132.竜王とパーティー
サクラが持ってきてくれたお茶とお菓子を食べながら、俺は竜王たちから情報を聞いていた。
「へえ、土地のダンジョン化がまた起きてるのか」
「正確には、ダンジョンになりかけている穴とか、魔石の集合体が出来ているというだけですけれどね」
ヘスティを抱きしめたアンネは、ほっこりした顔でそう言ってくる。
「……」
ヘスティが諦めと悲しみが混じった目で俺を見てくるが、アンネが来るなり発見されて、即座に抱きしめられてしまったのだから仕方ないな。
まあ、話が終わるくらいには助け出そうと思いながら、俺は竜王たちに気になった事を尋ねていく。
「ダンジョンマスターとかもいるのかね?」
最も気になったのがそこだ。
ダンジョンマスター自体は脅威じゃないが、あいつの周りにふわふわ浮いている奴らに庭を荒らされたことがあるので、出来ればいなくなって欲しい。
そう思っての問いに、答えたのはアンネの胸の圧迫から逃れつつあるヘスティだった。
「普通ならば、まだ存在してない、筈。長年魔力を溜めこんだ魔石を取りこみに来て、暴走に近い変異成長で出来あがるのが、ダンジョンマスターだから」
「ふむふむ、成長して出来あがるタイプの奴なのか。でも、存在してないなら良かったよ」
そう言うと、しかしヘスティは首を横に振ろうとした。
だが、途中でアンネの胸に引っ掛かる。
「あんっ、強引ですぅ……!」
「……」
あ、ヘスティが青筋を一本作った。
少しイラっとしているらしい。
それを態度で表す様に、首を強引に振り切って声を出す。
「でも、それは通常基準。アナタは例外だから、ちっちゃいのは出来てる、可能性は、あるかもしれない。微妙な魔力の反応も、感じるし、ね」
「その例外扱いは微妙に納得いかないが……そうか。可能性はあるのか」
また自宅に火をつけられても面倒だ。
なら、採るべき手段はひとつだ。
「んじゃ、適当に地下へいって、先に潰しておくのが良いな」
「ダンジョンに潜って、予防するってこと?」
「ああ。ただ今日はもう遅いし、準備もいるから……行くなら明日だな」
新型のゴーレムの実験もしたいし、そいつらを作るんだとしたら、明日の午前から行くのが良いだろう。
「そう……。なら、我も手伝う」
ヘスティはアンネの拘束を振り払って、俺の横まで歩いてきた。
「おお、ありがとうよ」
「気にしないで。ダンジョンマスターの魔石も、欲しかった所、だから」
ヘスティはそう言って頷いた。この竜王は本当に頼りになるなあ、と思っていると、
「あ、私もついていっていいですか?」
「ボクもボクも――。地下に行ってみたいー」
「出来れば私も! ダイチの傍に居させていただきたいですね!」
竜王たちが次々に手を挙げた。
なんだ、参加者がどんどん増えていくぞ。
随分と大所帯になってしまうな。
……まあ、処理する人が多ければ、俺も楽だけどさ。
「この際だ、全員で行くか」
俺がそう答えると、隣で見守っていたサクラが小さく笑った。
「ふふ、それじゃあ、お弁当、一杯作っておかないといけませんね」
「あ、すまん、サクラ。負担かけちまうな」
「いえいえ、こういうのは楽しいですから、どんどんやってください。私も腕によりをかけて作りますから。――それと、もちろんですが、私も行きますからね、地下ピクニック」
サクラは俺の片腕を抱きしめながら言ってくる。
「おう、ありがとうな、サクラ」
こうして、明日の予定は決まったところで、今日は解散することにした。
明日は弁当を持ってダンジョンを調査してから、帰ってくるようにしよう。





