148.合成とゴーレム
午後、俺は自宅に戻ってきていた。
マナリルの要望通り会場は作ったので、設備系は彼女たちに任せても大丈夫だろう。
……あとは、彼女に言われたウチの水だが……。
マナリルと話していて、思ったことがある。
「飲料水でゴーレムを作れば、楽になるよな……」
水を持っていくとはいったが、どれくらいの量をどうやって持っていくかは決めていなかった。
だから、樹木でタルを作り、そこに水を入れてゴーレムに持たせようとも思った。
けれど、大量に持っていけば置き場所に困る可能性もある。
「でも、ゴーレムなら、自発的に動いてくれるしな」
場所も臨機応変に変えられる。
そう思って、リンゴをコアに水のゴーレムを作成したんだが、
「土で汚れるな、これ」
出来たゴーレムが地面を歩くと、その土が少し混じってしまうようだった。
土の色が綺麗な水に浮かんでくるので良く分かってしまう。
足裏など地面との接地面すらも水で出来ているので、当然と言えば当然なんだけどな。
「でも、これじゃ飲めないよな」
水撒きの際には役立つ特性でも飲料には適さない。
そう呟くと若干、水のゴーレムもしょんぼりしていた。
構造上、仕方ないことではある。
だけど、どうにかして作れないものかなあ、と頭を悩ませていると、
「お疲れ様です、主様ー。息抜きに、おやつとお茶でもいかがです?」
サクラがお菓子などを載せたお盆を持ってきた。
「おう、ありがとう。貰うよ」
「はい。今日は冷たいお茶にしてみました」
そう言って、サクラはポットからお茶を注いでいく。
ポットの中には氷が入っているらしくガチャガチャっと音が聞こえる。
「どうぞ、主様」
そして、コップを手に取ると冷たさが手に来た。
いい感じに体を冷ましてくれるお茶を飲みながら、俺は思いついた。
「ああ、そうか。樹木のゴーレムで囲えば良いのか」
「はい?」
「いや、水のゴーレムと樹木のゴーレムを合わせてみようかと、な」
歩くポットを作る感じで行こう、と思ったんだ。
「合成ですか。また、新しいことにチャレンジするんですね、主様は」
合成と言えるほど、大仰なものなんだろうか。
新しい、といってもやるのはこれまでの応用だし。
ともあれ、やってみるだけやってみよう。
「……樹木よ、広がれ」
俺は樹木を板状に広げて、水飲み場の前に置く。
そして、水飲み場にリンゴを突っ込み、
「水のゴーレム、歩いてくれ」
水のゴーレムを作成し、樹木の板の上に乗せる。
そこから更に、もう一度樹木を操る。
「ゴーレムを覆ってくれ」
樹木の板は、そのままゴーレムの外殻として張り付いていく。
そして全身くまなく覆われた水のゴーレムを、俺はそのまま数歩を歩かせてみたのだが、
「うん、水は漏れないな」
水漏れは一切ない。
しっかり全身を覆いきれているようだ。
しかも、手も足も木でガードされているため、水は土で汚れない。
「あとは手指あたりに蛇口を設ければ……っと」
ゴーレムの指から、綺麗な水を出す事に成功した。
とりあえず、飲むことはできそうな水だ。
「わあ、凄いですね。歩く水筒ですよ!」
「……見た目がいかついし、もう少し作りようがあると思うんだけどな」
処女作だから思いつくままに作ってみたが、もっと工程は少なくできる。
樹木のゴーレムの中を空洞にして、水を入れこんでもいい。
あとは保存性や清潔性を考える必要もある。
改善点は多いが、けれどもこれを活かせば、
……水じゃなくても作れる筈だよな。
飲めるリンゴジュースゴーレムだって作れるだろうし、構造を工夫すれば冷えた水の温度を保つことも出来るかもしれない。
「よし、もうちょっと作ってみるか。サクラ、色々と手伝ってくれ」
「はい、了解です、主様」
というわけで、合成ゴーレム、もとい、自動歩行式のジュースサーバーの試作品が出来ました。
まだまだ作りが甘いけれど、かなり良い出来になったよ。





