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俺の家が魔力スポットだった件~住んでいるだけで世界最強~  作者: あまうい白一


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118.いつかの力と、辿り着く巨人

「なんだ、あの姿は……」


 ディアネイアはカレンの姿を見て驚愕した。


 なにせ、街に向かってゆらりと歩くカレンの体は、既に体の半分ほどが黒く染まっていたのだから。

 その全ては胸元のペンダントから漏れ出ている色だ。


「カレン!」


 アテナが進み出て呼びかけるも、カレンは何も答えない。既に意識は無いようだ。そればかりか、


「グオオ……!!」


 彼女の口腔に黒と灰が混じった光が溜まり始めた。

 濃密な魔力を感じる光だ。


「……っブレスか!? 防護を!」


 ディアネイアが叫ぶと同時、灰色の光がカレンからほとばしった。 

 光となった魔力は、衝撃となって広範囲に襲いかかる。


「くぅっ! 多重結界シールド


 ディアネイアは咄嗟に、自分たちの前に防護を張る。

 衝撃は減衰されるがそれでも、皮膚を切りさき、焼いてくる。


「っ……だ、大丈夫か、二人とも?」

「我は、平気。自前の防護を張っていたから」


 ヘスティに至っては、その肌に傷一つない。

 ただ、その服装は僅かに焦げていて、顔は厳しいものになっていたが。


「でも、あれは、危ない。炎や風、土や水、色々なモノが混じっている。気をつけないと、体を削られる」


 ヘスティはアテナを見ていた。

 見れば、彼女は体の数か所を削られて血を流している。


「アテナ、その傷は……」

「こ、このくらい、大丈夫。わ、私は、まだやれるよ」


 まだ戦意は衰えていないようだが、彼女は王女だ。

 ここで死なれては、困る存在だ。


「……アテナ。君は後ろで援護を頼む」

「え……で、でも」

「大事な役目だ。もしもの時は、緊急テレポートをもう一度使って、皆に結果を報告してもらわなければならないのだから。だから、頼む」


 ディアネイアが真剣に言うと、


「ん……分かった……!」


 アテナは歯を食いしばりながら頷いた。

 あとは、戦いを続行するだけだ。


「しかし、へスティ殿、あれはどういう状況で、どうやって対処をすればいい?」


 ディアネイアが迫りつつあるカレンを見据えながら聞くと、ヘスティは静かに答えた。


「あれは本来、下位の竜くらいしかならない、精霊に乗っ取られた状態。カレンの体は今、精霊たちが、力を振るう事に使っている。対処法としては、まず漏れ出ている力を削って、可能な限り暴走している力を発散させることが大事」


「なるほど」

「……その上で、カレンを弱らせて、あのペンダントをはがして、精霊とカレンを分離させられれば、最良。あくまで、出来れば、だけど」


 ヘスティは険しい目つきをしながら、そう言ってきた。


「出来れば、とは……?」

「カレンは【最優】の竜王。全ての能力がとても、高い。だから、相当弱らせなければ、分離、出来ないかもしれない」


 確かに、目の前の異形な竜王は、化物のような力を感じさせる。  

 こんなモノを相手に、力を発散させろだなんて、正直怖くて仕方ない。けれど、 


 ……彼よりは強くない。 


 だから、ディアネイアは立ち向かう。


「彼女をこのまま進ませれば、街が危ないのならば、戦うしかないだろう……!」

「グウウ……ァ!!」


 ディアネイアの戦意に呼応するようにして、カレンが走り寄ってくる。

 全身に魔力をまとって、地面を削りながら、とんでもない速度でくる。だが、


「我も、協力する。この力は危ないから……同類として、止める……!」


 彼女の体を、ヘスティが止めた。

 その腕や胴体からうっすらと鮮血が飛び散る。

 だが、それでも、止まった。更に、


「同時に、撃つぞ……!」

「ああ! ――焦げて貫け炎王の大槍・《プロミネンス・チャージ》」


 ヘスティが口腔に貯めていた白い焔が発射される。

 そして彼女の背後からディアネイアが灼熱の槍を投げ込んだ。


「グウウ……!?」


 両方とも竜すら焼き尽くす火力だ。

 その二発が直撃したカレンは、勢いに押され、数メートルを吹っ飛んだ。

 だが、まだ休ませない。


「まだだ! ――《プロミネンス・チャージ》」

 

 灼熱の槍をもう一射。

 たたらを踏んだカレンの体に直撃し、爆発する。


「お、お姉さま、す、凄い。竜王のカレン相手に、こんな戦い方が出来るなんて。昔よりも何倍も強くなっている……」

「はは……修行をしていたのだから、多少は強くなるさ」


 そして強くなったことで分かることもある。


「……これくらいでは、倒れてはくれないよな」

「ん、そうだね」

「え……?」


 爆煙の中から出てくるのは、


「グアア……!!」


 服に焦げ目を作りながらも、全く無事のままなカレンの姿だった。

 少し声に不快さが混じっているが、怒っているのだろうか。


「力を少しは削れたようだが……あの魔力の防護は酷いな。全部、防がれたぞ」

「それが、精霊と竜王の混じった力。殺す気でやって、ようやくダメージがちょっと入るくらい」


 ヘスティは冷静に語ってくれるが、


 ……さて、どうすればダメージを入れられるか分からなくなってくるな……。


 それでも、戦いを止めるという選択肢は無い。

 自分にできることで、相手を削らなければ、とカレンを見据えていると、


「ァアア……!」


 再び、灰色の光が彼女の前に集まり始めた。

 だが、先ほどとは、光の大きさが全く違った。


 カレンの周囲には魔力の渦が巻き起こり、地面を震動させていた。


「この力は……不味いな……!」


 ぼやくと、ヘスティが頷いてきた。


「ん、かなりヤバイ。防がなきゃ、街まで届く。……全力で迎撃して、減衰させないと。そもそも、我たちも、死ぬ」

「ああ……街を守るには、やるしかない!」


 既に目の前にはとんでもない密度の魔力が溜まっていた。

 だが、ディアネイアはヘスティと共に真っ向から対峙する。


「この程度で、逃げるものか! 《プロミネンス・チャージ》!」

「白焔の、ブレス……!」


 再び、二人は同時に発射した。瞬間、


「グォォ……!!」


 カレンの灰色の魔力も解き放たれた。

 凄まじい勢いの二つの力は激突し、


 ――ドガン。


 と、爆炎を上げて打ち消し合った。


 平原を爆風が薙ぎ払うが、被害はそれだけだ。

 どうにか、持ちこたえた。


「す、凄いよお姉さまも、ヘスティさんも! あの威力の一撃を防いじゃうなんて」


 背後から、アテナの歓声が聞こえた。

 自分たちの後ろにいる彼女が無事という事は、街も無事だろう。


 良かった、と一瞬、息をついた。その時だ、


「ディアネイア、まだ!」


 ヘスティが叫びをあげた。即座に、そちらに目を向けると、


「もう一発だとっ!?」

「グ・オ・オ・オ!」


 既に充填されていた灰色の魔力が、再び彼女たちを覆った。そして、


「く……白焔の、衝撃!」

「多重結界三〇《シールド・トリアコンツァ》!!」

「わ、私も! 《シールド》!!」


 咄嗟に唱えた結界を弾き飛ばし、魔力の衝撃が突っ込んできた。


「が……!」


 全身を殴られたかのような衝撃が、ディアネイアを襲った。

 その勢いのまま、吹っ飛ばされ、地面をゴロゴロと転がる。


「うぐ……充填が、早すぎる、な……」


 吹っ飛んだのは、自分だけではない。

 ヘスティや結界を張ったアテナも衝撃を受けて、地面を転がっていた。


「アテナ……。無事か?」


 アテナは頭から血を流していたが、意識ははっきりしているようだ。


「う、うん、大丈夫……。お姉さまこそ、血が」

「私は、まだ立てるから、平気だ」


 言いながら、ディアネイアは目に入る血を振り払い、状況を見た。

 立っているのは自分と、ヘスティとカレンだけ。


 こちらは血まみれでフラフラだ。

 正直、分が悪い。だけれども、


「まだ、やれる?」

「ああ、戦うのを止めるわけには、いかない」

「グアア……!」


 カレンは未だに街に向かうのを諦めていない。

 

 けれど、自分の背後には守るべきものがあり、守るべき人たちがいる。

 ならば、ここで転がっているわけにはいかないと、カレンの前に立ちふさがった。


 その時だった。


 ――ドシン、ドシン。


 と背後から大きな物音が響き渡ったのは。

 そして、自分たちの背中を守り、包むような温かい魔力を感じたのは。


「……この魔力は……まさか……」

「……ああ。そうだな。へスティ殿」


 温かな魔力を感じた瞬間、ディアネイアは腰を抜かしてへたりこんだ。

 いつぞやは怖く感じた力が、こんなにも頼もしく感じるとは、自分でも驚きだけれど、


「彼が、来てくれた」


 振り向くとそこには、強大な、しかし優しげな力を感じさせる樹木の巨人が走ってきていたんだ。

ちょっと長くなりました。すみません……。

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