―side プロシア―姫と冒険者の探索隊
早朝。ディアネイアは、街の外縁にある農地に足を運んでいた。
目の前にあるのは大きく盛り上がった土と、そこにできた洞穴だ。
「モンスターの姿が出てきたのはこの穴、か」
昨日からの調査により、この穴からモンスターの出現が確認された。
洞窟内がダンジョン化しつつあると判断し、ディアネイアはすぐさま出撃を決めた。
……ダンジョンマスターは素早く潰さねばな。
そして、ここにいるのは、ディアネイアだけでなく、
「ヒャッハー。姫さん。今日はよろしく頼むぜ」
冒険者グループである、シャイニングヘッドの面々も一緒だった。
「ああ、今回は依頼を受けてくれて助かった。こちらこそ今日はよろしく頼む」
ディアネイアが礼を言って握手の手を差し伸べると、シャイニングヘッドリーダーのアッシュが手を取った。
「ヒャッハー。依頼内容は姫さん。アンタの護衛とモンスターの討伐、そして地下の調査報告。これでいいんだよな」
「ああ、間違いない。私の身は私の方で基本的に守るから、その辺りは気にしないで良いが」
「ひゃっはー、そうだな。姫さんはつええから、俺たちの護衛なんて必要ないかもしれねえが、……もしもの時は守護させてもらうぜ。なあ、てめえら!」
「おう!」
シャイニングヘッドの声が景気よく響きわたる。
それを見て、ディアネイアは頼もしい連中だと改めて思った。
「しかし、気合が入っているな、君たちは」
「ひゃっは、当然でさあ。ダンジョン関係ときたら、俺達の本職ですからね。気合も入るってもんだ」
彼らはダンジョンが常に傍らにある武装都市の出身だ。ならば、ダンジョンの方がホームグラウンドなのかもしれないな。
「んで、俺らの方は準備完了してますけれど、姫さんの方はどうです?」
「私も問題ない」
「いや、でも、そっちの方はどうするんで?」
アッシュが目線を向けたのは、ディアネイアの少し背後だ。
そこには、冒険用の衣服に着替えたアテナがいた。
「アテナ。……君も付いてくるつもりなのか?」
緊急的に脱出も可能である自分と、ダンジョン関係では右に出るものが少ない腕利きの冒険者であるシャイニングヘッドの面々が選ばれたのは、ある意味必然だ。
ダンジョンから出てくるモンスターは相応に強いのだから。
そこにアテナが混じるのは少し危険なような気もするけれど、
「ごめんなさい。待ってられなくて。私も、もっと強くなるために、お姉さまの戦う姿を見て勉強したいの!」
アテナは熱心に訴えかけてくる。そのまっすぐさは、ディアネイアにも覚えがある。
昔の自分もこういう風に強くなろうと必死だった。
そしてそれは今も変わらない、と。
「でも、危ないぞ?」
「うん、だから、少しでも危なかったら私もテレポートを使えるし、良いでしょう?」
アテナは既にテレポートを習得している。
そして彼女は自分の危険を無視するような愚か者でもないので、困ったら即座にテレポートするだろう。
そう思いつつもディアネイアはアテナにくぎを刺す。
「危なかったら即座にテレポートしてもらう。それが付いてくるにあたっての最低限の約束だ。守れるな?」
「はい、お姉さま! 守ります!」
「素直でよろしい!」
アテナは元気良く頷いた。
ならば、とりあえずこの場は大丈夫そうではあるが、
「……というわけだ、シャイニングヘッド。すまないが一人追加で頼む」
シャイニングヘッドに、というかアッシュに頼んでおいた。
その頼みはしっかり伝わったらしく、アッシュは小さく頷いて、
「構いませんよ姫さん。むしろ守るモノが増えたことで気合が入りまさあ。――そうだろ、お前ら!」
後ろを振り向き、声を発した。その反応はすぐに帰ってくる。
「おう!」
「女の子の一人や二人、守りきってみせるさ!」
「それくらい出来なきゃ憧れの旦那に近づけもしねえからな!」
口々に帰ってくる冒険者たちの声は熱く、頼もしいものだった。
「と、まあ、こんな調子なので、姫さんは気にせずガンガン進んじまってください」
「……ありがとう。そう言ってもらえたことに感謝する」
あとで、このお礼はしっかり出させて貰おう、と心の中で思いながら、ディアネイアは前を見た。
「――それでは、ダンジョンヘ行こうか、皆。目標は、ダンジョンマスターの討伐!」
「了解!」
そして、ディアネイアたちは、穴の中へと足を踏み入れていく。
ディアネイアもディアネイアで動いているようです。
感想が700件を超えていました。ありがとうございます!
ブクマ、評価点、感想は本当にモチベーションに繋がっております。
これからもよろしくお願いします。





