175.運動後のひと風呂
食事中に竜王たちと話した結果、
「それじゃあ、湖へ行きのは予定は近日中ってことでいいか?」
「異議なしですー」
とりあえず今週中から今月中に、という大雑把な予定になった。
大雑把すぎて予定と言っていいのか分からないものになってしまったが、
……ディアネイアが許可を取るのにどれくらい掛かるのか分からないしな。
今週は特にやる事は無いけれど、急かすようなことでもないし気楽に待とう。
そんな結論と共に、食事会はお開きになった。
そして静かになった庭で、
「あー、夜は涼しくなるから、温泉が良い感じだわ」
俺は温泉に浸かっていた。
「本当ですねえ」
「ん、極楽……」
更に俺の横では、サクラとヘスティが同じようにゆったりと浸かり中だ。
俺と同じか、それ以上に体をへにゃへにゃにさせていた。
なんというか体を思いっきり動かした後の大きな風呂は、気持ちよさが倍増している気がする。
浴槽に寄りかかり、完全に脱力モードだ。
「すいー」「ふうー」
精霊たちもオケに貯めた温泉に使ってゆったりしている。
……小分けした温泉ならば、入っても酔っぱらったりしないみたいだからな。
それが分かってから、大体精霊たちは桶風呂に入っていたりする。
ともあれ、ウチにいるモノの大体が、まったり状態になっている。
喉が乾いたら近くのゴーレムによって来てもらって、ジュースか水を出してもらえばいいし、とても極楽だ。
「というか、極楽過ぎてやばいな。肥えていきそうだ」
「ふふ、体格の良くなっていく主様を見るのも楽しそうですが、現状では沢山カロリーを使っているので大丈夫ですよ」
サクラはそう言ってほほ笑んだ。
ただ、その言葉の意味が俺にはちょっとわからなかった。
「うん? カロリーを使うって運動でか?」
「それもそうですが、魔力を使う時、かなりエネルギーを消費しているんですよ? それこそ、全身から力を絞り出すように。なので、魔法を行使しているだけで基本的な運動にはなっているのですよ」
「へー、魔法でカロリー消費できるのか」
その辺の知識はあんまり持ってないから新鮮だ。
毎日、ゴーレムを改良したりするのに魔法を使っているのだが、それが運動になっていたのか。
「ん、それだけじゃ、ない。アナタの周辺から魔力が流されてるけど、それも体が一度魔力を循環させているから、エネルギー使ってる」
「基礎代謝みたいだな」
ただ、なるほど。普通に暮らして動いているだけでカロリーを使うなら、割と食っちゃね生活をしているのに、体型が変わってないのも納得だ。
数年前に買った海パンだったが、違和感なく身につけられたしな。
泳ぐ体力も十分あったし。
「運動をサボっていてもオッケーとは、魔法さまさまだな」
「……あの、ゴーレムを作ったり、体に纏わせたり、それで飛んで走ったら普通はヘトヘトになるからね?」
「いや、あんまり大した動きじゃないんだぞ、あれ」
殆んど樹木のサポートありきの運動だし。
「……ん。アナタにとっては、そういう事なんだろうね」
ヘスティは頷いてから遠い目をした。事実を告げただけなのに、この対応はどういうことだろう。
まあ、いつものことと言えばいつもの事なんで気にしないけどさ。
「――って、サポートと言えば、思い出した」
今日明日に話そうとしていて忘れていた事があったんだ。
「ん? なあに?」
「温泉に新しい機能をつけられないか実験しているんだが、今度試して、使用感を教えてもらってもいいか?」
温泉は俺以外も使うものだし、新しい機能を付ける場合は出来るだけテストケースが欲しい。
そう思って頼んだのだが、
「あ、はい。私は主様の望みであれば、いくらでもお試ししますよ」
「我も。オッケー」
二人からは快い返事をもらえた。
これなら、作成ペースも早まりそうだな。ただし、
「まあ……今はゆったり優先だから、明日からだな」
「ん、了解」
「そうですねえ。今は、この時間が素晴らしいですから……」
そうして、俺達三人は、一日の疲れを癒しつくした。





