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俺の家が魔力スポットだった件~住んでいるだけで世界最強~  作者: あまうい白一


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161.名前通りの一振り

 俺は舞台から降りて、前に出た。


「折角いい歌だったんだから、止めてくれるなよ、カトラクタ」


 それに加えて、


「その毒みたいな色の水を、森に運ばれると困るんだよ。俺の家の水が汚れたら、どうしてくれる」


 俺は、ゴーレム達と前に出る。そして、


「俺の安住を脅かす敵は、俺の力で、打ち倒す! 《金剛・壊》改め――モード《ヴァジュラ》!」


 俺のアーマーは切り替わる。

 移動の為のものから戦うためのものへ。



 ディアネイアの元に辿り着いた時、彼女たちは疲弊していながらも、しかし安堵したような顔で俺を見てきた。 

 

「ダイチ殿、来てくれたのか……」

「遅れてすまないな」

「いや、気にしないでくれ。定刻より早めたのは、こっちの事情なのだから……っ」

「おいおい、フラフラなんだから無理するなよ」

「いや、まだ動けるから、貴方をサポートできるように力を尽くそう」


 そう言って、ディアネイアは立ち上がり、杖を構えた。

 たくましい姫だな、と思いながら、俺はカトラクタを観察する。


 紫の水が竜の形になり、その中には無数の黒い結晶が浮いていた。


「――どうやら、ウォーターゴーレムと同じ構造のようですね。コアを中心に体が構築されております」


 サクラが耳元で解説してくれたが、なるほど、ウォーターゴーレムのデカイ版なのか。


「ってことは、あのコアをひっこ抜けば、あいつは倒せるのか?」


 ディアネイアに聞くと、肯定の頷きを返された。


「あ、ああ、だが気をつけてくれ、ダイチ殿。あれは一撃を受けるとすぐ水になって逃げだす。そして、その間にもあの毒水がこの地に回るんだ」


 確かに、今も紫色の水が溢れるように流れている。森の中がぬかるんでいたのは、コレのせいだろう。

 とても邪魔だ。


「――まずはあいつから漏れてる毒の水を止めるか。――ウッドゴーレム、行け」

「へ?」


 俺はウッドゴーレムたちをカトラクタの元に走らせる。


「あ、あのゴーレム達に抑えさせるつもりか?! だ、だが、サイズ差が……」

「いや、そんな事はしねえよ」


 俺がゴーレム達にさせたのは、カトラクタの足元にリンゴをばらまかせただけ。それだけでよかった。なにせ、


「――樹木よ、閉じ込めろ!」


 それだけで、カトラクタの足元から樹木が育ち、奴の全身を覆ったのだから。

 

「ガア……!?」


 カトラクタは体をくねらせて逃げようとするが、そうはさせない。


「こっちは、ウォーターゴーレム作りで慣れてるんだよ……!」


 瞬く間にリンゴの樹木は、カトラクタの全身を抑える外殻となった。

 水漏れのひとつも、起こさない強固な殻だ。


「そ、そんな方法があって、いいのか……?!」


 ディアネイアは変な驚き方をしているが、毒の水を抑えきれたのだからいいだろう。ただまあ、


「長くは持たねえか」


 内部でギシギシと暴れているのが分かる。

 捕えていられるのも短時間だ。その間に、勝負を決めねばならないが、


「なあ、あれを空中に思いっきり打ちあげることはできるか?」

「う、打ち上げ? ……ううむ、結界を反発させれば、ギリギリできなくもないが……」


 ディアネイアは難しい顔をした。やはりあの大きさだと難しいのか、と思っていると、


「我が、出来る」


 ヘスティが横に来て、そう言った。

 彼女の顔は毒の水にまみれていたが、まだまだ元気そうだった、


「おう、ヘスティ。遅れてすまんな」

「気にしない。アナタのお陰で、今、助かってる。――それで、アレを、打ち上げれば、いいの?」

「出来そうか?」

「可能。衝撃のブレス、使えばいけるから。ラミュロスより、あっちの方が、軽いし。なにより、昔より我、パワーアップしてるから」


 ふん、と毒水を払いながら、へスティは胸を張った。


「良かった。お陰でこの腕を使えそうだ」

「その腕を、使うって、まさか……」

「ああ、この右腕を思い切り振るう」


 そう言った瞬間、ヘスティの顔が引きつった。

 

「そう、だね。それを地面に向けて撃ったら、酷いことに、なる」


 ディアネイアの顔も固まった。


「それはカレン殿を吹っ飛ばした時に使ったものだが……相当、手加減されていたものだよ、な?」

「まあな」


 それでも、平原には結構な痕跡が付いてしまった。

 できれば、同じことはしたくない。


 平原に穴を開けていいというのであれば、それでもいいけど、流石に良くないだろうし


「ん、分かった。我が責任を持って、あれを打ち上げる」

「――では、私も手伝おう。最初に、あれを跳ねあげることぐらいは出来る筈だ」


 二人の行動は決まったようだ。

 そう思っていると、背後から綺麗な声が響いてきた。


「私も、歌で援護するわ。全力で歌えば、あいつも弱まるから」


 マナリルも参加してくれるらしい。それは有難い。


「ありがとうよ。三人とも。それじゃあ、やろうか」


 俺の言葉を皮切りに、三人はそれぞれの行動を開始した。


「《二十・結界》!」


 まずはディアネイアが結界を使い、樹木をまとったカトラクタの体を浮かす。そして、


「《衝撃のブレス》……!」


 その下に入りこんだヘスティが、思い切り衝撃をぶちこんだ。

 小さな体から放たれた衝撃は、しかし、凄まじい威力で、カトラクタが宙を舞った。流石はヘスティだ。


「これで問題なく、本気でやれるな」


 実の所、この金剛杵を本気で使うのは初めてだったりする。

 力加減はできていたが、あくまでそれは慎重に使っていたからだ。


 ……本気で使って、色々とブチ壊すわけにはいかないからな。

 

 だが、空に向かって打てるのならば、その心配はいらないだろう。

 地面にアンカーを打ちこむ。


 ぬかるみすらも貫き、地中深くへとアンカーは減り込む。

 高威力であることは分かっているから、反動対策は万全だ。


「サクラ、背中は任せた」

「はい、存分に、お力を振るってください主様」


 全身が、サクラの力で強く支えられる。

 これなら、安心して、思い切り腕を振るえる。


「俺の初めてだ、受け取ってくれよ、カトラクタ」


 そこから、放つのは本気の一撃。


 金剛杵を本気で使う。

 そのコンセプトの為に、杵の名をそのまま採用した機体は、


「――天まで貫け、ヴァジュラ!」


 右腕を高速で振り抜いた。

 水蒸気の壁すらぶち抜く速度で放たれた、その一振りは、

 

「……ァ!??」


 一瞬でカトラクタに直撃した。

 堅い樹木の壁すらも、即座に貫通するその衝撃は、雲と空気を引き裂いて、突き進む。

 そして、カトラクタの声にならぬ悲鳴が響き、


「――!」


 その身体の一片すらも残すことなく消し飛ばした。

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