-side 竜王- 竜王だらけの水着チェック
ヘスティは、水着のチェックを行っていた。
アンネが水着を持ってきたは良いが、サイズが合うのか分からなかった。
だから、ダイチに温泉の脱衣所を借りて、水着のチェックをしていたのだけれども、
「ん、これ、サイズ大きい、ね」
一番最初に貰った白いビキニが、スットンと落ちてしまった。
上手く引っ掛からないようだ。
「あれ、ちょっと大きめに作り過ぎましたね」
「胸元、ゆるい」
「すみません。では、こちらでどうです?」
アンネからワンピース型の水着を受け取ったヘスティは、すぐにそれに着替える。
すると、今度はずり落ちることなく、体に留まってくれた。
「ん、これなら、大丈夫かな。あの人にも、見せられる」
「そうですねえ……ああ、ダイチ様の事を考えて水着を選ぶ姉上さまはキュートです! 素晴らしいです! 他の種類もありますからね、どんどん試してください……はあ…………はあ……」
呼吸が荒くなってきたアンネの顔を遠ざけながら、ヘスティは水着の感覚を確かめる。
これなら少し早めに動いても、問題なさそうだ。
なんて思っていると、
「わー、これ面白いねー。すごく伸びるよー」
脱衣所の方からラミュロスが出てきた。
彼女は緑色のビキニを着用して胸元を弄っていた。
確かに彼女の言うとおり、よく伸びる。
「はい、水馬の皮を特殊な薬品で柔らかくしているので、柔軟性抜群なんですよ」
「本当だねえ。でも……ちょっと小さいかな」
そう言ってラミュロスが伸ばしていた胸元を元に戻すと、途端に窮屈そうな表情になった。
「あれ、ラミュロス様。また、大きくなったのですか?」
「そうなんだよー。ボクはゆったりめが好きなんだけど、どんどん大きくなるから。服装が大変なんだよねえ」
困り顔でいうラミュロスに、ヘスティは半目を向ける。
「鍛錬、不足。もっと力を収束させないから、そうなる」
「それはそうなんだけどさー。ヘスティは力のコントロールが上手くて良いなあ――って、イタタ。なんで脇腹をつねるのさー!」
「ちょっと羨望した自分が嫌になった。うん、ぶよぶよは、よくないね」
ヘスティはラミュロスの腹をつねった指で自分の頬をつねる。
自分は体型的にベストな選択肢を取っているから、これで良い、と頷いていると、
「あ」
ラミュロスが身をくねらせた瞬間に、胸元がボロンとこぼれた。
そしてヘスティの頭に乗っかった。
「……」
「あ、なんかヘスティが不機嫌になっているのを感じる! って、いたた、御免って! 事故だってば!」
「ああ……無表情で感情的な姉上さまも素敵です……!」
ラミュロスの胸から離れたヘスティは、静かに温泉に入っていく。
「我、小さくてもいい。気にしてない、から……!」
「ああ、拗ねる姉上さまも素敵です……!!」
「もー、ボクは何もしてないのになあ。――あ、ところで、アンネ。新しい水着はある?」
「あっ、はい。こちらに」
新しく渡された水着を、ラミュロスは着用していく。
「……にしても、ラミュロスが、服装にこだわるって、なんだか新鮮」
「まあねえ。ダイチさんには色々と迷惑をかけている訳だし、こういう所はしっかりしておこうって思ったんだよ」
ラミュロスはえへへ、とほほ笑みながらそう言った。
「ん……なんというか、凄く、人に慣れたね」
「そうだねえ。もう何日も地上で生活しているから、慣れてきて、すごく楽しいよ。不慣れな事はあるけれどね、それでも皆と一緒にいられるのは楽しい」
ラミュロスの言葉に、アンネとヘスティは頷いた。
「そうですねえ。こうしてゆっくり集まれるのは本当に有難いことです」
「ん、我も、竜王みんなで遊びに行ける日が来るなんて、思わなかった。だから、ダイチには感謝してるよ」
言いながら三人は見合い、ほほ笑んだ。
「じゃあ、楽しみの水浴びに向けて、水着を選びましょう。ダイチ様に目の保養もして貰いたいですし」
「あはは、ボクらでなるのか分からないけどね」
「ん、まあ、綺麗で動きやすいのを、選んでいこう」
そうして、竜王たちの水着選びは進んで行く。





