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俺の家が魔力スポットだった件~住んでいるだけで世界最強~  作者: あまうい白一


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157.お楽しみタイムと先取りの楽しみ

 マナリルの歌が終わるころには、既に夕方近くなっていた。そして

 

「そういえばダイチ殿。平原のライブに来た後、その後の予定は、あるのかな?」


 森の中にオレンジ色の光が差し込む中で、ディアネイアはそんなことを言ってきた。


「その後の予定って……普通に帰るだけだと思うぞ?」


 マナリルにモノを届ける以外の用事は特にない。

 長々と平原にいてもしょうがないし、普通に我が家に戻ってくるだけだ。

 

 そう言った瞬間、ディアネイアの表情が少し嬉しそうなものになった。


「そ、そうか。ならば、街の方でマナ殿の夕方の舞台を見ていってはどうだろう? ライトアップをしたり、色どり豊かな舞台にするつもりなのだが」

「街中のライブねえ」


 色どり豊かな舞台を見るのは、確かに勉強にはなりそうだ。

 建造物のイメージは中々掴み難いものがあるしな。でもさ、

 

「絶対に人が多いよな……」


 祭りのときと違って、一極集中で人が多そうだ。

 すし詰め状態になってまで、何かを見たいとは思えないんだよな。


 ……満員電車とか、行列とか、そういうのは好きじゃないからなあ……。


 あんまり気が進まない、と渋い顔をしていると、


「うむ、ダイチ殿ならそう言うと思ってな。……関係者席を用意させて貰おうと思う」

「関係者席?」

「そうだ。城の中にある私の執務室、もしくは私室だ。あそこからなら、舞台をよく見る事も出来るだろう。少し離れているが目の前の広場で行われることには変わりないのだしな」


 城の中に入って見るということか。

 なるほど、それならひとごみは避けられる。

 それに、建造物を見て、綺麗な曲を聞くだけならばいいんだろう。ただ、


「俺が城の中に入っていいのか?」


 コーティングとかはしていくつもりだけどさ。

 けれども、また兵士とかが大変な事になるだろうに。大丈夫なんだろうか。


「いやあ、気にする必要は無い。騎士たちはイベント時にこそ気を張ってなければならないのでな。むしろ良い訓練だよ」


 ディアネイアは随分と積極的に誘ってくる。

 まあ、ここまで手配してくれたのならば、行ってみるのもありかもしれないな。


「んじゃあ、平原ライブの後、その用意してくれた関係者席に行くわ」


 そう答えた瞬間、ディアネイアの表情がぱあっと明るくなった。

 

「本当か!?」

「ああ。そんなに長居はしないと思うけれど」

「滞在時間は自由で構わないとも!」


 ディアネイアは嬉しそうに両手を握りつつ、頷いていた。


「で、では私も用意を進めなければならないので、今日はこれで失礼するよ! マナ殿、テレポートするのでこちらへ」

「う、うん、分かったわ。それじゃあね、ダイチさん」


 そう言って、マナリルは、気合の入ったディアネイアと共に帰っていった。


「楽しそうですねえ、ディアネイアさん」

「そうだな。……って、サクラ、なんか近いんだけど、どうした?」


 いつのまにかサクラは俺の腕を柔らかく掴んでいる。

 彼女が柔らかいので悪い気はしないけども。


「いえ、ちょっと対抗心が燃えているだけですので。お気になさらないでください」

「そ、そうか?」

「はい、ただの対抗心です。明日はディアネイアさんが一杯楽しむので、今日は私が主様と楽しい時間を過ごしておこうと思いまして」


 サクラはにっこりほほ笑んでいる。けれど、


「……ちょっと押しが強めなのは気のせいか?」

「ふふ、ですから対抗心です。ディアネイアさんに負けないように押せ押せな感じで行こうかと思いまして」


 なんだが、サクラはいつになく積極的だ。

 可愛らしいから、悪い気はしないけれどもさ。


「それで、先ほど、おやつの新作としてケーキを作ったんですけれども、一緒に食べませんか?」

「ああ、それじゃ、頂こうかな」

「はい。それでは、用意しちゃいますね。主様とおやつタイムです!」


 そんな感じで、俺たちの午後の時間はゆっくりと過ぎていった。

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