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俺の家が魔力スポットだった件~住んでいるだけで世界最強~  作者: あまうい白一


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143.予期せぬ事と予期出来ていたこと

 昨日は早く寝た事もあって早朝は起床した俺は、朝食を取ったあと、温泉に向かった。


「さあ、今日も実験するぞ。サクラ、準備は良いか?」

「はい、主様。こっちに朝とれたばかりのリンゴが沢山ありますよ」


 深夜は雨が降っていたようだが、朝になったらは天気もよくなった。

 昨日はたたき台で終わってしまったゴーレムの完成度を上げるには、いい日和だ。


 そう思いながら、朝採れリンゴを温泉の湯船へと放り込んでいこうと数個入れた瞬間、俺は気づいた。

 

「すいー、すいー」

「うん?」


 水の四大精霊が、仰向けで温泉にぷかぷか浮いていた。

 というか俺の水のような手を伸ばして俺のズボンの裾にタッチしていた。


「こいつ、何してんだ?」

「えっと……温泉を楽しんでいるん、ですかね?」

「すいー」


 そうなのか。可愛いから撫でてやってるけどさ。


「こいつ……物理的に温泉に入れるんだな」


 触れてみると分かるが、体が水で出来ているような感触がする。なのに、温泉と混じり合う事もなくしっかり浮かんでいる。


「精霊は魔力によって、物質の固定がされていますからね。固定化された物質は、液体同士でも混じり合わなくなります」

「へえ、水の上に油が浮くようなもんなのかね」

「はい。きっちり人の形を保っている精霊ですから、そのくらいの構成にはなっている筈です」


 サクラはそう説明してくる。


「というか、人の姿を保っていない精霊とかいるんだろうか」

「勿論ですよ。むしろ、人の形に実体化しているのは珍しい方です」


 珍しい、といっても、俺が今まで見た事のある精霊は皆人型だったしな。

 むしろ人型以外を見たことがないぞ。


「まあ、そうですね。人の姿を取っていない精霊でも荷物くらいは運べる力はあって、その辺に浮いている事もあるのですが……主様の力があると即座に飛び散るというが、逃げていますから。見たことないのも当然かもしれませんね」

「精霊から避けられているのか、俺……」


 それはそれで悲しいものがあるぞ。


「だ、大丈夫ですよ。私がいるじゃないですか」

「まあ、そうだけどさ」


 なんだか変な方向で励まされたな。まあ、うん、色々な精霊がいるんだと分かったので、良いんだけど。


「それに、この子たち、四大精霊も主様と対面しただけで飛び散ったりしないですからね。避けられてるじゃないですよ!」

「お、おう、ありがとうな」


 俺はサクラに礼を言いつつ、目下の水の精霊に目を落とした。

 確かにこの距離に近づいても逃げるそぶりも、飛び散るそぶりもないから良いかな、なんて思っていると、


「すぃ~ぃぃ~」


 不意に、水の精霊がこっちを見た。

 顔を真っ赤にした状態で。


「あの、こいつ、酔っ払ってない……?」

「せ、精霊でも、この温泉は慣れてないと、酔ってしまうみたいです、ね」


 最近、油断していたけれど、そうだな。

 この温泉の効力を忘れていた。

 

「あー……とりあえず引っ張り出すか」

「はい」


 そして俺は、水の精霊を介抱しながら、ゴーレム実験を続けることにした。



 朝方、ディアネイアは、マナと執務室で向かいあっていた。

 昨日、彼女からライブをするうんぬんを聞いて、


『明朝までにスケジュールを組み直すから待っていてくれ』


 というように考える時間を貰い、返事を待ってもらった。だから今は、答える番なのだが、


「それで、スケジュールは出来た? どうにかなった?」

「ああ、そうだな。一応、イベント事ということで日程は抑えたが、明日明後日という風には行かなかった。すまないが、一週間ほどこの街には滞在して貰う事になるかもしれない」

「いや、突然の話になってしまったのに、予定を組み込んでくれただけでも有難いわ。それに数日待つことなんて、竜にとっては大したことじゃないもの」


 マナはうんうん、と頷きながら納得してくれたようだ。

 意外とモノ分かりのいい竜王で助かった、とディアネイアが一息ついていると、マナが再び口を開いた。


「そのライブまでの空き時間は好きに行動していいの?」

「ああ、別にかまわないぞ」

「そう、なら、ヘスティもこの街にいるって聞いたから、会いに行きたいのだけれども」


 その言葉に、一息ついて休みかけていたディアネイアの頭が再回転を始める。


「え―……っと、正確には、この街にはいない。近隣に住んではいるのだが」

「そうなの。久しぶりだから会いたいと思ったのだけれど。……場所を聞いてもいいかしら?」


 予想はしていたが、やはり、これは、不味いことになった。

 このまま彼女に場所を教えたら、彼の所に問題を持ち込むことになる。


 それは確実だ。そして危険な事だ。なので、


「そ、それには及ばないぞ。私がヘスティ殿を連れてくるからな」

「え? 別にそんな手間な事をしなくてもいいのに……」

「いや、それくらいはさせてくれ! 日程の不備はこちらの問題でもあったのだ。……ご、午後か、夜にでも来てもらうように話をしておくから、それまで待っていてくれと嬉しい!」


 ディアネイアはそう言い切って、いそいそとテレポートの準備を始める。


 ……とりあえず、私が今日、ダイチ殿の所に行って、ヘスティ殿に来てもらえるような状態にしておこう。うん、それがいいな!


 頭の中で予定を作りながら、ディアネイアは内心で焦りの力拳を作るのだった。

  


●お知らせ


 この度、「俺の家が魔力スポットだった件~住んでいるだけで世界最強~」が、集英社ダッシュエックス文庫様の方から、発売されることになりました!


 発売は、ちょうど一カ月後の6/25です。


 ここまで来れたのも、皆さまの応援のお陰です。

 本当にありがとうございます!!

 

 ――とはいえ、今後も連載も続けていきますので、

 どうぞよろしくお願いします!

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こちらの連載も応援して頂けると嬉しいです!
最強の預言者な男が、世界中にいる英雄の弟子に慕われながら、世界を回る冒険者をやる話です。
 100人の英雄を育てた最強預言者は、冒険者になっても世界中の弟子から慕われてます
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