183.竜王がいる生活
武装都市への出発まで残り一日になった。
とはいえ、俺は何をするでもなく、普段通り庭でゴーレムいじりや、ラミュロスから受け取った竜の鱗いじりをしていたのだが、
「うあー、やっぱりここは、涼しいねー」
そこにはウォーターゴーレムのベッドに横になるラミュロスの姿があった。
どうやら、かなり汗をかいているようで、薄着が肌にぴったりくっついている。
というか、上半身はほぼ下着姿だ。
「ラミュロス。お前、また脱いでいるのか」
「うー、ボク暑がりだからねえ。温度調整するのに、こうしないとダメなんだー」
一晩で判明したのだが、ラミュロスはかなりの汗っかきらしい。
俺の庭はウォーターゴーレムの打ち水によってかなり涼しい空間になっている。
直射日光も樹木で防いでいる部分もあるし、外部気温とは数度の差があるはずだ。
……それでも、ラミュロスは暑いとか言っていたからなあ。
ヘスティの小屋は木陰にあるので、敷地内でもかなり涼しい部類に入る場所なのに、だ。
俺も暑がりな方だと思っていたけれど、ラミュロスはそれ以上だった。
「なんにせよ、庭で裸はやめろよ。色々と問題だ」
「う、うん、それは了解ー。もう怒られたくないからやらないよー。それに……ダイチさんが、このゴーレムを貸してくれたから、十分涼しいからね」
これも昨晩でわかったことだが、ラミュロスは暑いとすぐに脱ぎだそうとする。
だから、ウォーターゴーレムベッドを貸し出している。
「ダイチさんのウォーターゴーレム、サイコーだよー」
「まあ、そういう避暑目的で作ったものでもあるからな。早速活用できて、俺としてもよかったんだが」
「うん、このゴーレム、すごいよー。抱きしめているだけで汗が引っ込んでいくから」
そう言ってラミュロスはゴーレムを抱きしめていた
胴体部を水で作っているので、体が半分ほどめり込んでいる。
……ラミュロスのパワーも強いからな。
それでも壊れないように設計してあるので良かったが。
強度的には、ベッドの上で思いっきり飛び跳ねても破裂しないように作ってある。
そして、内部の水が土で汚れないように、樹木のカバーもつけているので見た目も悪くはない。
旅行に持っていくにはちょうどいい出来になったんじゃないか、と改めて思う。
「ふわあ……眠っちゃいそう……」
そうして、ベッドを抱きしめながら眠りに入ろうとするラミュロスを見ていて、ふと思った。
「……抱き枕化するってのもありだな」
「ふえ? 抱き枕?」
「ああ、ウォーターゴーレムを、ちょっと暑苦しい時に追加できる、小回りの利く道具にするんだ。……ええと、こうすれば作れるか?」
俺はその場でウォーターゴーレムをもう一体作り出す。
足元に樹木を混ぜて水に泥が入らないようにした、いつものゴーレムだが、そのサイズはかなり小さめだ。
「よし、円筒形に変形」
出来上がったゴーレムに指示を出すと、きっちり円筒形の抱き枕が出来上がった。
「あ、相変わらず、ダイチさんは思いつきで変形型のゴーレムを作るね。すごいや……」
「まあ、思い立ったら何とやらって奴だ。というわけで、ラミュロス。抱きついて使うタイプの枕だ。使ってみてくれ」
「う、うん」
俺がラミュロスに完成品を渡すと彼女はおずおずと受け取った。
ただ、その抱き枕に触れた瞬間、ラミュロスの目が丸くなった。
「わー、凄い。なにこれ! すべすべで冷たい! 抱きつくと気持ちいいよ!」
イメージとしては水枕を大きくしたものだ。
ウォーターベッドを使うまでもないけれど、少し暑い、くらいの時が使い時だ。
とりあえず感触は良さそうなので、中身の話をしよう。
「ラミュロス、水が冷たすぎたりはしないか?」
「え? うん、全然大丈夫だよー。ほんのり冷たいってくらいだから」
「そうか」
寝ている時に腹を冷やしすぎたら、翌朝に痛くなりそうだからそこは気を付けないといけない。
だから温度調整をある程度、自発的にやってくれるゴーレムを変形させてみたのだが、上手くいったようだ。
……体を必要以上に冷やすとダメージが残るからなあ。
上手いラインを考える必要があったが、ゴーレムであれば、少しくらいは柔軟な命令を聞いてくれる。
これなら、暑苦しいシーズンでも、かなり快適な夜を過ごせるはずだ。
「あとは見てくれだな。もっとうまく作れるかやってみよう」
「わー、ダイチさんのモノづくりがもっと見れるんだ。ボクも協力するよー」
「おう、寝心地判定を頼むわ」
見てくれが良くても、眠れなかったら意味がないしな。
抱きしめながらしっかり眠れることを第一目標として、作っていこう。





