなバッグと昨日渡した帽子を手にもっている。
すでに準備万端みたいだな。
「調子はどうだ?」
「ん、問題ない。……我は」
そういって、ヘスティは自らの足元を見た。そこには
「くーくー」
と、寝息を立てるラミュロスの姿があった。
ヘスティの小屋から引きずり跡がついているという事は、彼女がここまで運んできたんだろうな。
「つーか、引きずっても起きないのか、こいつ」
「ん。刺激に鈍いタイプだから。まあ、そのうち、起きる」
ヘスティはもはやあきらめたような目でラミュロスを見ていた。
流石は長い付き合いの二人だ。
寝坊助な竜王に対する扱いはよくわかっているようだ。
「というわけで、我はもうオッケー」
「おう、そうか。サクラ、俺たちも忘れ物とかはないよな?」
「はい、全部持ってきましたし、ゴーレムもすっかり動いてますよ」
後ろを見れば、そこには作り上げたゴーレムたちがスタンバイしていた。
基本的に小型なものだが、利便性においてはとても優れた奴らだ。
「あとはゴーレムの状態も、……問題なし、と」
昨日作って動作確認とメンテナンスをしたので、ゴーレムたちは問題なく活動してくれるだろう。なんて思っていたら、
「ダイチさーん、サクラさーん。ヘスティー。おはよー」
マナリルが森の方から手を振って歩いてきた。
「よう、マナリル。待ち合わせ時間よりも早いな」
「うん、楽しみだからね。早めに来たんだ。それにダイチさんたちはいるだろうから、あんまり待たせるのもなって思ったの」
「そんなに時間にシビアな日程じゃないんだから、気楽でいいんだぞ?」
スケジュールなんてあってないようなものだし。
湖に行く日にちと、使える日にちが決まっている以外は、自由なんだからさ。
「そう……ね。じゃあ、気楽にいくわね」
「おう、ちょうどここにもお気楽な竜王もいるわけだしな」
俺の視線を追うように、マナリルはラミュロスを見た。
いまだによだれを垂らして眠っている。
「ああ……うん。こ、ここまでじゃないけど、気楽に行こうと思うわ」
なにやら気楽さのイメージがわいたようで何よりだ。
「なんというか、本当に、ラミュロスは変わらないわね」
「ん、我らも、あんまり変わらってない方だけど、コイツの変わらなさは、本当にそのままだからね……」
そして竜王同士で通じ合っている。
ラミュロスの扱いは竜王共通なのかもしれないな。と地面の竜王を眺めていると、
「あ・ね・う・え・さ・ま――!」
追加の竜王が来た。
ものすごいダッシュで、一直線にヘスティに向かって、いつものように抱きしめていた。
「今日からよろしくお願いします――!」
「当日の、朝くらいは、我慢、すると思ったんだけどな……」
ヘスティはまた諦め顔で呟いていた。
「というわけで、ダイチ様。おはようございます、今日はよろしくお願いします!」
「おう、よろしく」
まったくいつも通りではあるけれども、竜王は続々と集まってくる。そして、
「あ、ディアネイアさんの反応が、森の方にありましたね。そろそろ皆さんが、くるみたいですよ」
「おお、そうか。情報ありがとうな、サクラ」
ディアネイアたちもそろそろ来るようだ。
待ち合わせ時間はまだまだあるというのに、皆早いな。
……まあ、遊べる時間が増えるってことでいいかね。
そんな感じで、俺たちは出発の朝を迎えていった。





