178.新作発表会
太陽が昇り、朝露が乾いたころ。
朝飯を食べ終えた俺は庭に出て、昨夜からの試作品を並べていた。
「はい、こっちに並んでくれ―」
俺の掛け声に従い、ゴーレム達がざっざっと歩いてくる。
出来ているのは、ゴーレムの椅子、ウォーターゴーレムのベッド、ウォーターゴーレムの椅子の三つだ。
見た目は普通のゴーレムだが、
「《変形》」
この言葉だけで、ゴーレム達は椅子になったりベッドになったりと、設定した通りの変形を見せてくれる。
とても楽だし、変形するのに音も少なめだ。
見た目的にもそこそこ格好よくできていると思う。戻す時は、
「解除」
これで元通りになるしな。
二言喋るだけで片付けと運搬が出来るのは、とても扱いやすくて良いんじゃないか、と少しだけ自賛していると、
「……なんだか、とんでもないものを、見ている、気分」
その様子を見ていたヘスティは驚き半分、達観半分の表情になっていた。
「とんでもないってどの辺が?」
「ん、いや、これが行列を作って歩いていたら、色々と、大変そう」
「そうかね? 運搬性を重視して、結構細身にしたんだぞ」
いつもの分厚いゴーレムでも作れなくは無かった。
けれど、やはり持ち運ぶものは軽くしておくべきだしな。
割と細身のゴーレムになっている。
「んー、そう、だね。……座り心地も寝心地も良いから、我、何も言えない……」
ウォーターゴーレムベッドに寝転がりながらヘスティは軽く落ち込んでいた。
ぽよぽよとした反発力が外から見ても分かる。
「ああ、その水ベッド気持ちいいよなあ。上手く樹木の膜を作れば、冷たい温度だけ伝わってくるし。中々いい出来だと思ったんだよ」
肌触りも良いし。
なにより全身が程良く冷やされるので、かなり優しく体の温度を下げてくれたりする。
「ん、あと、ちょっと肌寒くなったら、ゴーレムが水を調整してくれるのも、いいね。我、少しビックリしたけど、全く敵意無い動きだから、安心できるし」
そう、ゴーレム家具のいい所は、使用者の健康を多少は考慮してくれる所だ。
まあ、そのシステムをセッティングをしているのは俺なのだが、
……自分の体に合わせてくれる道具ってのはいいよな。
体に合わない椅子やベッドで休んでも、疲れるだけだしな。
その辺りはゴーレムが非常に役立ってくれていると思う。
そんな事を考えていると、
「ん? あれ、そっちのは、なに? 昨日はいなかったけど」
不意に、ヘスティが俺の間近にある一体に視線を向けてきた。
椅子の形をしているが、背もたれからゴーレムの両手が生えているものだ。
「ああ、こいつは朝方に軽く作ってみた、マッサージチェア型のゴーレムだよ」
「マッサージチェア……? 肩を、揉んでくれるの?」
「おう、この両手でぎゅっとしてくれるんだ。ただな……ゴーレムのパワーの調整が難しいからまだまだ未完成でな。――まあ、実例を見せるか」
俺は自分で座りながら、ヘスティに説明する。
座った瞬間、ゴーレムの両手が俺の肩に回されてぎゅぎゅっと揉んでくれる。
柔らかい力だ。
これはかなり効果があるだろう、とは思うのだけど、
「……ゴーレムのパワーで揉まれると、強すぎな時がありそう」
「ああ、それなんだよなあ」
力加減は出来るけど、ゴーレムがめっちゃ恐る恐る揉んでいるのが分かる。
……割と手がぷるっぷるしているんだよな。
使用者と、ゴーレムの事を考えると、もうちょっと改良すべきだろうな。
傍から見ているヘスティも眉をひそめているし。
「なんというか、今の状態。万力で煮豆をつまむような力のコントロールしてる、感じだね……。とても、すごいことだけど」
「ああ、凄いかもだが、これっきりにするわ」
この状態で揉んでもらっても、逆に肩が凝りそうだし。
あくまで実験作としておこうか。
……とりあえず、三種のゴーレムの盛り合わせが出来たんだしな。
この数があれば十分、上出来と言えるだろう。それに、
「さ、まだ時間はあるんだ。次は魔石とか使って改良するぞー」
「ん、了解ー」
まだまだ工作する時間はある。
それをゆっくり楽しんで行こう。





