185.完全釣り人スタイル
釣竿を作った俺は、折角だからと周りの道具も作ることにした。
道具といってもクーラーボックスとか、小物を入れる箱なのだが、
「ん、あの、これ、ボックスじゃなくて、ゴーレムになってるよ?」
俺の目の前には小型のウッドゴーレムが出来あがっていた。
「あー、……普通の道具を作るつもりだったんだけどな」
いつもの調子で何となく作ったらゴーレムになってしまった。
もしかしたら俺はゴーレム中毒になっているのかもしれない。
「まあ、うん。でも断熱効果はそこそこあるんだぞ?」
俺の作っているアーマーには耐火性と断熱性がある。
それこそ、へスティの炎に耐えられるくらいのものだ。
それを活かして作った為、このゴーレム内部はキンッキンにモノを冷やせる状態になっている。
ジュースのタンクでも、酒瓶でも入れることが出来る空間があるので、もちろん、魚だって入れられるんだ。
「それは、機能的に見ればわかるけれども。……でも、こっちのウォーターゴーレムは、なんで作ったの?」
「ああ、それは生け簀用にな」
ゴーレムだったら歩いてくれるので、生簀として持ち運ぶことが出来るんじゃないか、思ったんだよな。
そうしたら意外と上手くいってくれた。
ウォーターゴーレムを作りまくった経験がこんな風に役立つとは思わなかったが。
「ん……まあ、そうだね。釣った魚を泳がせる場所があるなら、そっちの方が新鮮でいい、ね」
「納得してくれたようで何よりだよ」
ただまあ、俺としてもゴーレムづくしになってしまうのは不味いと思った。
だから普通に道具を作ろう、と樹木に触れる。
「今度は、何を作るの? また兵装?」
「俺は兵装は作った覚えは無いんだがな。まあでも、装備ではあるよ」
俺は樹木を分割し、柔らかなひも状にしたものを何本も作っていく。
それを近場にいるゴーレムの拳に巻きつけながら、ぐるぐると円筒を作るように編んでいく。
割と大雑把な編み方ではあるけれど、意外と形になるのは早かった。
「……あれ、編み物、上手いね」
「サクラが編み物をしている所とかをよく見ていたからな。ある程度は見よう見まねで出来るさ」
そうして、ぐるぐると編んで行って、やがてゴーレムの拳を埋め尽くした段階で、手を止める。
あとは編みこんだモノをひっこ抜くだけだ。
「これで……ニセ麦わら帽子の完成っと」
正確には樹木の帽子というべきか。
ともあれ、軽くかぶれる帽子が出来あがった。
通気性も良いので日差しを防ぐことも出来るだろ。
……炎天下で釣りをしている時は、やっぱりこういうのが必要だからな。
ただ、やはり大雑把にやり過ぎたからか、少し不格好だな。
「アナタ、こういうのも作れたんだね」
「まあ、かなりデコボコだけどな。……ま、俺が被るだけだから、これでいいんだけど」
そうして頭に帽子を載せていると、へスティがじっと見ていた。
「あれ、どうした? 帽子とか、珍しいわけじゃないだろ?」
「ん……まあ、ちょっと良いなって思っただけ」
おお、へスティがモノを欲しがるとか、珍しいな。
「じゃあ、同じのでよければ、もう一個作るけど、いるか?」
聞くと、静かにへスティは頷いた。
「でも、いいの? 面倒じゃない?」
「おう、俺も練習したいし。ただ、習作になるけど、もうちょっと上手くなってからの方がいいか?」
そう聞くと、へスティは首を横にふった。
「んーん、今、アナタが作ってくれるものがいい」
「そうか。なら、ささっと練習がてら作るから待っててくれ」
先ほど作った感覚はまだ手に残っている。
それを再現しながら、よりよく形を作っていき――
「ほい、これでどうだ」
先ほどよりも早く完成させることが出来た。
色々と改良をしていったので、ツバは大きめになってしまったが。
「少しでかいか?」
「ううん、だいじょぶ」
へスティは俺が渡した帽子をぎゅっと頭に押しつける。
すると、彼女の頭に丁度よくフィットしたようだ。
「ほら、完璧。そして……ありがとう。大切に、するね」
そうして、へスティは帽子を手で押さえながらほほ笑んだ。
傍から見ると、やっぱり少し大きめに見えたけれども、喜んでくれたのならば良かったよ。





